とある少女のバレンティーノ

二月十四日 昼




「静玖、お昼は?」
「先に行っておきたいとこあるから、行ってくるね」
「どこ?」
「応接室」
「まじか」
「? 雲雀先輩、群れてなければ咬み殺してはこないよ」
「そういう問題じゃあないのよ、わかる」

まぁ、わかるのだけれど、それはそれ、これはこれである。
今年一年、どれだけお世話になったと思ってるのさ。
それに深琴ちゃんがお世話になってるんだから、これぐらいの礼はしなきゃいけないんだよ!
なんて言い訳を誰にするでもなく心の中で呟いて、雲雀先輩と草壁先輩に渡す袋を持って廊下を走る。
応接室に近付くにつれて人気がなくなるのだから、徹底してるなぁ、とか感心してしまった。
ふぅ、とため息を一つ吐いて、呼吸を整える。
コンコン、と応接室のドアをノックして、お返事を待ってドアの前で立ち尽くしていると、がららと音を立てて引き戸が開いた。
えっ、と顔を上げると、草壁先輩がどうぞ、と入室を促してきたので失礼します、と行ってから応接室へと入った。
ソファーで寛いでいる雲雀先輩の傍まで寄って、袋を一つ差し出した。

「今年も……去年もお世話になったので、貢物です」
「バレンタインでなく?」
「バレンタインに託けた貢物です」

正直な話、好きだからあげる、と言うよりかはお世話になったから感謝の気持ちを伝えておこうが強い。
別に雲雀先輩を人として嫌いかと問われれば当然ノーなのだけれど、では異性として好きかと問われるとよくわからない。
恋ってむずかしい。

「君は去年はくれなかったね」
「あんまりお世話にならなかったのもありますが、知り合って間もなかったと言うか、まぁ、その、えぇと、去年はほら! 一昨年よりもずっとずっと色々とお世話になったので!!」
「お世話ねぇ」
「並盛に住んでいたら大なり小なり雲雀先輩にはお世話になるわけですし、後、深琴ちゃんの件とか諸々含めてですね」
「言い訳ばかりだ」
「わぁあ、とにかく受け取ってください、雲雀先輩ぃ!」

最終的に情けない声を漏らせば、楽しそうに笑う雲雀先輩の声が耳に届いた。
う゛っ、遊ばれている。
それがわかるぐらいには親しくなったのだから、やっぱりこれは用意しておいて良いよね、と思っていれば、手から重みが消えた。
はっとなって雲雀先輩を見れば、その手にはさっきまで私が持っていた袋がある。
あぁ、良かった、受け取ってくれた。

「お返しは来月だっけ?」
「あぁ、別にそれは無くてもいいです」
「そういうものなんでしょ?」

そうなんですけど、えっ、雲雀先輩からのお返し? 想像がつかない。どうなるんだろうか。
ひぇ、と恐れ多いことに身体が震える。ついと雲雀先輩の瞳が細められたのも原因ではあるのだけれど。

「あの、えっと、あっ、あの、草壁先輩も!」
「は?」
「え?」
「お世話になったので!!」

雲雀先輩から意識をそらして、部屋の済にいた草壁先輩にも袋を差し出す。
ぽかん、と口を開けて驚いた草壁先輩は、ゆるゆると瞬いて、それから袋へと視線を落とした。

「俺に?」
「はい」
「良いのか?」
「草壁先輩にもお世話になったので」
「お歳暮の時期にしては遅いぞ」
「そうなんですけど! いや、一応バレンタインとしてですね?!」

まぁ、ほぼほぼお歳暮みたいな感じで配っているのだけれど。

「いや、ふふ、ありがとう」
「むぅ」
「ふうん………………へぇ」

待って、雲雀先輩、その相槌はなに。えっ、怖ッ!
びゃっと身体を大袈裟に震わせた私に、雲雀先輩も草壁先輩も笑いを隠さない。これは揶揄ってるの、それとも違うの?

「おっ、お昼食べる時間なくなるので、お暇しますね?!」
「は? 食べてないの?」
「お二人に渡すのが優先でしたので」

これ以上揶揄われても困るので、ぺこりと朝みたいに頭を下げて応接室を出る。
ぴしゃり、とドアを閉めて、深いため息を一つ。
なんか、雲雀先輩、テンション高くなかった? 気のせいかな?
………私がテンション高いのかな。いや、いやいや、どうだろう。
そこで言わなきゃいけないことを言っていないことに気が付いた。ちょっとノックするのも手間なので、そろりと静かにドアを開ければ、二人の視線がこちらに向いた。

「あの、今年もよろしくお願いしますね」
「新年の挨拶?」
「諸々ちゃんとしてなかったので! ではこれで失礼しますね」
「―――静玖」
「はあい?」
「ありがとう」
「………………………はい!」

優しい雲雀先輩の声にちゃんと返事をして、改めて応接室を後にした。
あ、そうだ。教室帰る前に、綱吉の教室寄らなきゃ。
目立つことはしたくないけれど、こればかりは仕方ない。だって花ちゃんにも渡したいからね!
なんて思いながら廊下を歩いていれば、後ろから名前を呼ばれた。
あれ、この声………。
聞き覚えのある声にくるりと振り返る。そこにいたのは花ちゃんで、その手には紙のパックがあるので自販機にでも行っていたのだろう。

