やっぱり強化系の私は、単純一途だった

ヒソカが家を出ていったあとも呆然と立ち竦み、頭の中で今何が起きているのか必死に整理をしていた

今思えば彼から1度でも、好きだとか、愛してるだとか言う言葉を聞かされたことはあっただろうか。いや、ない。ヒソカは一言も私にそうは言ってくれなかった

私達が今まで一緒に居れたのは、ただの暇潰しだったからだろう。ヒソカが私のことを楽しい玩具を見つけたかのように傍に置き、私はそんなヒソカに興味を持って傍にいた

、、、好きになるまでは

「ねぇ!何処にも行かないでよ!」
「困るんだよね、そういうの」
「そういうのって?悪い所があるなら直すから!」
「ボク、同じ所にいつまでも留まっているつもりはないの」

先程の会話が鮮明に浮かんでくる。私は捨てられた?もう壊れた玩具だから?つまらなくなったから?

「、、、行かないで」
「ほら、泣かないで」

そっと優しく私の涙を拭き取り、いつものようにあの時は微笑んでいた。何で優しくするの、何で離れようとするの。優しくするならずっと傍にいてよ、離れるんだったら優しくしないでよ

「しゅんは昔から泣き虫だったねぇ」
「ヒソカのせいよ、、、」
「ん?ボク?何かした?」

こんな時でさえ誤魔化す。今から傍を離れようとする人が言う台詞じゃない。どうして?何で?何で離れていくの?幾千もの言葉の羅列が私を襲う

「ボクが居なくなっても、君は君だ」
「ヒソカがいないと、私っ、、、」
「ねぇ、大丈夫だから」

大丈夫?何が大丈夫なの?距離が離れるだけじゃない、心の距離も離れていくんだよ?わかってる?もう一生会えないかもしれないんだよ?貴方はそれをまるでわかっていないようで、簡単にそんな言葉ばかり言う

「どうする?バンジーガムでボク達を繋いでおく?」

なんて冗談も言いつつ、泣きながらヒソカに縋る私を見下ろして、恐ろしい程ニコリと静かに笑っていた

「居なくなるくらいなら、いっそうのこと私を殺して」
「、、、」
「ヒソカの中で生き続けたいの、お願い」
「ボクは無駄な殺傷はしたくないんだよなぁ」

、、、殺人鬼のくせに

私の言葉を軽く流してしまう、そんなヒソカがもう2度と私の目の前に現れなくなる、そんな気がして、今この手を離せば何処か遠い所に行ってしまうんじゃないかという恐怖

「貴方のこと好きになったの」
「しゅんにはもっと相応しい人がいるよ」
「貴方じゃなきゃ駄目なの!ねぇ、お願い」

私も私で随分と重い女だ、そんなことわかってる、でも、それでもこの手を離したくなかった

「そろそろ行くよ」
「ヒソカ!」
「、、、サヨナラ」

待って、と言う言葉はヒソカが閉める扉の音に掻き消されてしまった

行ってしまった、、、

ぽつんと立ち竦んだまま、未だに頭の中は混乱している。本当は好きだった、愛していた、心の底から愛していた。もう、終わりなのね

ヒソカは言った、強化系は単純一途。そう、私はまさにそれに当てはまる。だから、そう、だから------



貴方が気まぐれってことを知っているから、またいつかこの家に戻ってくるんじゃないかという期待を込めて



家の鍵はしないでおくわ--------





Fin




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