二次試験と飛行船 01
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二次試験会場にたどり着いた3人は、近くの木に寄りかかって座り込んでいるレオリオを発見した。
レオリオは腕と殴られた顔以外に怪我もなく、セルシアは安心する。
(でも顔の腫れ具合がひどい・・・)
「レオリオ、しばらくこれで顔をおさえてた方がいいよ」
セルシアは水で濡らしたハンカチを差し出す。
「ありがとよ」
するとクラピカが不思議そうにハンカチを見た。
「セルシア、いつの間に水につけたんだ?」
(・・・能力のこと言ってないんだった)
「うん・・あんまり気にしないで!」
「?ああ」
「ところで、なんでみんな建物の外にいるのかな」
「中に入れないんだよ」
人ごみの中からやって来た人物がゴンのつぶやきに答える。
「キルア!」
2人の少年が楽しそうに会話している様子を、セルシアは微笑ましく思いながら見つめるのだった。
12時になり、二次試験が始まった。ブハラとメンチという2人の美食ハンターが指定する料理を作り、彼らを満足させなければならないらしい。
まずはブハラのメニュー「豚の丸焼き」を作ることになった。世界で最も凶暴な豚グレイトスタンプ――
ここ、ビスカの森にはその豚しか生息していないのだが、セルシア達は苦労することもなくそいつを倒し、課題をクリアした。
ブハラは豚の丸焼70頭をすべて完食した。
「おかしい・・・妙だぞ!?明らかに奴の体積より食べた量の方が多い!」
「いや、そんなにマジで悩まれても・・」
「あんなに食べて・・・お腹は破裂しないのかな?」
「・・セルシアって変に心配性だよな」
「そう?」
クラピカも頷く。
「そうだな。セルシアは珍しいくらいに気がきくと思う」
「そこまで!?」
「妙にお人よしというか」
(・・・なんかあんまり誉められてる気がしない・・・)
次にメンチの課題が出されることになった。
「二次試験後半、あたしのメニューはスシよ!!」
(((スシ・・・・!?)))
受験生たちがざわついている。ほとんどの者はスシを知らないようだ。
「ま、知らないのもムリないわ。小さな島国の民族料理だからね」
「最低限必要な道具と材料はそろえてあるわ。そして最大のヒント!スシはスシでもニギリズシしか認めないわよ!それじゃ、スタートよ!!」
(ニギリズシ・・・?一体どんな料理だろう・・)
「セルシア、知ってるか?」
キルアがやって来てたずねる。セルシアは首を横にふった。
「分からない。でも、島国の民族料理って言ってたよね?私も島に住んでたんだけど・・・」
(島国っていったらやっぱり)
「魚・・・かな?」
セルシアがそうつぶやいた瞬間、向こうの方でレオリオが「魚ぁ!?」と大声を上げ、それを聞いた受験生たちが出口に向かって猛ダッシュし始める。
「え!?うそ、今の聞かれてた!?」
セルシアが焦ると、キルアとゴンが違う違う、というしぐさをする。
「クラピカが知ってて教えたんだろ。それにしてもあのオッサン・・・」
「セルシア当たってたね!オレたちも魚獲りに行こうよ」
川に着いた3人は、さっそく魚を獲りにかかった。ゴンは愛用の釣りざおを使って何匹もの魚を釣りあげる。
「ゴンは釣りざおあるからいいよなー」
「あとでキルアに貸すよ!セルシアにも!」
ゴンが笑顔で釣りざおを差し出してくれる。
セルシアは少し考えてから、首を横にふった。
「私はいいや。2人で使って」
「え、使わないの?」
ゴンがきょとんとする。キルアは意地悪そうな顔をした。
「素手でとる気?やめとけって。セルシアって鈍そーだもんな」
キルアの人を馬鹿にしたもの言いにセルシアはむっとする。
「簡単にとれる方法があるの・・・私には」
そして川に近づき、手をさっと入れる・・・と次の瞬間、セルシアの手には魚が握られていた。
「「!?」」
「ね?」
セルシアはちょっと得意げに笑った。
ゴンは「すごい!」と驚きながら感心している。
「今のって・・・何?」
キルアが興味津津といった風に――その実真剣に聞いてきた。
セルシアは返答に困って眉を下げる。
「・・秘密」
「何で?」
キルアは不満そうな顔だ。
「話すと長いから・・・今は試験中でしょ?急がないと」
はぐらかされたような気がしながらも、今は聞いても無駄だと悟ったキルアは魚つりに戻ることにした。