「花ちゃん!」
「どうしたの、急いで」
「君に会いたかったからね」
「うわ」

うわって言われた。
えぇ、なんで。そんなに変なことは言っていないはずなのに。

「アンタのそれ、素よね」
「素だけれど」
「聞いててこっちが恥ずかしくなるから、ちょっと考えて発言してほしい」
「むぅ。でも君を捜していたのは確かだよ」
「だからそれ」

事実を言っただけなのだけれど………!
花ちゃんが厳しい。とても厳しい。

「あの、えぇと、本当に君を捜していたんだ。まだお昼食べてないから、早く見つかったら良いなって思ってて、だから、その、えぇ、これも駄目かな」
「………あぁ、いや、アンタ、本当に素なのね。だったら良いわ。それならそれでこっちが対応するから」
「う、うん? そう? 私、話して大丈夫?」
「大丈夫大丈夫」

そんなに戸惑われるとは思わなかった、と言った花ちゃんに、私もこんなに戸惑うとは思わなかったと返す。
なんだろ、発言にここまで突っ込まれたのは初めてな気がする。

「それで? どうしたの?」
「もちろん、これだよ! 花ちゃんの分」
「ありがとう。ちょっと待ってて、アンタの分、取ってくるから」

花ちゃんのクラスを目指して廊下を歩いているときに要件を言えば、花ちゃんは嬉しそうに目を細めた。はわ…、美人さん。
はい、と花ちゃんにマフィンを渡せば、それを受け取った花ちゃんは颯爽と教室の中へ消えていった。
その後ろ姿をドアの所に身体を預けて待っていれば、くーちゃんの視線が私の姿を捉えたようだった。
ひらひらと手を振れば、はにかんで手を振り返してくれたくーちゃんににんまりとしていると、小さな袋を片手に花ちゃんがこちらへ戻ってくる。

「はい、あたしから」
「ありがとう!」
「もー、無難にチョコ溶かして固めただけだから女子力も何もないんだけどね」

ちらっと覗いた感じ、デコレーションに力を入れてるみたいなのに何を謙虚なことを、とは思ったけれど、なんか口にしない方がいいかな、と感じたので、違うことを口にしようと唇を動かすと、

「ストップ」
「んむ?」
「なんかちょっとアレな感じがするからストップ。心の準備するから」
「???」

すーはー、と深呼吸をした花ちゃんは、ぐ、と握り拳を作って、意を決したように瞳に光を宿した。
えぇ、そんな、期待されても変なこと言わないよ。

「ただ花ちゃんが作ってくれただけで嬉しいよって言うだけだよ………?」
「あ、良かった。まだまともだ」
「待って、花ちゃんの中の私ってなんなの」
「………………口説き魔?」
「そこまで言われるほど口説いたことはないかな?!」
「アンタは無意識の破壊力がヤバいからおとなしくしなさい」
「う、うん」

わかったような、わからないような。
複雑な顔をしていると、花ちゃんの手が私の頭に伸びた。
宥めるようにぽんぽんと、とても優しく叩いて、それから髪を梳くように撫でられる。

「あれこれ言ってごめんね。アンタはそのままで良いっちゃ良いのよ」
「うん」
「マフィン、ありがとうね。大事に食べる」

お昼食べてないんでしょ、と言外に教室へ帰るよう促されたので、私ももう一度お礼を言ってから教室へ戻ろうとして、珍しく教室でお昼を食べている綱吉と目が合ったので、くーちゃんにしたみたいに手を振れば、御一行全員に手を振られ、ちょっと目立ってしまったのだった。








二月十四日 放課後




綱吉たち御一行と一緒に帰るのはとてもとても憚られたので、そそくさと足早に家に帰る。もちろん、雲も一緒に。
手洗いうがい、その他諸々を終わらせた後、制服のまま沢田家に行くのはちょっとやだな………、と思ったので私服に着替える。
コート着るほどではないよね、ちょっとしか外でないし。うぅんと、どうしようかな。
冬はニットワンピースが定番だよね。そもそも楽だし。それに何を重ねるか………、あ、そうだ。
クローゼットを開けて、明らかに新品のそれに手を伸ばす。
明らかに男物のカーディガン。当然、私には大きいのだけれども、「最近彼コーデ流行ってるし、見たいから」と言う希望で買ってきて私にくれたのだ。嵐ちゃんが。
嵐ちゃんで彼コーデとは?? となったのは致し方なし。誰だってなる。まぁ、暖かそうだからなんだって良いのだけれど。
どうせ彼氏なんていませんし、嵐ちゃんの疑似彼コーデぐらい付き合うのも悪くはないし。私よりよっぽどセンスいいもんね。
タボつく袖に新鮮味を感じながら、綱吉たち宛のマフィンが入った紙袋を持つ。黒曜組宛と、ミルフィオーレ宛のものも入っているから、それなりの大きさのものだ。
えぇと、それから、

(お手紙!)

