「なあなあ、来週からゴールデンウィークだぜ」
「そうね」
そっけなく返答する。
「何処に行こうか?」
「…誰の運転で?」
「もちろん俺の運転さ!」
「…………」
そう言うと思った。
げんなりした顔でエースを睨む。
聞かなかったフリをして読みかけの本の続きに目を移す。
「アリスー。」
「…」
「アーリースー」
「…」
ひたすら無視を決め込む。
「へーえ。君がこのまま無視するなら、俺にも考えがあるよ?」
「!」
さっきまでの雰囲気と変わった。
冷たい雰囲気。
ゾッとする。
急いで視線を本からエースに向ける。
と、エースが距離をつめてきた。
「はは!アリスは聞き覚えがいい良い子だなあ。ちょっかいが出せなくて大分残念だ」
「前のようにはなりたくないからね」
前にエースの機嫌をこうして損ねて、ちょっかいを出されていろいろ大変だったので今回は素直にエースに従う。
「なーアリスー。来週のゴールデンウィーク何処かに行こうよー。なー、なー」
「貴方の運転なんて嫌よ!目的地に着けた試しなんてないじゃない」
カーナビが着いていても無視するんだからカーナビが着いている意味がない。
「迷ってこそ旅の醍醐味だぜ!」
「はあ…」
頭を抱える。
こいつにとっては外出イコール旅なのだ。
それにエースの運転は絶対嫌だ。
目的地に着くまでに一体何日かかるやら。
「こうして私の部屋でのんびり過ごせばいいじゃない」
「せっかくのゴールデンウィークだぜ!何処かに行きたいだろ?」
まあ、確かにせっかくのゴールデンウィークだ。
恋人と遠出をして甘い楽しい時間を過ごしたい気持ちはある。
はたしてエースと過ごして甘い時間が過ごせるかはわからないが。
「…わかったわ。そこまで言うのならこうしましょう」
***
「わあ!素敵な旅館!」
趣きがある、昔ながらの旅館だ。
「喜んでくれて何よりだぜ!すぐ目的地に到着しちゃうのはつまんないけどなー」
「…」
結局今回のゴールデンウィークは箱根の旅館に電車で行くことにしたのだ。
箱根なら家から電車で一時間とかからず、お手頃な値段で行けたし、何よりエースに運転をさせずにすむ。
「さあ!部屋に行ってみましょう」
エースの呟きは聞こえなかったことにして、彼の腕を引いて旅館に入っていく。
***
「はあーいいお湯」
あの後は部屋に行って少しのんびりしてから、部屋に備え付けられている小さな露天風呂に私から入ることになった。
たまにはこうして遠出をしてのんびり過ごすのもいいかもしれない。
エースも私もお互い仕事があるし、こんなにゆっくり二人で過ごせるのは久々で、嬉しかった。
そんなこと、素直じゃない私の口からは絶対に言えないが。
「ふふふ」
温泉が気持ちよくて、旅館にいる間はエースとずっと一緒にいれることが幸せで、つい口元がほころぶ。
「なーに笑ってるの?」
「!?」
耳元でそう言うエースの囁き声が聞こえてきた。
振り返るとそこには全裸のエースがお風呂の縁に腰掛けていた。
「な!なんであんたがここにいるのよ!?」
エースは部屋でテレビを見ていたはず…
はっと気付いてタオルを手に取ろうとする。
ここの温泉のお湯は白い色がついてるからいいが、今の私は裸だ。
ひとまずタオルを手元に置いておきたい。
が、エースにその腕を掴まれ、彼がお湯に入ってきた。
お湯に色がついているからといって、体を隠すものが手元にないのでは心元ない。
「どういうつもり?」
ついにらんでしまった。
「最初からそのつもりだったよ?」
にこにこと爽やかに言い切るエース。
ああ、確かにあのエースが部屋で大人しくテレビを見てるなんて考えられない。
旅館に来ていてテンションが上がっていた私にはそこまで気が回らなかった。
「はあー」
盛大な溜息をつく。
「ははは!別に減るもんじゃないしいいじゃないか。お互いの裸なんて見慣れてるし」
「女の子にとってはそういう問題じゃないわよ」
ふんとそっぽを向くとエースが距離を詰めてきた。
気付いて私は距離をあけるが、お風呂の端まで追い詰められてしまい、もう逃げ場がない。
じろりとエースを睨み付ける。
「そんな恐い顔しないでくれよー!俺、何か悪いことした?」
「今してるじゃない!」
「まだ何もしてないだろ」
