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久実が行ったあと私たちは学校へ向かっていた。
「久実…会えるわよね?柿木園と…」
『きっと会えるよ。久実だもん。』
「そうね。やっぱりあの2人はくっついて欲しい。幸せになって欲しいな。」
『そうだね。私もそう思う。』
カンナの手を握り、私たちの大事な友達の幸せを願った。
後ろから頭をくしゃっと撫でるように置かれた手……千隼くんだ。
「大丈夫だ。2人で戻ってくるさ。」
『うん!』
顔を見合わして笑いあう。
「もー2人の世界作っちゃって…。カンナサン!俺さみしいよ!」
「知らない。」
「冷たい!そんなこといわないで!あ、学校まで手繋いでいきません?」
「聞こえない。」
「そんなぁ!カンナサーン!!」
すたすたと歩き出したカンナを追う竜生くん。あの2人もなかなかかわらないなぁ…
「俺たちも行こう。」と千隼くんが私に向かって手を差し出した。
私はその手を、千隼くんのヒラが上になるよう掴んだ。
「なんだ?」
『昨日、渡すって約束したから。』
千隼くんの手に私のスクールリングをのせた。
『ずっと小物入れから出てこないだろうと思ったけど、千隼くんのおかげで最後の年に出てきた私のスクールリング。ありがとう、千隼くん。』
「それは俺もだ。」
今度こそ千隼くんの手を握った。
『そうだ、明日空いてる?お願いしたいことがあって…』
「空いてるけど…なに?」
『おじいちゃんがね私たちに∞2のモデルして欲しいって。数枚だけでいいからって押し切られちゃって…いや?』
「…数枚なら、お祖父さんにはアトリエ見せてもらってるし。」
『ありがとう。詳しいことは聞いたらまた報告するね。』
「あぁ。」
私はきゅっと千隼くんと繋いでいる手に力を入れ引っ張るように学校へ向かった。
次の日、撮影の合間に久実から柿木園豹と会え、もう一度付き合うことになったと報告がきて、嬉しくて嬉しくて声にならなかった。