いつどこで会うかわからないから持ってないといけないよね。
そっと三通紙袋に忍び込ませていると、トントン、と自室のドアをノックする音がした。
なんだろ。

「どうぞー」
「失礼する。お嬢、客だ」
「………………私に?」
「あぁ」

客???
思わず首を傾げると、ドアを開けて顔を覗かせた雷は少しだけ眉を吊り上げる。
え、珍しいね。

「やっほー」
「うぇ?!」
「なにそれ。どうしたの、静玖ちゃん」

いや、君がどうしたのかな、白蘭?!
ひょこりと雷の後ろから顔を出した白蘭は、そのまま部屋に入ってきてぽすんとベッドに腰をおろした。
えぇ、なんで白蘭。どういうことなの。
ちら、と雷の方へと視線を向ければ、彼は黙ったままふるふると首を横に振った。
わかってないのかぁ………。

「桔梗くんがどうしても静玖ちゃんの所にって言うから来たんだけど」
「あー………」
「ん? もしかして、バレンタイン? くれるの?」
「桔梗さん、本当にやらかしたのかぁ………」

じゃあ、はい。
と、白蘭にさっきの紙袋とは違う紙袋を渡す。それは有名店の紙袋である。
ぱちくり、と目を瞬かせた白蘭は、それからはぁ、と脱力したように息を吐いた。

「市販品だねぇ、これ」
「だって本当に今日会えるとは思わなかったし」
「まぁ、僕も来るとは思ってなかったからね」
「じゃあ、市販で良いじゃないか!」
「んー………。一人分にしては大きくない?」
「君だけ用意するのもアレだから、君と真六弔花のみんなで食べられるようにってしたから」

そう言えば、む、と白蘭が唇を尖らせた。
なんでだ。

「特別じゃない」
「特別じゃあないよ。そんなことしな…………いや、うーん。市販は君たちだけだからある種特別ではあるけれど」
「それは違う特別! そうじゃない特別は?!」
「え、ティモだけ」
「そりゃあそうだねぇ。君はそういう子だ」

紙袋を受け取った手とは反対の手で、わしわしと頭を撫でてくる。
いや本当、今日は良く撫でられるな。撫でやすい位置にあるかな、私の頭。
ってか、なんでみんな撫でるんだろう。

「ん? なあに?」
「なんでみんな撫でるかなぁって」
「愛でたいからね」
「目出度い?」
「違う違う。可愛がりたいって方」
「えぇ………」

私を? なんで?

「うんうん、君はそのままで良いよ、静玖ちゃん」

良いのだろうか。よくわかんない。

「そうだ。ユニちゃんには何もないの?」
「お手紙は書いたけど、だって、」
「うん?」
「『恋人の日』の邪魔はしちゃ駄目でしょ」

ユニにもあげたかったけれど、よくよく考えれば、友チョコだのなんだのは日本だけだ。
やっと何も気にせずγさんと居られるんだから、邪魔するのは良くないだろうと思い立って、お手紙を書くだけにしたのだ。

「白蘭?」
「ん、ふふ、良いよ、気にしないで」
「すんごい笑顔だ」
「うん」

すごく嬉しそうな笑顔。いつかの白蘭の企みの笑みではなくて、とても楽しそうで、嬉しそうな、そんな笑顔。

「さて、もう行かないと」
「忙しいんだ?」
「まぁ、………うん、まぁ、仕事にしちゃったからね。僕はボスだし」

ほらやっぱり手作りなんか用意しなくて良かったじゃないか。

「賞味期限日数あるやつにしたから、焦らないで食べてね」
「色々と考えてくれたんだ?」
「そりゃあねぇ。せっかくあげるなら、そうなるよ」
「………………ん? あれ、イタリア組には何もないってこと?」
「お手紙だけ書いたよ」

最早完全にお歳暮(時期はずれてはいるけれど)みたいな感じに、お世話になったお礼を書いただけのお手紙ではあるけれど、こんな時でないと渡せないものでもあるのだ。
だからしたためたけど、駄目だっただろうか。
えっ、どうしよう、子晴に預けちゃったよ?!

「だ、駄目だったかな?!」
「なんでそこで不安になるのさ! 君からならなんだってみんな喜ぶよ」
「そうかなぁ」
「そこは僕を信じて」

白蘭はちょっと信憑性が、とか思ってしまうけれど、僅かに頬を赤く染めて紙袋を持っているのを見ると、本当に嬉しそうだから、ちょっとは信じても良いかな、とか思ってしまう。

「っと、もう行かないと」
「ん、見送る」
「ん? 別に良いよ?」
「あぁ、いや、綱吉のところ行くんだ。どうせ外行くからついでね」
「なるほど。じゃあ、一緒に行こう」

すくっと立った白蘭は、そのままドアの前まで行って、私の行動を待つ。
綱吉たち宛のマフィンが入った紙袋と、お手紙と、忘れ物はないかと確認してから白蘭の傍へ行けば、どうぞ、とドアを開けてくれた。
白蘭って開けてもらう側じゃないの。そんな対応しなくていいのに。
と、思っても口にするのは白蘭に対して失礼な気もするので、彼の行為に甘えて先に部屋から出る。
そのまま素直に玄関まで行って靴を履いて、今度は私がドアを開ける。わざわざ白蘭に開けてもらう必要もないからね。
家の門のところに、ちょっと一般家庭の前に停まるはずもないような車が停まっていることからは視線をそらして、門を出る前に踵を返した。