「まだって…これからするつもりなんじゃない!」
「するって何を?」
「うっ…」
にやにやしたエースの顔。
言いたくない。
この後されるであろうことを想像して、顔が赤くなる。
恥ずかしくてエースにこんな顔見られたくなかったから下を向こうとしたが、その行為はエースに阻まれかなわなかった。
上をくいっと向かせられる。
もう抵抗しても無駄だろう。
「照れた君も可愛いね。お風呂に入っていることもあって、顔が真っ赤で色っぽい。」
「そそられる」
耳元でそう囁かれれ、甘噛みされる。
「んっ…」
熱っぽい赤い瞳。
こんな瞳を見られるのは私だけの特権だ。
「好きだよ、アリス」
そう言って彼はキスの雨を降らせた。
素直じゃない私は「好き」なんて簡単に言えない。
答える代わりに、必死に彼のキスに応えようとした。
***
翌朝。
「アリス!朝だぜ!アリスー!」
「ん…」
「アーリースー!」
「…」
「起きない…か。昨日はちょっと頑張らせすぎちゃったかな」
昨日はお風呂場で愛し合った後、寝室でも愛し合ったのだ。
「チェックアウトの時間までまだあるし、もうしばらく寝かせておこうか」
「エー…ス」
エースの服の裾をぎゅっと掴む。
「ん?なーに?アリス」
「好き」
そう言った後、にっこりと微笑んで、またすーすー眠り始めたアリス。
普段はこんなに素直じゃないから、こんなアリスは珍しい。
エースは柔らかく微笑み、眠っているアリスにキスを落とす。
「王子様の目覚めのキス…にはならなかったかな」
アリスは眠り続けたままだ。
「よーし!旅先に来るまで冒険出来なかったし、アリスが起きるまで近所を探索してこよっと!」
起き上がろうとしたら、服の裾がアリスに掴まれたままだったことに気付いた。
アリスはエースが探索に行くことを察知し、無意識に服の裾を掴み続けていたのかもしれない。
「っと…しょうがないなあ。じゃあアリス、早く目覚めて一緒に探索しに行こう」
アリスの隣に寝直してエースは言う。
「エ…ス…」
「うん、俺はここにいるよ」
を離してなんかやらない。
何処までも何処までも。
落ちていくときも一緒だよ。
「そうね」
そっけなく返答する。
「何処に行こうか?」
「…誰の運転で?」
「もちろん俺の運転さ!」
「…………」
そう言うと思った。
げんなりした顔でエースを睨む。
聞かなかったフリをして読みかけの本の続きに目を移す。
「アリスー。」
「…」
「アーリースー」
「…」
ひたすら無視を決め込む。
「へーえ。君がこのまま無視するなら、俺にも考えがあるよ?」
「!」
さっきまでの雰囲気と変わった。
冷たい雰囲気。
ゾッとする。
急いで視線を本からエースに向ける。
と、エースが距離をつめてきた。
「はは!アリスは聞き覚えがいい良い子だなあ。ちょっかいが出せなくて大分残念だ」
「前のようにはなりたくないからね」
前にエースの機嫌をこうして損ねて、ちょっかいを出されていろいろ大変だったので今回は素直にエースに従う。
「なーアリスー。来週のゴールデンウィーク何処かに行こうよー。なー、なー」
「貴方の運転なんて嫌よ!目的地に着けた試しなんてないじゃない」
カーナビが着いていても無視するんだからカーナビが着いている意味がない。
「迷ってこそ旅の醍醐味だぜ!」
「はあ…」
頭を抱える。
こいつにとっては外出イコール旅なのだ。
それにエースの運転は絶対嫌だ。
目的地に着くまでに一体何日かかるやら。
「こうして私の部屋でのんびり過ごせばいいじゃない」
「せっかくのゴールデンウィークだぜ!何処かに行きたいだろ?」
まあ、確かにせっかくのゴールデンウィークだ。
恋人と遠出をして甘い楽しい時間を過ごしたい気持ちはある。
はたしてエースと過ごして甘い時間が過ごせるかはわからないが。
「…わかったわ。そこまで言うのならこうしましょう」
***
「わあ!素敵な旅館!」
趣きがある、昔ながらの旅館だ。
「喜んでくれて何よりだぜ!すぐ目的地に到着しちゃうのはつまんないけどなー」
「…」
結局今回のゴールデンウィークは箱根の旅館に電車で行くことにしたのだ。
箱根なら家から電車で一時間とかからず、お手頃な値段で行けたし、何よりエースに運転をさせずにすむ。
