『log』の『礎のお話』を読んでいただけるとよくわかります。




ほら来い、と両手を差し出されても、どうしようもなかった。
怖いとか、恥ずかしいとかではなく、そう、まだ、降りるわけにはいかないのだ。

「おい、子雪」
「だ、駄目。駄目です、Gさん。この子、巣に帰してあげないと」
「あのなぁ、」

手のひらに収まる小さな小さな鳥を抱えて大きな木に登り、巣がある枝まで後少しまで登ったところで、Gさんに見付かったのだ。
Gさんは獄寺君と違って、とても心配性だ。いや、こう言うと語弊があるかも。
獄寺君は綱吉に対してのみ心配性だけれど、Gさんはプリーモに対しても、私に対しても心配性。
いや、お世話焼きさんと言うべきかもしれない。
よいしょ、とさらに高く登って、巣がある枝までようやくたどり着く。
手の中の小鳥を巣に返して、私はそっと微笑んだ。

「よし」
「子雪!」
「え、はい!」
「ほら、飛び降りろ」

そう言って、Gさんは再び両手を広げた。
ええ、この高さ、から?

「子雪、ほら、来い」
「あ、でも」
「ちゃんと受け止めてやるから、」

いいから来い、と強く言われ、こくっと息を飲んでから、枝から身体を離した。
ふわ、と浮いた瞬間、重力によって下に落ちる。
ぼふん、とGさんの腕の中に落ちれば、彼は静かに笑った。

「お前なぁ、無茶して怪我でもしたらジョットがうるせえだろうが」
「う、でも」
「でももだってもねぇ」
「でも、帰れるなら、帰してあげたかったんです」

私はまだ、現代に帰れないけれど、あの小鳥はまだ巣に帰れるのだから、帰してあげたかった。
わかってる、ただの我が儘だ。

「帰れる日は来る。そうジョットが言っただろう?」
「はい、」
「だから、大人しくしておけ。───お前の気持ちは良くわかったがな」
「はい」
「ほら、帰るぞ」
「………はーい」

てっきり腕の中から降ろしてくれるのだと思ったら、Gさんは抱え直すだけで私を降ろすことはなかった。

「えぇ、Gさん?」
「うるせえ。黙って抱えられてろ」
「…………はーい」

ふわり、香るのは煙草の匂い。
慣れない香りに、私はわずかに頬を赤くして落ちないようにとGさんにしがみついた。
私が綱吉の元に帰るのはまだまだ先のことらしい。




今日はの腕の中



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