「あのね、白蘭。わざわざ来てくれてありが―――………」
「これは、誰の?」

白蘭の手が、カーディガンに引っかかる。
まぁ、サイズ的に私のものではないのはわかるもんね、気になるよね。

「これは嵐ちゃんの………いや、厳密に言うと私のものなんだけれど」
「? どういうこと?」
「なんかね、嵐ちゃんが『彼コーデしたい』って言うから」
「だからわざわざ男物を買ったの? 自分で?」
「嵐ちゃんからのプレゼント」
「え? あの子、女の子だよね? 静玖ちゃんに空想の彼氏作って、その彼コーデ? 面白いことしてるね」
「そう言われると、なんか、なんか違う気がするんだけど………」

でも、嵐ちゃんの真意は私にはわからないからなぁ。

「今度、僕のサイズの何かあげるよ」
「えっ、いや、貰う理由がないから要らない」
「何言ってるんだい、静玖ちゃん。来月のお返しを楽しみにしていてね」

貰う理由がある、だと………?!
白蘭細身じゃん! 縦長なだけで細身じゃんか! 白蘭のサイズのそれもらっても、えぇ、私、入るかなぁ。
いや、さすがに男性よりはまだ細い、よね? 大丈夫だよね?
思わず自分の腰に手を添える。それなりな筋肉はあるけれど、頼りない身体である。

「静玖ちゃん」
「うん? なあにッ?!」

ふに、と頬に柔らかい何かが触れる。
触れたけれどそれはすぐに離れていって、にこり、にこにこいい笑顔の白蘭が視界に入った。

「ひぇ………?」
「チョコレート、ありがとね」

またね、なんて軽い足取りで門を通って車に乗る白蘭を追うように見続けたまま、何かが触れた頬に手を添える。
え、何が触れた? え?
音を立てて車が発進する。それを見送っていると、ひょこり、ともんから顔を覗かれる人がいた。

「静玖? 今の白蘭? え、どうした?」
「つ、綱吉ぃ………」

頬に手を添えたままの私を見た綱吉が、ちょっとだけぎょっとしていた。








二月十四日 沢田家にて




「静玖ちゃんの、静玖ちゃんのほっぺが!」
「ハルちゃん、痛い痛い」
「駄目です、消毒大事です!」
「はい」

ごしごしとハンカチでハルちゃんが私の頬を拭っている。綱吉の部屋に、綱吉、隼人君、山本君、京子ちゃん、ハルちゃん、くーちゃん、私、と大人数で集まっている。リボ先生はちょっと遠慮してくれたみたい。
ハルちゃんが私の頬を拭っている理由は一つ。白蘭が私の頬に口付けたからである。

「もう! なんなんですか、あの人! 静玖ちゃんのほっぺをなんだと思ってるんですか!」
「静玖ちゃん、許したら駄目」
「でも、頬にキスって、憧れるね」
「えっ」
「え? する?」
「もう、静玖ちゃん!」

きゃあきゃあと女子四人で騒ぎ立てる。
する? と京子ちゃんに聞いたけれども、たぶん実際には私も行動出来ないとは思う。
こう、スキンシップの中でもハードルは低めではあるけれど、日本人にはハードルが高いってやつなのでは?

「イタリア的にはどうなの?」
「挨拶程度だとは思いますけど、実際には頬と頬を触れ合わせる方が多いので、」

そこまで言って、ちら、と隼人君の視線がこっちに向いた。
え、えっ、なに。
って言うか、もう頬にキスから離れよう。もう良いじゃんか。

「多いので?」
「白蘭が意図的にやったのではないか、と」
「意図的に?」
「十代目の気配を感じてたとか、まぁ、あり得なくないかと」
「あー………。え? 俺に見せてどうするの」

そうだね、綱吉に見せてどうするんだろうね。
擦って赤くなってしまっただろう頬を自分でも撫でる。まぁ、白蘭の行為はちょっとこう、棚に置いて。

「仕切り直しで、はい、これ」
「ありがとう、静玖」
「サンキュ」
「ありがとうな!」

とりあえず先に男子三人にあげる。
それから京子ちゃん、ハルちゃんとあげて、最後にくーちゃんに大きめの袋に入ったそれを渡す。

「多い………?」
「骸君とか、みんなの分。まとめてで申し訳ないんだけどね」
「骸様たちの分も?」
「うん。個別にラッピングしてあるから、くーちゃんからみんなに渡してもらえると嬉しい」
「ありがとう、静玖ちゃん」

嬉しい、なんて微笑むくーちゃんの可愛さにこっちの頬も蕩けるというものだ。
えへへ、可愛い。可愛いくーちゃん見れて嬉しい。

「なぁ、静玖のそれって好意?」
「感謝の方が大きいよ。草壁先輩には時期外れのお歳暮かって言われた」
「そっちの方がしっくりくるな」
「バレンタインにかこつけてるだけなので」

