七人七色

※ 気合いで大人な姿の風さん、スカルくんにご注意




「──────出てって」
「な、待て、静玖!」
「聞こえなかったの、リボ先生。私は、『出てって』って言ったの」
「なんで俺が───」
「プクク。リボーンが怒られるなんて珍しいぜ、コラ!」
「なぁに、勘違いしてるんですか、コロネロさん。私は君にも言いました!」
「!!」
「───もう、いい。2人が出ていかないなら私が出て行く! 行くよ、スカルくん」
「え、」
「マモ君、ちょっとお買い物してくるからお留守番宜しくね」
「ん、いいよ」

バタン! と、音を立てられ閉められたドアに、黄と青は呆然となっていた。




☆ ☆ ☆ ☆




馬ッ鹿みたい、と藍色のアルコバレーノは遠慮することなく呟いた。
もぐもぐの部屋の主である静玖に渡されたチョコレートを食しながら、未だ呆ける黄と青に声を飛ばす。

「静玖は誰よりもスカルに甘いってわかってるのに、彼女の目の前であんなことしたら怒られても仕方ないよね」

自業自得だよ、と言われ、2人は唇を噛み締めた。
アルコバレーノの中でも特にスカルと仲の良い彼女の目の前で、『いつも通り』振る舞うわけにはいかなかったようだ。
『いつも通り』振る舞った結果がこうである。
そう、いつも通り、スカルを名前で呼ばずに『パシり』と呼び、そして理不尽な扱いをしたことが、彼女の逆鱗に触れたのだ。

「なんで怒ってんだ、アイツ」
「だから、静玖にとってスカルは友人なの。細かく言うなら、『くん』のスカルと、『先生』・『さん』の敬称の君達とは地位が違うんだよ」
「なっ、」
「ちなみに僕は『君』だからね、君達より上だよ」
「はっ。オレのは尊敬が込められているんだぞ?」
「馬鹿じゃないのかい、君。本当に尊敬している相手に、普通、箸を投げるかい?」

ぴた、と黄が動きを止めた。
何故それを知っている、という視線を向けたが、藍は気にすることなく、静玖が彼のために買っておいたレモネードでその喉を潤す。
1口、2口と飲んでから、ふう、とため息を吐いた。

「僕はヴァリアーだからね。情報収集なんてお手のものだよ」
「腐ってもマフィアか」
「あぁ、そうだ。リボーンが箸を投げられた際、本来なら君と知り合っても良かったのに挨拶もなかったね、コロネロ」
「ぐっ、」
「更に僕と会った時、ちゃんと彼女に君の存在を仄めかしたのに彼女は会いに行こうとしなかったぐらいだし」
「うぐぐっ、」
「スカルと登場は同じなのにこの扱いの差はなんだろうね、コロネロ」

くす、と藍が笑う。
青が背負ったライフルに手を掛けた瞬間、がらりと窓が開いた。
そこに立つのは緑で、真っ白な白衣を風にはたはたとはためかせている。

「雪のはいないのか」
「残念。そこの2人が怒らせたから出て行っちゃった」
「馬鹿なことを」

そう言いながら、緑は律儀に靴を揃えてから主の居ない部屋に入った。

「どうせスカル関連のことだろう。雪のとスカルは仲が良いのを知っていて行ったのならただの馬鹿なのだよ」
「ヴェルデ………!」
「ん? なんだ、私の言に間違いでもあるのかね」

怒りをさらに増した青に対し、緑は小馬鹿にしたように口端を吊り上げる。
舌打ちが聞こえた後、今にもまさに抗争が始まろうとした。
───刹那、

「静玖ちゃんのお部屋で暴れないでね?」

かちゃり、ドアが開いた。
居たのは橙をぶら下げた大空である。
珍しく部下を連れていない彼女に、藍は目深に被ったフードの下、ぱちりと目を瞬いた。

「アリア? 何してるのさ」
「静玖ちゃんに美味しい紅茶を淹れてあげようと思ったんだけど、留守らしいわね。まぁ、室内で待たせてもらう許可はもらったけれど、」

藍の問いに答えた後、橙はちらりと黄と青を見る。
そうしてふ、と静かに笑った。

「これに懲りたら、少し行動を改めることね」

今頃紫と赤がいい思いをしてるわ、とは敢えて呟かなかった橙は、ベッドの縁に腰を下ろして部屋の主の帰りを待つことにした。




☆ ☆ ☆ ☆




「むー、」
「静玖、何時まで怒ってんだ?」
「リボ先生達のスカルくんへの対応、嫌なの」
「………いやまぁでも、あの人達がもっと品行方正だったら怖くないか?」
「それにしたってあれはない!」

リボ先生達ってばひどい、と言えば、腕の中のスカルくんは苦笑するだけだった。
そりゃ、条件反射で従っちゃうスカルくんもスカルくんだけど、従わなかった場合暴力で従わせるあの姿勢は頂けない。

「む、」
「───そういうストレスは甘いものを食べて吹き飛ばすと良いですよ、静玖さん」
「風さん!」
「げ、風………」

にこやかな笑みと紙袋を抱えた風さんが、何故か大人の姿で眼前に居た。
相変わらず、裾の長いチャイナ服を着ているけれど、それが似合う美しい人だ。

「ほら、静玖さん。あーん」
「え、」
「あーん」

紙袋から饅を出した風さんはそれを1口大にして、私の口の前に持ってきた。
ゆっくりと口を開ければ、風さんは再びにこりと笑って饅を口の中に入れる。
ふわりと口内に広がった甘さは、餡のそれだった。

「美味しい」
「でしょう? さぁ、もう1口」
「んぐ、」
「おい、風」
「ふふ、わかっていますよ。さ、静玖さん」

これから私達とデートに行きませんか?
なんて綺麗な顔で微笑まれたら、断れない。
こくりと頷くと、風さんは残った餡饅をぱくりと平らげ、紙袋を持ち直して私に手を差し出してきた。

「アリアが待っているので、あまり長いデートは出来ませんが、お付き合い下さいね」
「はい」

スカルくんを地に降ろすと、暫くしてからスカルくんの姿が変わった。
あ、

「気合い?」
「あぁ、気合いだ。───ほら、」

スカルくんにも手を差し出される。
そっと両手を重ねて各々の手を取れば、きゅ、と優しく包まれた。

「さぁ、行きましょう」
「時間が惜しいからな」
「うん!」

3人揃って一歩踏み出せば、苛々も吹き飛ぶのだった。












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『アルコバレーノの皆とほのぼのしてるヒロインちゃんが見たいです。リボーンとコロネロにパシリ扱いされるスカル君がヒロインちゃんのとこに逃げたり風さんとマモ君とのんびり話したり。アリアさんに可愛がられてればいいと思います。ラルさんも出来れば。』・『風やルーチェ(ユニorアリア)との絡みがみたいです!』・『全員』・『風さんと一緒にあんまんパクパク♪デート』・『コロネロ&リボーン&スカル:二人のスカルの扱いをみたヒロインちゃんの行動(または言動)』
今回、一つにさせて頂きました。
ラルが出せなかったのが心残りです。また、アリアさんが偽者くさい………。
敢えてリボーン達のスカルへの対応は書きませんでしたが、主人公が怒るぐらいのことをやらかしたのは確かです。
また、マモ君とルデに関しては私の趣味です。
アンケ投票、ありがとうございました!



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