「あ〜あちぃ」
季節は夏。木漏れ日がさす森の中は比較的涼しいが露草は夏が苦手だった。暑さのせいで人間達の嫉妬、妬みの念が強くなりそのせいで底辺な妖が生まれる
そういう妖は人間共に簡単に退治されるのが、露草は気に入らなかった
「露草〜!」
「おっ、なんだお前か」
木の上から下を見るとそこには獣妖のしゅんがいて、両手には変なものを持っていた。それをブンブンと振っており、気になった露草はトンっと下に降りる
「ねぇ、これ鴇が作ってくれたの!」
ちなみにしゅんも鴇と仲がいい。たまに3人で会うことがある。抜け駆けされる時もあるが、、、
「あいつが作った?なんだそれ」
「鴇はアイスって言ってたよ、この暑い時期にはぴったりの食べ物なんだって」
「んなもん食えるか」
「え〜でもせっかく鴇が作ってくれたんだよ?」
澄んだ目でそう言われ、露草はうっと思いとどまった。まぁ、あいつに毒を入れる度胸なんてねぇし、見た限り樹妖の俺や獣妖のこいつに害はないだろう---
「ね、食べるでしょ?」
「ん、あぁ」
しゅんからアイスを受け取り、じーっと観察してみる。なんだ?蒸気みたいなのがアイスから出てるぞ?触ってみるとカチカチで、指が冷たくなるのがわかった。匂いはほのかに柑橘系だ
露草は思い切って一口、アイスを口に入れた。今までにない感覚が露草の口の中を襲った。ジュワ〜っとアイスが口の中で溶け、冷たさの余韻を残して喉の奥へ消えていく。味は桃に近かった
「何これすごい美味しい!」
そう言ったしゅんはバクバクとアイスを食べていたが突然、頭を押さえ込んだ
「どうした!?」
「うっ、頭がキーンってする、、、」
「鴇のやつ、変なのでも混ぜやがったのか?」
あとで1発かましてやろうとそう思ったその時、アイスが溶けて露草の手首に滴り落ちた
「なんだよこれ、溶けるのかよ」
「露草も早く食べなきゃ!」
「お、おう」
これは鴇が作ってくれたもの、これは鴇が作ってくれたもの、洗脳のようにそう言い聞かせるとたとえ変なものが混ぜられていたとしても食べ切る自信はあった
露草は大きな口でガブリ、アイスを全部食べ切った。とたんに露草の頭にもキーンという謎の症状が現れる
「、、、!」
「美味しかったね!また鴇に頼んでみよ!」
なんて能天気な奴なんだ、と露草は思ったが、アイスのおかげで暑さはなくなり、しゅんも涼しいといったように芝生に横になっていた
「アイスって不思議だね」
「そうだな、その不思議なアイスってやつを俺らは食っちまったんだ」
「人間達も頭がキーンってするのかな?」
「さぁな、後で鴇に聞いてみるか」
-----後日談
「おい鴇!あのアイスってやつに変なもん混ぜやがったな?!」
「わぁ露草、あれ食べてくれたんだね!」
「あれを食べたら頭に衝撃が走ったんだよ!なんていうか、こう、締め付けられるような---」
「露草、、、冷たいものを一気に食べると皆頭がキーンってなるんだよ、、、」
「、、、は?」
Fin
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