なかなかお礼とか言えないからね。こういうのは大事だし。
イベント毎もたまには乗っからないと。
山本君はさっそくマフィン食べてた。まぁ、お腹減るもんね、この時間。
もしゃもしゃ食べてる山本君に対して、むぅ、と頬を膨らませたのはハルちゃんだった。
ちゃんと味わってます? なんて聞いて、それからこくんと頷いた山本君を見てから、じゃあ、ハルから皆さんに、とハルちゃんがラッピングされたそれを個々に配っていく。

「チョコチップクッキーです」
「わあい、美味しそう! ありがとう、ハルちゃん」
「深琴さんとかぶってしまったんですけど、そこはまぁ、多目に見てもらえると嬉しいです」
「わたしも………これ、」

そっとくーちゃんが小さなラッピング袋を差し出した。
掌にちょこりと乗るサイズである。あれ、これ、

「クロームちゃん、生チョコにしたんだね! 凄い」
「骸様がこれにしろって」

京子ちゃんがくーちゃんに言えば、くーちゃんはぽぽぽ、と頬を赤く染めてそう返した。
うーん、食べたかったんだね、骸君。
わからなくもないけど。私も結構深琴ちゃんのやつ味見させてもらったし。

「じゃあ、最後はわたしから」
「ありがとう、京子ちゃん! みんなもありがとね」

はいどうぞ、なんてにこにこ笑顔の京子ちゃんに、綱吉がお礼を返す。
いやぁ、お菓子大量だね、こりゃ。しばらくおやつ要らないね。バレンタインのこういうとこ好き。
とは言え、手作りものである以上、早めに食べなければならないけれど。

「やっぱり綱吉の家に来て良かった」
「ん? なんで?」
「学校じゃあ落ち着いてこうは出来ないから」
「まぁ、ひと目もあるし、わたわたするよな」
「山本君や獄寺君は凄かったよね」
「はひ、そうなのですか?」
「人がいっぱい集まってた………」

うわ、やっぱりお昼休みの時、傍寄らなくて正解だったじゃん。

「静玖、顔、顔!」
「えっ、あれ、変?!」
「いや、近寄らなくて正解だったって表情(かお)してた」
「私、顔に出過ぎでは………?」
「本当に思ってたのか、お前………」

うわ、引く、みたいな反応されても困るんだけど、隼人君!!
だってさ、だって、君たち御一行そのものが目立つんだもん。そんな中、話しかけるのって勇気いるし、隼人君と山本君に人が集まってたなら、傍に寄るだけでも目立つんだから!
目立つのは、好きじゃないんだよ。

「ツナさん、これ、リボーンちゃんに渡してください」
「あ、わたしも! ツナ君、お願いしていい?」
「あぁ、うん。預かるよ」

………? リボ先生、沢田家いないの?
私、てっきりリボ先生が遠慮してこの部屋にいないだけだと思ってたんだけど、違うんだ。

「リボーンさん、一昨日からイタリアだぞ」
「へぇ、そうなんだ」
「ん? なんだ、リボーンいないのか」
「?!」
「うわ?!」
「あれ、ディーノさん?!」

突然響いたディーノさんの声に全員ビクッ! と身体を震わせ、ドアの方を向いた。
相変わらずのキラキラしいお顔の眩しさにくらくらする。
うぅ、この人本当に派手だな。
って言うか、

「本当に来た………」

思わずぽつりと声を漏らした。
えぇ、子晴すごい。本当にディーノさん、来た。びっくりなんだけど。

「ディーノさん、どうしたんです?」
「バレンティーノだからな。日本だとほら、イタリアのそれと違うだろ? それを味わいに来た」
「えっ」

京子ちゃんとハルちゃんの視線が混じり合う。わかるわかる。
用意してないよね。来るかどうかわからない人の分までは。
………あれ? みんな袋漁ってる。

「はい、ディーノさん、チョコレートです」
「ハルはクッキーです」
「生チョコ………」

用意してる!!!
え、してないの私だけ?!
三人からそれを受け取ったディーノさんはにこにこ笑いながら、後ろ手で隠していたそれを前に差し出した。

「――――――――――――!」
「ひゃ」
「ひぇ………」
「うわ、ディーノさん、すご………」
「ディーノさん、ああいうのやっぱり似合うのな」

ちっ、と悪態ついているのは隼人君だけで、女子三人は息を飲んでいるし、綱吉は呆然としてるし、山本君は感心していた。
私はと言うと、冷や汗をかいている。
いやだってまさか、みんなちゃんと用意してるとは思わなかったし、それに、だって、

(なんでディーノさん、赤薔薇なんて持ってきてるの………?!)

