ただの優男では決してなく

※ モブ視点のお話
※ 大学生ぐらいの話
※ 入江くんとお付き合いした時空
※ 書き手は文系なので理系への理解度が低い
※ 色々と捏造が酷い








理系男子、なんて、世の中に持て囃されているほど素敵なものじゃねぇ。
イタリアからの留学生の手作り棒付きキャンディをぼりぼり貪りながら俺は心の中で呟いた。
来週に迫りくる大会のための最終調整のためにほとんど大学泊まり込みの俺達は、最低限の清潔さを保ってマシンを弄っている。
男も女もほぼほぼ目が死んでいる。だって己の目の死に具合などどうでも良いのだ。大事なのは目の前のマシンである。
書類審査は大丈夫だった。後は調整に調整を重ねて、最高の状態で大会に挑むことだ。
そのためには、これが最後の追い込みなのだ。
もう諦めて髭面の男もいるし、化粧なんてしていられないと、眼鏡とマスクで顔を隠している女もいる。
理系の………しかもクッソ忙しい時期の女も男もこんなもんだ。
勉強の出来る理系男子? キラキラした理系女子?
居るだろうけど、少なくともこの部活にはそんなものいねぇ。幻想だ、幻想。
…………………………いや。
いや、無駄にキラキラした、もしくは清潔を保っている男は二人ほどいる。
先程言ったイタリアからの留学生スパナと、うちの期待の新人、入江正一である。
部活中は絶対つなぎ、とか訳のわからん信条を持ってる日本大好きイタリア人スパナと、Tシャツにチノパンというさっぱりとしたスタイルを貫いている入江は、部活の女子たちからも人気があるにも関わらず、見向きもしない生意気な後輩たちである。
………………まぁ、スパナはな? その小脇に抱えた『モスカ』に並々ならぬ熱を注いでいるので、現実を見た女子たちからは「ないわぁ」の評価を受けてはいるが、入江は違う。
どんなに忙しくても身奇麗にしているし、何より女子に優しい。まぁ、男にも優しいが。胃腸が弱めなのが玉に瑕だが、そこが可愛いと無駄に人気だ。
が、本人はその手のお誘いはすべてお断りしている。意味がわからん。
「簡単に靡かないのが良いのよ」とは女子Aの談。「誰かを贔屓することなく全部断っているところに好感が持てる」とは女子Bの談。そして「誰も一律に見ている男に『特別』にされたらそれはもう『格別』よ」と言ったのは女子Dである。ちなみに女子Cはスパナ派だった。
好奇心から俺はどうよ、と聞いてみたところ、全員に鼻で笑われた。チクショー!!!
そんな入江の特別が見れたのは、大会当日だった。
今回の大会はテレビの撮影も入るし、来年、大学生になる高校生とか、選考漏れした学校の生徒とか、そしてロボットに興味のある一般人とかも大会は観覧自由だ。まぁ、俺達が一番気にするのは企業の人たちだが。
だって、もしかしたら就職先が決まるかもしれないし。
ぐへへ、と汚い笑みを浮かべている俺達三年生を、一年生たちが気持ち悪いものを見るような目で見ている。
ふん、そんな瞳をしていられるのは今だけだ。就職活動始めたら、どんな方法でも就職に繋がるなら逃す手はないのだ。
本当にロボット………機械方面で就職活動するなら、企業に興味を持ってもらうのが一番早い。
チラッとスパナと入江を見る。二人ともキョロキョロとあちこちを見渡しているが、どう見ても緊張からキョドっているわけではなさそうだ。
………………どう見ても、誰かを捜している。
観覧席の一部、なにやら賑わっている席があって、だけれどどう見ても一般人枠のそこを指差したスパナが、大きく手を振った。そうすれば、あちらの団体さんも手を振り返してくる。あぁ、スパナ応援団か。いや、入江も手を振っていたから、二人の応援団か。チクショー、羨ましくなんかないんだからね! ないんだからね!!!
………………………大会の結果は準優勝だった。負けたのは悔しいが、ここまで成績が出たのは初めてだったし、何人かは企業の人から名刺を貰っていた。かく言う俺もだが、今は準優勝の悔しさと喜びが入り混じってそれどころではなかった。
そんな中、次はどこを改良していくかパーツ丸ごと変えるかなど、「次」について話しているのはやっぱりスパナと入江だった。

「こら、お前たち! まずは勝ったことを喜ぶぞ!! そんで、負けたことを悔しがるぞ! 改良はその後だ」
「ン」
「はい、先輩」

こくんと頷いたのは、手作りの飴を口の中で転がしているスパナで、入江はきちんと返答してきた。
礼儀の差ぁ………とは思うが、スパナはこんなもんだろう。
そんな中、

「正チャン、スパナくん、お疲れ様♪」
「スパナ、入江くん、準優勝おめでとう!!」

と、声を掛けてきたのは真っ白い男と、ふわっふわの金茶色の髪の男。その二人の後ろにいた女の子は、まだ口を開いていない。

「白蘭さん、綱吉くんも」
「ボ………………ツナヨシ、静玖も、ありがとう」
「こちらこそ、誘ってくれてありがとうね、スパナくん」

にこ、とスパナに笑顔を見せた後、その視線を入江に向けた。

「正一くん、こういうこと教えてくれないから」
「うっ、いやだって、静玖ちゃんに見られてると、ほら、緊張するし」
「私みたいな素人が見たって詳しいことわからないのに?」
「そうだけど、ほら、君は特別だから」
「むぅ」

特別? 特別だって?! 「あの」入江の?!
その発言に、三人の襲来に身を引いていたメンバーの視線がぐわっと女の子に向いた。
どこにでも居そうな、普通の女の子だ。
ただ、入江もスパナもあの真っ白い男も背が高く、金茶色の髪男と女の子はちょっと小さめに感じてしまう。それぐらいしか特徴がない、と言ったら怒られるかもしれない。

「君だから、緊張するんだよ」

なんて、あの………………誰にでも優しく、誰かを贔屓することない男が、頬を赤く染めて女の子を見ている。
―――あぁ、これは。
詳しいことを聞かなくてもわかる。これは間違いなく「特別」だ。彼女が入江の特別であると、入江の態度でわかる。

「でも、私も正一くん応援したいから、次からはちゃんと教えてね」
「………………うん」

あ、これは教えないヤツだな。








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以降締めが思い付かずに断念。ごめんね、正一くん!!
そして私には理系はむずかしかった………。



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