Ocean blue | ナノ
ハンター試験開始 03
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地下から地上へ続く階段を登り終えた受験者たちは、広大な湿原にたどり着いた。

「ヌメーレ湿原、通称“詐欺師のねぐら”。二次試験会場へはここを通って行かなければなりません。十分注意してついて来てください、だまされると死にますよ」

その後、猿の死体を持った男が現れ、自分が本当の試験官であり、サトツはニセ者だと主張し始めた。人面猿が人間に扮して受験者をだまそうとしているのだという。

しかし、ヒソカがトランプを使い両者を攻撃。サトツはトランプを受け止めたが、男の方は死んでしまった。

「これで決定◇そっちが本物だね◆我々が目指すハンターの端くれともあろう者が、あの程度の攻撃を防げないわけないからね◇」

(ヒソカ・・・やっぱり危険人物だ。確かめるためとはいえ、試験官を攻撃するなんて・・)

そして、またマラソンが始まった。300人近い受験者が、だんだん濃くなる霧の中を走っている。
セルシアは、いつの間にかクラピカ達を見失ってしまった。

(どこにいるんだろう・・大丈夫かな?)

「レオリオー!!クラピカー!!セルシアー!!キルアが前に来た方がいいってさー!!」

「どアホー!行けるならとっくに行っとるわい!」

(あ、大丈夫そう)

ゴンは前、レオリオとクラピカはだいぶ後ろの方にいるようだ。
緊張感のないやりとりに、セルシアは思わず苦笑した。

(でも、ゴンの言うとおり前に行った方がいいだろうな。試験官を見失うかも・・)

だが、霧が濃すぎて前の人がぼやけるようなこの状況では不可能だった。とても追い越せない。

その時、後方の離れた場所からいくつもの悲鳴が聞こえてきた。

(!?すぐ後ろにいたはずの集団がいない・・!?)

どうやら後ろについて来ていた受験生たちは湿原の生物にだまされ、襲われているようだ。

「ってえーー!!」

「!!」

(今のは、レオリオの声!?)

セルシアは後ろを振り返った。相変わらず白い霧で何も見えない。

(どうしよう・・心配だけど、引き返せば試験官からはぐれてしまう・・・!)

そうなれば、二次試験の会場に行けず、失格となるのは明らかだ。


(だけど、このまま見過ごすことも・・絶対にできない)

どんな運命のいたずらか知らないが、セルシアは彼らに出会い、共に仲間だと認め合うような関係になってしまっている。

セルシアは深い碧眼を後ろに――レオリオの声が聞こえた方に向けると、すばやく駆け出して行った。



セルシアは濃い霧の中を必死に走っていた。

(このあたりから聞こえたと思ったんだけど・・・)

方向感覚にあまり自信のないセルシアは、迷いながら自分の無力さを痛感した。

(情けない・・・)

すると、ドゴッという音とともに吹っ飛んだ黒い人影らしきものが目に入る。

「!?」

急いで駆けつけたセルシアの目の前には、倒れたレオリオとヒソカに首をつかまれているゴンがいた。

(!!!)

その光景を見た瞬間、頭にかっと血が昇る。
首をつかまれているゴンと・・・弟のテンダが強盗につかまれている姿が重なる。
気がついた時にはもう、腰に差した杖を握り、ヒソカに向かって勢いよく振り下ろしていた。

ガッ

杖はヒソカにはあたらず、地面を抉る。

「君・・・見かけによらず短気だねー◇」

背後から声がして、セルシアはぞっと寒気がした。
そして、ゴンと同じように首をつかまれ、身動きがとれなくなってしまう。

「・・・・っ!!」

セルシアは思いきりヒソカを睨んだ。

「んー・・・君、面白いね◆合格だ◇」

「・・・・・え?」

突然解放され、セルシアが戸惑っているうちにヒソカはゴンにも合格だと言い、レオリオを担いで行ってしまった。

「・・・・・?」


その後、戻ってきたクラピカと一緒に、セルシアとゴンは二次試験会場へ向かった。

「レオリオのつけてたオーデコロンの匂いをたどれるなんて・・・目や耳だけじゃなく、鼻もいいんだね」

「オレ、いつも山で遊んでたから。セルシアだってレオリオの声を聞きつけて来たんでしょ?耳いいじゃん」

「うん、でも・・・私、方向音痴だから迷っちゃって」

(今だって、こんな森の中ゴンとクラピカがいなかったら絶対迷ってるし・・・)

クラピカがふっと笑って言った。

「方向音痴なのに引き返してくるとは・・・無茶をするなセルシアは」

「だって、心配だったから・・クラピカは怪我してない?」

「ああ、大丈夫だ」

(良かった・・・みんな無事で)

セルシアはほっとして肩の力を抜いた。ヒソカと対峙してからずっと気を張り詰めていたのだ。

(そういえば、ヒソカが言ってた“面白い”って、どういう意味だったんだろう・・)

ここに来る途中、クラピカとゴンが話していたように“同じニオイ”を感じたということだったのか、それとも別の意味だったのか、セルシアにはわからなかった。


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