一輪ごとに包んである赤い薔薇を四輪。
ただ薔薇を持っているだけなのに映えるのが凄い。薔薇に負けてない。
いや、本当にくらくらしてきた。冷や汗もだらだらである。ど、どうしよう、私、お手紙しかない………!
一輪ずつ、ディーノさんが京子ちゃん、ハルちゃん、くーちゃんに渡していって、そうして私を見て、ゆっくり目を見開いた。

「静玖、どうした? 真っ青な顔して」
「え、あ、あぅ、うう」
「静玖?」

首を傾げたディーノさんに、言葉にならない言葉を上げる。
だって本当に来るなんて思わなかったんだもん!
でも、こんな言い訳したら駄目だよね。三人とも用意してあったわけだし………。

「ディーノさん、あの、ちょっと」
「うん?」

ディーノさん宛のお手紙を持って、彼の手を引っ張って廊下へと出る。
ちょっと綱吉たちの前では渡しにくい。
素直に後ろについてきてくれたディーノさんに感謝しつつ、彼に向き合った。

「あのですね、ディーノさん」
「うん」
「まさかイタリアから来るとは思ってなくてですね、用意してないんです。日持ちしないの置いておけないし」
「あぁ、だからあんな真っ青な顔してたのか。そうだな、こっちも予告してなかったし、お前は間違ってないよ」
「それでですね」
「ん? 気にしなくていいぞ」
「あの、当日会えないだろう人には、お手紙したためたんです」
「ん゛っ?!」

ディーノさんらしくない声が聞こえたけれど、それどころではない。
あぁ、やっぱり子晴に渡してもらえばよかった。これ、結構緊張するぞ………!

「だからですね、あの、これ、」

どうぞ、と封筒を差し出す。
顔が熱い。でも背中はさっきの冷や汗で冷えている。緊張で心臓もバクバクだ。
もしかして私、チョコレートあげるよりよっぽど緊張する選択をしたのだろうか。現状、したんだろうなって感じる。
緊張と恥ずかしさでディーノさんの顔が見られない。ぎゅっと目を閉じてしまう。
沈黙が、痛い。

「――――――――Grazie!」
「い、いえ、」
「Lettera d'amoreか。嬉しいな!」

ん、なんて?
なんて首を傾げる前に腕を引っ張られる。
そうしてぎゅっとディーノさんに抱き締められてしまった。

「?!?」
「まさかお前からこれがもらえるなんて! 今日は記念日だ!」

なんの?!
それよりも離してほしい。誰か助けて!!!

「あーーー!!! ボンゴレ、ボンゴレー! 跳ね馬が静玖にセクハラしてるぞー!!! ボンゴレー! 静玖の危機ー! ボンゴレー!!!」
「なんて?!」
「セクハラじゃないぞ?!」
「えぇ、スカル君………?」

ディーノさんの腕の中、なんとか逃げようとわたわたしている私の耳に、スカル君の声が響いた。
その後は、阿鼻叫喚だった、と言って良いかもしれない。
スカル君の『セクハラ』っていう単語に反応したハルちゃんが私を救出してくれたり、ディーノさん相手に臆せず説教したり、隼人君がディーノさんを警戒しだしたり、京子ちゃんとくーちゃんが私の心配してくれたり、あれやこれやてんやわんやだったのは言うまでもなく。
そんな中でものほほんと構えてた山本君は大物と言うかなんというか。
結果、綱吉の部屋にさっきまでのメンバーと、ディーノさん、リボ先生、スカル君を足した人数が入った。
ちょっと狭いね。

「で? 結論から言うと何が原因だったんですか?」
「静玖からのLettera d'amoreが嬉しくてな」
「れ………?」
「ラブレターだろ?」
「えっ、違います違います。そういう要素は欠片もないです」
「欠片もないのか?」

うるり、きれいな緑の瞳を潤ませないでほしい。そんなことされても書いてある内容は変わらないのだ。
イタリアから帰ってきたリボ先生はスカル君と連れ立ってたらしく、先に綱吉に挨拶にってところで、ディーノさんに抱き締められている私を発見。気が動転してあんな発言になったらしい。
そのスカル君は私の膝の上だ。リボ先生はハンモックの上である。

「あのですね、ほら、メッセージカードあるじゃないですか。あの派生みたいな感じのお手紙なので、日頃の感謝を綴っただけです。ラブレターとか、そういうのではないです」
「ないのか」
「ないです。もう今更内容は変わりません」

やっぱりお手紙駄目だったかな。
ちなみにスカル君の手にももうお手紙がある。スカル君には特に緊張せずに渡せたので安堵の一言だ。
と言うか、ディーノさん相手に無駄に緊張した、が正しい気もする。

「あの、恥ずかしいから私がいないときに読んでくださいね」
「出来れば読んでくれたら良いんだかな」
「ボンゴレ、跳ね馬が静玖をいじめてるぞ」
「スカルはそのスタンスどうしたの?」
「スカル君、ディーノさんに当たり強くない? どうしたの?」

思わず綱吉と一緒に疑問をぶつけると、ぷいと顔をそらされてしまった。
どうしたんだろう、本当に。

「オレがイタリアでボンゴレ本部に行った時に、ちょうどカルカッサからの使いとしてソレが本部に来てたんだ」
「はぁ、それで?」
「九代目と、ヴァリアー幹部に手紙出したの誰だ?」
「私ですけど、えぇ、それが?」
「自分のがないと思ってたみたいだゾ、そのパシリ」

