へぷしゅ、と短くくしゃみをした懐かない子猫に、どうしたの、とボンゴレ坊主が首を傾げて聞けば、彼女はふるりと首を横に振った。
「や、なんか最近視線を感じると言うか………」
「どうでもいいけどなんで保健室に屯してんだ」
「だって屋上行くとヒバリさん居るし」
「最近寒くなってきたから室内がいいよね、ってことで」
ずず、と子猫がすするのはコーンスープ。
マグカップと粉末状になって市販されたそれを持ち込んで、保健室のポットのお湯を使って作ったものだ。
ちなみにボンゴレ坊主はココアを飲んでる。マグカップはもちろん、ヤツ自身が持ち込んだもの。
悪びれた様子が全くない二人に、保健室の王たる俺は深いため息を吐いた。
「子猫ちゃんはまだしもなんでボンゴレ坊主まで」
「俺がコレの幼なじみだから」
「へえへえ。───そういや、隼人は?」
「シャマル先生、獄寺君と知り合いなんですか?」
「知らないのか? 仕方ないな、シャマル先生の特別授業でも───………」
「シャマル?」
ボンゴレ坊主の声が低くなる。
───こりゃまた、らしいっつーか。
思わずぼやく。
気弱なボンゴレ坊主も、いろんな意味で可愛くて大切な子猫の前ではちゃんとした男ってわけか。
そりゃあ、隼人も山本も要らねぇよな。
彼女の前なら、たった1人でも『ダメ』にはならない。
あのボンゴレ坊主をそうするだけの影響力を、この小さなお子ちゃまはわかっているのか?
いや、きっとわかってねぇんだろうなぁ。
「綱吉のココア美味しそうだね」
「ん」
「ありがと」
ちょ、えぇえええっ!
何当たり前のようにカップ交換してるんだ、お前らっ。
しかも何当たり前のように、ボンゴレ坊主のカップに口付けてるの、子猫ちゃん?!
「おいしいね」
「うん」
「………あー、お前さんらさぁ」
1つのベッドに並んで腰掛けて、にこにこと笑い合う。
甘酸っぱいなんてレベルじゃない。
「いちゃつくなら他所でやれ」
オジサンは他人のいちゃラブは見たくねぇよ。
そう言えば、2人はそろって首を傾げる。
なんて言うかこう、やっぱりこの2人、どこかおかしい。