M(フィンフェイ)

リップ音を立て唇を貪る。
もどかしげに腰をくねらせながら、甘く掠れた声を洩らす。
その人の仕草に劣情を煽り立てられ、押し倒して下半身の衣服を下着ごと剥ぎ取る。
そして鷲掴んだ尻を左右に押し広げ、痛いほど反り返った己の先を、堅く口を閉ざした穴に押し当てる。

「やだ、フィンクス」
「やじゃねーよ。誘ったのそっちだろが」
「まだナカ洗てないよ。汚れるかも」
「ついた後で洗えばいいだろ」
「そういう問題違うね……ン!痛い、」
言い分を最後まで聞かずにグッと押し込む。先端がめり込むなり小さな唇から苦痛を訴える声が洩れる。
構わず強引に腰を押しつけ押し広げようとするも、滑りが足りず挿入に至らない。
もどかしさに舌打ちしながら、縺れる指でどうにかワセリンを取り出して塗り込み、容器をポイと放って前進を再開する。
腸壁を拡げ肉壁を擦り立て、きつい抵抗を感じながら体重をかけ、細腰を掴んで更に奥へと挿入し、ようやく根本まで埋め込んたところで、屈曲位の姿勢でフェイタンの上にのしかかった。
「く、……ゥ、いた……ぁ」
小さな体に太く長い雄をみっちり埋め込まれ、直腸の更に奥まで犯され、そのうえ無理な体位で足腰を固定され、内外からの圧迫に息を詰め喘ぐフェイタン。
小さな手がフィンクスのジャージをぎゅうと掴む。細い下がり眉がくしゃりと歪む。
きつく瞑った目尻に溜まった涙が溢れて、上気した頬に筋を描いた。
下半身と視覚から強烈な刺激を受けてフィンクスの胸の中を熱い波が過る。
可哀想だと思う反面、雄の征服欲を充たされることでえもいわれぬ興奮が沸き上がる。

「キツいならやめるか?」
訊けばふるふると首を振る。
「一旦抜くか」
もう一度訊く。充血し潤んだ目がフィンクスを仰視する。
「やめないで。早くズコバコして」
幼顔に欲情を滴らせ、息も絶え絶えに哀願する。
フィンクスの腰を重く甘い愉悦が這い登る。
痺れが脊髄を駆け上がり脳髄を侵す。昂ぶる神経が皮膚を粟立てる。
「りょーかい」
低く答えて抽挿を開始する。激しく突き込むなりフェイタンが細い顎を上げて甘く呻いた。
思い切り体重を乗せ、根元まで突き刺した状態で腰を揺らし、狭い肉筒をぐりぐりと抉る。
「あ、あ……ン……、」
穿たれる刺激に合わせて切れ切れの吐息がフェイタンの唇から零れる。押し潰される苦痛と被虐の快感に、苦しげに眉根を寄せて悶える。
まるで小動物を絞め殺しているような罪悪感を覚えると共に、この人を苛め抜きたいという欲がめらめらと音を立てて燃え上がり、より一層フィンクスの劣情を煽り立てる。

「へへ。苛められてよがってやがんの」
「も、フィンクス……止めるのダメ」
動きを止めれば腰に脚を絡ませて、自ら尻を振って続きをせがむ。
フィンクスの腹に擦りつくフェイタンのモノは、一度も触れていないのに先端を濡らして天を仰ぎ脈打っている。
その細く締まった腰を両手で鷲掴み、滅茶苦茶に突き上げて粘膜を捲り上げ、熱く狭い肉筒を味わう。
突き込みに合わせて尻たぶが潰れて形を変える。裂ける間際まで開いた肉穴に肉棒が深々と埋没する。
フェイタンが懸念した通り竿には腸の内容物が絡みつき、抽挿の度にぐちゃりぐちゃりと粘着質な音が上がる。