パシリ言わないでほしいけれど、今はそれどころではない。
私の膝の上でちょこりと座っているスカル君の、フルフェイスヘルメットの上から頭を撫でる。

「あのね、本当はディーノさんの分もスカル君の分も子晴に渡してもらおうと思ってたんだよ」
「お前の護衛に?」
「うん。だって、日本に来るかわからないし、ほら、連絡の取りようもなかったでしょ? だから、カルカッサの方に行けば絶対にスカル君に届くじゃない」
「あぁ」
「でも子晴が、スカル君とディーノさん、後にもう一通、絶対日本に来るから自分から渡したら良いって言ってくれたんだ」

スペルビも日本に来るのなぁ、もう夕方だよ?
自分から渡せたら良いけど、やっぱり子晴に預けた方が安心だった気がする。

「よかった」
「ハルちゃん?」
「最初、イタリアの人たちには何もしないって言っていたので、静玖ちゃん、どうなっちゃうのか心配だったんですけど」

そうなの?!

「だから、お手紙用意したって聞いて安心しました」
「え、えっと、心配掛けてごめんね?」
「あぁ、いえ、静玖ちゃんが悪いとかではないくて、あのその、イタリアの人たち暴走しないかなぁって」
「? 私からの何かなくても暴走はしなくない?」
「えっ」
「え」

ハルちゃんの視線がディーノさんに向く。それに倣って私もディーノさんを見ると、ディーノさんはにこっとそれはそれは輝かしい笑みを見せた。
待って、その笑顔の意味はなに?!

「そう言えば、静玖。入江くんたちはどうしたんだ?」
「正一君、テストがあるらしくってしばらく会えそうにないから子雨のお願いした」
「そっか」

出来れば自分で渡したかったけれど、まぁ、みんながみんな、タイミングが合うわけではないからね。
だから黒曜組の分はくーちゃんにお願いしちゃったわけだし。

「なんか、どっと疲れたな」
「ごめんね、綱吉」
「いや、静玖は悪くないから」
「ふふ、でも」
「ん?」
「こんなに大騒ぎのバレンタイン、初めてだ」

楽しいね、とか思わず口にしてしまった私に、みんなが優しい笑みを浮かべていた。








二月十五日 柚木家




すうっと頬を撫でる風の冷たさに目を開ける。寒い。なんでだろう。
あの後、あの大人数で沢田家でみんなで夕飯をご馳走になって、騒いで、楽しんで、私らしくない時間を過ごして。
体力いっぱい使ってくたくたで帰ってきて、お風呂入ってすぐに寝た。
寝た、のだけれど。
風が冷たい? なんでだろう………………?

「起きたかぁ?」
「スペルビ………?」

ぱちん、と部屋の電気が点けられる。
突然の明るさの刺激に目を細めれば、視界の端に銀色が見えた。

「んん、おはよう………?」
「起こすつもりはなかったがなぁ゛」
「またベランダから入った………」
「なんだぁ? 玄関ぶち破れば良かったか?」
「やめて」

のろのろと寝起きの身体を起こす。スペルビは夜にも関わらず、しゃきっとした顔をしていた。
むぅ、眠くないのかな。
なんて思っていれば、彼はぽすん、とベッドの縁の腰をおろした。

「どうしたの?」
「今日………いや、もう昨日かぁ。バレンティーノだったろ」
「うん」
「九代目からだぁ゛」

ティモから!
眠気が一気に吹き飛んだ。自分でも表情が明るくなったのがわかる。
ティモ、ティモから。嬉しい!
ほら、と渡された紙袋を大事に抱えて………イタリアの有名ブランドのロゴが見えたのは気のせいだよ! それは見なかったことにするよ………、中身を見ていいかスペルビに聞いてみる。
もうお前のだから好きにしたらいい、と返され、それもそうかと紙袋に手を入れた。

「ん、んん?」

楕円形。女性の横顔。つるりとした表面。―――カメオだ。
えっ、カメオだ。
きれい。いやでも、これ、どう飾ったらいいのかな。私にはまだ早くない?
いや、嬉しい。とても嬉しいけど………あっ。

「んふふ」
「どうしたぁ?」
「ううん、なんでもない」

わからないなら、ティモに聞けばいい。いつものお手紙の話題の一つとして、ティモに聞いてみればいいんだ。
ティモに貰ったものだもの。それぐらい許されるよね。

「あっ、スペルビ、あの、まだ大丈夫?」
「あ゛ぁ」
「えっとね、」

ベッドから降りて、勉強机の上に避難させてあった封筒を手に取る。
良かった、スペルビ、来てくれた。バレンタインは過ぎてしまったけれども、まぁ、時差とか諸々あるから致し方ない。

