※ 気合いで大人リボ先生注意
熱を出した。
子霧達に大人しくしてるように部屋に押し込まれて、何も言えなくて、しゅんと肩を落としてベッドに戻る。
熱は確かにあるけれど、何もすることないし、なぜだろう、眠たくない。
ううう、暇だよぅ。
「───起きてるか?」
「ふぇ、」
「よぅ」
からり、窓を開けて私の部屋に侵入してきたのはリボ先生だった。
あぁ、また窓の鍵しめるの忘れた、と心の中だけで呟いて、身体を起こす。
「風邪っぴきが無茶するな。ほら、寝てろ」
「リボ先生………」
「ツナ達は学校だからな。寂しがりやのお前を癒やしに来てやったぞ」
垂れた眉にまあるい目。
ぼんやりとその幼い姿を見ながら、布団の中に身体を戻す。
きゅ、と軽く握りしめた手に小さな紅葉のような手が重ねられたかと思ったら、その手の感触はすぐに変わった。
骨の太い指。だけれど武骨さはなく、するりと長く細い、『綺麗』な指。
手の甲に当たる、手のひらの肉刺。
手の甲を見れば、関節がぽこりと浮き出ていて、日本人らしからぬ白さを称えた手だった。
「あ、」
「どうした」
耳をくすぐるのは子供特有の高い声ではなく、低い声。
そろりと顔を伺うように見上げれば、獰猛さを隠した細い目が見えた。
───あ、
「リボ、先生………?」
「あぁ。───くくっ。なんだ、見惚れたか?」
「それ言ったら台無し」
「………本当に見惚れてたのか、お前」
「だって、」
呆れたような声とため息。
その仕草にも、思わず顔が赤くなる。
ビアンキさんが好きになる理由が、見えた気がする。
中身はともかく、外見は素晴らしいことこの上ない。
ぱっと手が離れていったのを、思わず追い掛けてその手を掴んだ。
細い目がかすかに見開かれて、それから喉を鳴らして笑われる。
あ、ああああ、ああもう!!!
「なんだ、寂しいのか?」
「ちが、ごめ、ごめん、リボ先生っ」
「良いだろう、ほら」
手を離そうとしたら逆に手を握られた。
私の手なんか簡単に覆ってしまうぐらいの大きな手。
なんだか恥ずかしくなって顔を背ければ、きしりとベッドが軋む音がした。
………ん?
ぱちり、目を瞬くと、繋いでいない手が伸びてきて、私の前髪をさらりと払った。
そうして額に触れた温もりは、一瞬のうちに離れていく。
───え。
「良くなるまで傍に居てやるからもう寝ろ」
なんて聞こえてきたけれど、熱とは違った意味で体温が上がってしまってそう簡単には眠れなくなってしまったのは言うまでもない。