「あーあー、ウンコついてる。見るか?」
わざと口に出してフェイタンの反応を伺う。首を左右に振り立てながら、消え入りそうな声で応える。
「やだ、汚いね」
抽挿の速度を緩め、絡まった汚物を弄びつつ意地悪く問う。
「汚いったって今更じゃねェか。クソ穴ほじられてよがってる変態のくせによ」
辱めの言葉にフェイタンの肩が震える。
屈辱に打ち震えながらも、その唇から吐き出されるのは反駁ではなく、苦痛に甘さを混ぜた嬌声である。
「……ね、フィンクス。もとワタシのコトめちゃくちゃにして」
乱れた髪が汗で顔に張りついている。横合いから頬に手を伸ばし、払い退けてやる。指の背ですべらかな頬を撫でると、愛しそうに手に頬ずりをして掌に口づけてくる。

――苦痛を溜め込み、怒気で発動し、辺り一帯を破壊し尽くす。フェイタンの発はそういう性質である。
そのくせこうやって手酷く抱かれるのを好む。フィンクスから与えられる痛みだけは甘んじて受け入れる。

「お前、どうしようもねーマゾ野郎だな」
揶揄して訊くとフェイタンは素直に頷いた。
「ふふ。フィンクスにだけ」
小さな手がフィンクスの手を抱え寄せ、愛おしげに親指の付け根辺りを舐める。
熱い舌で指をしゃぶられゾクゾクと腰から背中に疼きが這い登り、更なる欲情の波が胸に打ち寄せる。
「可愛いこと言うじゃねェか。お望み通り苛め抜いてやるぜ」
思い切り腰を突き込み、無茶苦茶に穿つ。突き込みの速度と強さに合わせてフェイタンの口から悲鳴が迸る。
「あ"、ひぃ!やァ、あ、」
「いいかフェイ?オレ以外の奴とこんなことしてみろ。手足もぎ取って便所に流すからな」
脅すような縋るような言葉を受けて、フェイタンがくしゃりと顔を歪めて笑った。
「お前のこそ、ワタシだけのモノよ」
フィンクスの腰に絡んだ脚がぐっと力を込めてくる。腰がずくんと重くなる。
繋がったまま体を前に倒し、体重を預けて唇を塞ぐ。舌を入れて中まで舐め回す。首に両手を絡められもっととせがまれる。上も下も粘膜を触れ合わせ、更に深く最奥を目指して突き込む。やがて訪れる大きな波。脊髄が震え強烈な快楽がこみ上げる。腰の抽挿が激しさを増す。押して引く。ただそれだけの単純運動に世界が支配される。
「フェイ、出すぞ」
耳元に低く告げると同時に最奥へと思い切り突き立てた。その瞬間に肉襞がぎゅうと収縮する。二人の脳を快楽が白く染め上げ、刹那意識を過熱させ奪い去る。
「ぁ、あ」
フェイタンの体が痙攣し、弓なりに反って跳ねる。腹が温く濡れる。搾り取るような断続的な締め付けに触発されフィンクスも射精する。迸りの度に腰が震え、身を震わせながらフェイタンの奥に全てを吐き尽くす。

長い恍惚が後を引く。脳内に陶酔と痺れが残る。
芯を失った雄を引き抜けば、後を追うかの如く白濁の粘液が溢れ出る。
狭い穴はすぐには閉じずに物欲しげに口を緩ませている。
フィンクスが離れてもフェイタンの脚は絡んだまま離れない。
再び覆い被さって顔を近づけると、薄く唇を開いて接吻をねだる。
望むままに唇を重ね舌を吸い唾液をまじえる。
フェイタンの腕がフィンクスの肩を押して横に転がす。今度は逆にフィンクスを押し倒し、腹の上に跨る体勢になる。

「まだ物足りないね」
挑戦的な笑みを浮かべて小首を傾げる。淫猥な笑顔にぞっとするような色気を感じる。
フィンクスも釣られて唇を歪めて笑い返し、
「オレもだ」
言うなりフェイタンを抱き寄せ唇を奪う。
何度味わっても飽くことのない肉の感触。汗に濡れた互いの肌が吸い付き合う。触れ合った部分の熱で、互いの境界が溶けて曖昧になっていく。

2匹の蛇のごとく絡み合い、再びひとつになる。
深く互いの中を侵して満たし一つにする快楽を貪るうちに夜は更けていく。

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