「さあ!部屋に行ってみましょう」
エースの呟きは聞こえなかったことにして、彼の腕を引いて旅館に入っていく。
***
「はあーいいお湯」
あの後は部屋に行って少しのんびりしてから、部屋に備え付けられている小さな露天風呂に私から入ることになった。
たまにはこうして遠出をしてのんびり過ごすのもいいかもしれない。
エースも私もお互い仕事があるし、こんなにゆっくり二人で過ごせるのは久々で、嬉しかった。
そんなこと、素直じゃない私の口からは絶対に言えないが。
「ふふふ」
温泉が気持ちよくて、旅館にいる間はエースとずっと一緒にいれることが幸せで、つい口元がほころぶ。
「なーに笑ってるの?」
「!?」
耳元でそう言うエースの囁き声が聞こえてきた。
振り返るとそこには全裸のエースがお風呂の縁に腰掛けていた。
「な!なんであんたがここにいるのよ!?」
エースは部屋でテレビを見ていたはず…
はっと気付いてタオルを手に取ろうとする。
ここの温泉のお湯は白い色がついてるからいいが、今の私は裸だ。
ひとまずタオルを手元に置いておきたい。
が、エースにその腕を掴まれ、彼がお湯に入ってきた。
お湯に色がついているからといって、体を隠すものが手元にないのでは心元ない。
「どういうつもり?」
ついにらんでしまった。
「最初からそのつもりだったよ?」
にこにこと爽やかに言い切るエース。
ああ、確かにあのエースが部屋で大人しくテレビを見てるなんて考えられない。
旅館に来ていてテンションが上がっていた私にはそこまで気が回らなかった。
「はあー」
盛大な溜息をつく。
「ははは!別に減るもんじゃないしいいじゃないか。お互いの裸なんて見慣れてるし」
「女の子にとってはそういう問題じゃないわよ」
ふんとそっぽを向くとエースが距離を詰めてきた。
気付いて私は距離をあけるが、お風呂の端まで追い詰められてしまい、もう逃げ場がない。
じろりとエースを睨み付ける。
「そんな恐い顔しないでくれよー!俺、何か悪いことした?」
「今してるじゃない!」
「まだ何もしてないだろ」
「まだって…これからするつもりなんじゃない!」
「するって何を?」
「うっ…」
にやにやしたエースの顔。
言いたくない。
この後されるであろうことを想像して、顔が赤くなる。
恥ずかしくてエースにこんな顔見られたくなかったから下を向こうとしたが、その行為はエースに阻まれかなわなかった。
上をくいっと向かせられる。
もう抵抗しても無駄だろう。
「照れた君も可愛いね。お風呂に入っていることもあって、顔が真っ赤で色っぽい。」
「そそられる」
耳元でそう囁かれれ、甘噛みされる。
「んっ…」
熱っぽい赤い瞳。
こんな瞳を見られるのは私だけの特権だ。
「好きだよ、アリス」
そう言って彼はキスの雨を降らせた。
素直じゃない私は「好き」なんて簡単に言えない。
答える代わりに、必死に彼のキスに応えようとした。
***
翌朝。
「アリス!朝だぜ!アリスー!」
「ん…」
「アーリースー!」
「…」
「起きない…か。昨日はちょっと頑張らせすぎちゃったかな」
昨日はお風呂場で愛し合った後、寝室でも愛し合ったのだ。
「チェックアウトの時間までまだあるし、もうしばらく寝かせておこうか」
「エー…ス」
エースの服の裾をぎゅっと掴む。
「ん?なーに?アリス」
「好き」
そう言った後、にっこりと微笑んで、またすーすー眠り始めたアリス。
普段はこんなに素直じゃないから、こんなアリスは珍しい。
エースは柔らかく微笑み、眠っているアリスにキスを落とす。
「王子様の目覚めのキス…にはならなかったかな」
アリスは眠り続けたままだ。
「よーし!旅先に来るまで冒険出来なかったし、アリスが起きるまで近所を探索してこよっと!」
起き上がろうとしたら、服の裾がアリスに掴まれたままだったことに気付いた。
アリスはエースが探索に行くことを察知し、無意識に服の裾を掴み続けていたのかもしれない。
「っと…しょうがないなあ。じゃあアリス、早く目覚めて一緒に探索しに行こう」
アリスの隣に寝直してエースは言う。
「エ…ス…」
「うん、俺はここにいるよ」
を離してなんかやらない。
何処までも何処までも。
落ちていくときも一緒だよ。