「あのね、スペルビ、これ」
「手紙? 九代目にかぁ?」
「違う違う、君に」
「は? ………はぁ?!」

少しだけ響いた大きな声に、二人して口元を抑える。いや、私は騒いでないけれど。

「ティモ宛のはプレゼントと一緒に贈ったから大丈夫。これはね、君宛。日頃の感謝をこめて、したためたやつ」
「感謝」
「うん」

なんでかディーノさんはラブレターだと勘違いしていたけれど、これはそんなものではない。

「ザンザスさんとか、ヴァリアーの皆さんにも送ったんだ。これは子晴が自分で渡した方が良いって言って、手元に残してあったんだ」
「オレ宛?」
「スペルビ?」

じっとお手紙を見続けるスペルビにどうしたんだろうかと私も彼を見つめる。
本当にどうしたんだろう。お手紙、珍しいかな。

「バレンティーノってそういうもんじゃねぇだろぉ゛」
「でも、こんな時でもないと出来ないでしょ」
「………………………静玖」
「うん?」
「あれはどうしたぁ」

あれ?
お手紙を受け取ったスペルビは、その場で開けるようなことははず、そっとコートの内ポケットにしまった。良かった。目の前で読まれたらどうしようかと思った。
そんな彼の次の視線は、ローテーブルに向いている。
そのテーブルには一輪挿しが飾ってある。………そう、ディーノさんがくれた薔薇である。

「あれはディーノさんがくれたんだ。みんなに一輪ずつ」
「ほー………」

待って、その反応はなに。

「花なんて贈られたことないからびっくりした。凄いね、イタリアーノ」
「静玖」
「うん?」
「ん」

スペルビの手の内に収まる程度の箱を差し出される。
箱を見て、スペルビの顔を見て、また箱に視線を戻して、またスペルビを見る。
そうして、自分の指で自分を指差せば、顎で早く受け取れ、と示された。
そっと箱を掴む。ラッピングのリボンが可愛い。リコリスが気に入りそうなやつだ。

「ありがとう………? え、なんで?」
「何がだぁ?」
「プレゼント………」
「イタリアだと男が贈るもんだからなぁ゛」
「ん、んん、ありがとう。あの、開けても良い?」

スペルビの掌サイズだから、私の掌よりはちょっと大きい。
なんだろう、気になる。

「好きにしろ」
「うん」

スペルビの隣に座って、箱を膝に乗せてリボンを解く。すぴぴ、と寝息を立てていたリコリスが、その音に反応してぴるぴると耳を動かしていた。

「―――コサージュだ!!」

パールも付いてる。可愛い! え、これ貰っていいの? 私、お手紙なんだけど。

「ありがとう、スペルビ」

嬉しいのだけれど、とても嬉しいのだけれど、なんでこれをくれたのかを聞くのはちょっとアレな気がする。

「で」
「で?」
「ボスからもあるんだがなぁ………」
「ザンザスさん?」

スペルビが指差したのは、勉強机の隣にいつの間にか置いてあるクーラーボックスだ。
え………? クーラーボックス………?
どういうことなの???








「嵐ちゃん、おはよう! あの、朝からごめんね!!」
「姫さま?」
「ザンザスさんからお肉届いた!!」
「どういうこと?!」
「バレンティーノに肉贈るバカがいるか!!!!」
「わぁあ、子霧!!! 口調が!!!」
「って言うか、雪姫、それ誰から受け取ったの?」
「え? スペルビ」
「雪ちゃん、そろそろベランダの鍵掛けた方が良いよ」

ザンザスさんから霜降り肉が届いた、バレンタインの翌日の朝のお話。








---------------------
間に合わなかったけれど、ここまで書いたのでボツにするの勿体ないので載せます。載せますとも。
オールキャラにすると凄いことになりますね、文字数すごいことになっております。私自身が一番ビビっております。
少しでも楽しんでもらえたら幸いです。












おまけ




「あー、どっちが良いんだろう」
「十代目?」
「食べたら無くなる手作りと、一生残る直筆の手紙。どっちが良いんだろうかって」
「………………………あぁ、それですか」
「手作りは嬉しいよ。でもさ、あいつの想いがしっかり載った手紙も良いよね」
「はぁ」
「まぁ、手作りマフィン貰ったやつは手紙なし、手紙貰ったやつはマフィンなし、だな。例外がプレゼントも手紙もなんてのは九代目ぐらいだろ」
「それがね、リボーン」
「なんだ?」
「じゃーーん」
「?!」
「はぁ?」
「手作りマフィンとお手紙、両方貰った。えへへ」
「静玖はあれだけお前とべったりでまだ伝えきれない気持ちがあるってか?!」
「なんでリボーンが怒るんだよ。良いじゃんか、両方もらっても」
「静玖は本当に十代目が好きですね」
「今のあいつはみんなのこと大好きだよ」
「う゛っ………」
「えぇ、なんで呻くの、獄寺君」
「お前、お返しどうすんだ?」
「今年は、和菓子にしようかなって。そして俺も手紙書く!」
「あぁー、お返し、お返しか………」
「大丈夫だ、獄寺。よっぽど変なものでなければ静玖は喜ぶ」
「なんでリボーンが断言するんだよ」
「バレンティーノの贈り物に霜降り肉を贈った奴がいるからそれより変なものは贈らねぇだろ」
「待って、肉贈ったの誰?!」
「ザンザスだ」
「自分が食べたいもの贈ってるー!!!!」
「考えます。ちゃんとあいつへのお返し、考えます。肉は!!! 駄目だろ!!!!」

なんて会話があったのだった。




- 204 -

[] |main| []
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -