16
翌日の久実は何だか元気がなかった。
なにかあった?と聞いても何でもない、と答えるだけでなにもしてあげれないのが歯痒い。


放課後千隼くんの教室に向かうと準備を終えた千隼くんと竜生くんもいた。

「真希チャン?どーしたの?」
「これから勉強すんだよ。」
『苦手なとこあって、教えてもらうの。』
「えっ!?千隼が!?めっずらしい!!お父ちさんはうれしいよ!」
『パパ、うざい』

ひどいよー!と泣きわめく竜生くんを連れ図書室に向かうと、しょんぼりしてる久実とカンナを見つけた。

『ふたりも勉強会してたんだ!』
「テスト勉強?オレらもまぜてよ。」

竜生くんはぐいっと机にのり出した。

「私達が求めてるのはこの試験範囲の問題集を30分で全部といちゃうような超がつく天才なの。」
「解けました!」

カンナの冷たいあしらいをさらっとかわし、且つ問題集を解いた竜生くん。

『わ、凄い!』
「ちょっと千隼。あの男何ものよ。」
「竜生は基本的にはアホなんだけど、知能指数と運動神経が並外れてんだよ。アメリカの研究機関や大学から偉いオヤジがよく誘いにきてるよ。」


竜生くんって見かけによらず、凄い人なんだ。
勉強教えてもらったらいい順位まで行けそう…

なんて思っていると竜生くんはもはや何を言っているのか不明な説明をし出した。

私達は目を点にした。久実に限っては涙目だ。

『何語?』
「ただ頭がよすぎて何言ってるか全然わかんねーんだけどな。」
「そんなオチいらないわよ!」
「で、真希もクマ女もどこがわかんねーの?」
『私はこの応用が微妙。久実は?』
「あ、あの…」

久実が気まずそうな表情をしていると千隼くんは軽く久実のおでこをたたいた。


「そんな似合わねー表情(かお)してんな。普通にしてろ。礼は試験に合格してからでいいよ。」


久実は気まずそうな表情を一変し笑った。それからみんなで久実に勉強を教えつつ、私も教えてもらいながら勉強会は順調に進んだ。


ちらっと入口をみると柿木園豹が悲しそうにこちらをみていた。
しばらくしてこっちに来ないまま向きをかえ帰った様子だった。

久実の様子といい、柿木園豹の様子といい、なにかあったのかな…
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