▽わっかの内側と外側
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背中に小さな羽もないのに、彼女は妖精だといいます。
真っ白い体はぷよぷよしていて、柔らかく、
決して太っているわけではないけれど、
お世辞にも妖精とは呼べない姿です。
いつも風変わりな事ばかり言うものだから、森のみんなは
「彼女は変わっているから…」と、決めつけて、
ウサギをあまり相手にはしませんでした。

一人遊びも得意だし、一人の時間も大好きだけれど、
嬉しい時、悲しい時、笑ったり泣いたり…誰かと一緒がいいのです。

ウサギの耳はあんなに長くて素敵なのに、
自分の話には全く耳を傾けて貰えず、殻に閉じこもりがちです。

遠くまで聞こえる長い耳に声がします。
ひとりだけ、彼女の話に耳を傾ける笑い声。
でもそれはほんとうひとつなの?

(わたし今、面白いこといったかしら…)

キョロキョロと、あたりを見渡しても姿はありません。

「あなたは誰?」

問いは空中にそのまま消えるかと思いましたが、
「なんだと思う?」と、掠れるような小さな声がしました。
さっきとは違う声音に、ウサギは「妖精かしら」と首を傾げました。

彼女は、たちまち姿の見えない声と仲良くなりました。
「こっちに来たら寂しくないよ」と、誘われますが、
ここが好きなものですからウサギは首を横に振りました。
森に住む仲間からは、なぜだか声も聞こえなければ、見えないものだから、
一人で大木に向かって話している姿にやっぱり
「変わり者だなあ」と、聞こえない場所で口を揃えていいました。

けれど、自分の声は届かないのに、みんなの声は聞こえます。
立派な耳がありますから。

ウサギは悲しそうに笑います。

「真っ白だと、見えないのかな」

(あなたには見えるのに…。こんな長くて素敵な自慢の耳も意味がない。
あなたは自分の体が見えなく寂しくはないのかな、)

輪にいれてくれないのと、輪に入れないのは一緒?

輪っかの中に入ればそこはほんとうの輪の中なのか、ウサギは不思議に思います。

「きっと輪っかの中はドーナツと一緒じゃないかしら。
私も妖精さんと同じね、姿はあるのにないみたい」

ウサギがポロポロと涙を流すと呟く声が耳元でしましたが、
彼女には届かないのか、よく聞きとれませんでした。

***
お題:「声」と「精」と「白」を全部使って文章を作りましょう。
2012/03/08

 

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