フィンフェイがしてるのを盗み聞きするカルトの話

「フェイタンとフィンクスって仲いいよね」
「まぁ、似たもの同士気が合うんじゃないのか」
新入りの質問にボノレノフが答える。

「似てる?」
カルトにはとてもそうは思えなかった。気さくでガサツなフィンクスと、陰気で神経質そうなフェイタン。似ているどころか全く真逆のタイプに思える。
「あの二人付き合い長いみたいだもんね。どっちも気難しいところあるけど、ケンカしないでうまくやってるし」
「あいつらって考え方とか価値観とか、根っこの部分が同じなんだよな。カルトもそのうち分かるさ」
シズクとシャルナークが話に割って入る。

「ふーん……」
現時点カルトには、旅団メンバーの人間性は表面的な所しか見えていない。というか、どいつもこいつもおかしいと思っている。性格に差はあれどもみな等しく異文化人であり、化け物じみた強さを持つ変人としか言いようがないのである。
ただ言えることは、彼らは強い帰属意識で結ばれていること。彼らの結びつきは肉親同等かそれ以上に強い。それはよく分かる。
その中でもフィンクスとフェイタンはいっそう結束が強いように感じるのだ。
何もベタベタと引っ付いて便所まで連れ添うようなことはしない。むしろ逆だ。お互いに依存も束縛も特別扱いもしない。別の個体と割り切っている。蟻の巣での言動からしてそうだ。そうでありながら、まるで自分自身の一部のように信用しているように見えるのである。
誰も二人の間に割り込めないだろうとさえ思うのだが……こいつらに慕われている団長はどうなのだろう?
ゾルディック家の末席に生まれたカルトは対等な人間関係というものを知らない。ふつうの人付き合いを経験したことがないから何とも言えないが、あれが友達というやつなのだろうか?よくは分からない。とにかく彼らの関係が不思議で、正直に言えば羨ましくもあった。

***

その晩、カルトはふと目を覚ました。
見慣れない風景。流星街の民家。まだ辺りは暗い。
枕が変わったから眠れないとか、そんな繊細さは持ち合わせていない。
寝具も部屋も生家とは比べ物にならないほど粗末だが、それも別に気にならない。これ以上の劣悪環境は仕事や訓練で経験済みだ。
それでは何が気になったかというと。隣の部屋から物音がするのである。
(フィンクスとフェイタンの声……)
二人は小声で何か話しているようだ。 カルトは興味本位で耳を澄ました。

「フェイお前、ケガしてんじゃねーのか?」
眠たそうなフィンクスの声。何かしようとしているフェイタンを気遣っているようだ。
「関係ないね」
フェイタンが答える。囁くような小声で聞き取りづらいが、確かにそう言っていた。
「つか俺、ねみぃんだけど」
「ワタシ自分でするよ。フィンクスは転がてるだけでいいね」
一体何の話だ?カルトは何事かと思いながら会話を聞き続けた。

「しゃーねぇなもう……ちゃっちゃと済ませろよ」
フィンクスの欠伸混じりの言葉と同時に衣擦れの音。それからしばらく沈黙が続き、やがて水音のような物が聞こえてきた。
「カーッ。元気だなぁお前」
感嘆したような怠そうなフィンクスの声。フェイタンの切なげな息遣い。
二人は何かいけないことをしている。カルトの身体の奥底で得体の知れぬ感情が沸き起こった。胸が高鳴り、全身の血流が加速していく。

「ん……ぅ……」
フェイタンが小さく喘ぐ声を聞いてカルトはごくりと生唾を飲み込んだ。いま隣の部屋で繰り広げられている光景はどんなものだろう。くそ。見たい。相当やばいと話に聞くフェイタンの念能力以上に興味がある。
「あーダメ。我慢できねぇ」
今度はフィンクスの声。
「フィンクス眠いんじゃなかたか?」
「うるせーな。お前がマスかいてるとこ見てたらしたくなったんだよ」
二人の会話は続く。
「もうちょい力抜け」
「ん、ア……ふぅ」
「おぉ、そこイイぜ」
「ん……んん……」
「おい、もっと右向けって。見えねぇよ」
「無理ね、ワタシいま左腕折れてる。あまり自由利かないよ」
「ったく世話ねぇな」
沈黙。そして水音。フェイタンの荒い吐息。

「ん……あ!……〜〜〜!」
いっそう苦しげな、フェイタンの掠れた声が聞こえる。
「フェイ、お前マジでエロいな」
「知てる」
またしても訪れる暫しの沈黙。ほどなくしてパンパンと肌がぶつかる音。二人の吐息。
カルトは興奮を抑えきれず、下半身に手を伸ばしていた。下着の中へ手を滑り込ませる。下の毛も生えていないそこは既に熱く勃ち上がっており、カルトの手の中でビクビクと脈打っていた。

「うぁ……」
思わず小さな悲鳴を上げ、夢中で自身を扱いた。隣でフィンクスとフェイタンが性行為をしているという背徳的な状況。想像にみる二人の恥態が更に劣情を燃え上がらせる。
(何やってんだろう僕……でも手、止まらない……)
あっけなく達してしまった。掌にべっとりとした白濁液が付着している。
隣の部屋からは相変わらず二人が愛し合う物音が聞こえる。
それをぼんやりと聞き、汚れた手を洗いながら、カルトは何だかうらぶれたような気分になった。
どっと疲労感が襲い来る。再びベッドに潜り込み、夢の中へと旅立っていった。

***

翌日。
「おはよう」
「うっす。てかカルト早いな」
「うん」
カルトは努めて普段通りの態度をもってして、先に起きていた団員たちに挨拶を返した。感情を隠すのは慣れている。昨晩の出来事などおくびにも出さず、平静を装う。

「どうした?お前、元気ないぞ」
「そんなことないけど」
「もしかしてアレか?」
フィンクスが真顔で耳打ちする。
「何?」
「昨夜の、聞いてたのかよ」
「!?」
カルトは一瞬にして顔面蒼白になる。まさか気付かれていたとは。そうだ。あの時、絶を怠っていたかもしれない。きっと劣情に滾ったオーラが駄々漏れであったことだろう。薄い壁一枚隔てただけのそれをフィンクスほどの念能力者が気付かないわけがない。ああ…でも、いきなりオーラが消えたらそれはそれで警戒するだろう。ならどうするのが正解だったのか?カルトは冷たい汗が背中を伝うのを感じた。

「ごめん。悪気はなかったんだけど……」
「お前が謝るこたねぇだろ。うるさくして悪かったよ」
フィンクスは怒っていないようだ。それどころか逆に謝られる始末である。
カルトはほっとすると同時に、ちらりとフェイタンを盗み見た。
いつも通りの無表情だ。見慣れた黒服でなくふつうのTシャツを着て、左腕にギプスを巻いている。フィンクスと違いこちらを気にする素振りはない。
「?」
カルトの視線に気付き、眉を歪め、少し気だるそうに首を傾げる。その首筋の赤い痕は決して蟻退治の時についたものではあるまい。

「カルト腹減ってない?今からボノと朝飯食いにいくんだけど、一緒に来ないか?」
「行く」

カルトは何も見なかったふりをして「うまいホットケーキご馳走してやるよ」というシャルナークに従いて歩みを進めた。

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