君が瞳を閉じたなら 


島について2日目、船に戻ってきた男性は小腹が空いて食堂に向かって歩いていた。そこへ悪友であるシャチが慌てた表情をして正面から走ってきた。
「男性っ!お前今度は何したんだよ!キャプテンめっちゃ不機嫌なんだけど!」
顔を青くしながらガクガクと身体を揺さぶってくる。キャプテンが不機嫌なのいつもの事じゃん。揺さぶられながらそういうと、シャチははあ?と顔を顰めた。
「……なんだよ。」
「お前マジで言ってんの?……はあまじかよ。お前そういう所は鋭いんじゃないの?」
意味の分からないシャチの発言に眉を顰めていると、とりあえず昨日何してたんだ?とシャチが聞いてきた。
「昨日?昼間は久し振りの島だったから探索してた。んで、夜は酒場で飲んでた。そこで綺麗な女の子が声を掛けてきたからそのまましっぽり……」
おっぱいめっちゃでかかったんだぜ!と胸の大きさを表しているとシャチが頭を抱えていた。頭が痛いのかなと心配していると、シャチはガバッと頭を上げて、それだよ!と大きな声をあげる。外泊するのってキャプテンの許可いったんだっけ?そう考えていると、聞き覚えのある低い声が男性を呼んだ。
「ひっ!と、とりあえずキャプテンに謝っておけよ!」
シャチはそう言うと慌ててどこかへ行ってしまった。
「男性。」
再度呼ばれて振り向くと、そこに居たのは我等がキャプテンのローで、シャチの言う通り機嫌が悪そうだ。
「キャプテン、どうしました?」
「昨日の夜、何をしていた。」
眉間に皺を寄せたままローが聞いてくる。
「昨日は、酒場で飲んでいると綺麗なお姉さんに声を掛けられたので、そのままついて行きました。」
おっぱい凄かったです!素直にそう言えば、元々深かった眉間の皺が深くなり、ローの機嫌が急降下したのが分かる。黙って外泊したのがよほど気に障ったらしい。シャチも謝れと言っていたし、ここは謝るのがいいのかもしれない。
「キャプテン……」
「あ"?」
地を這うような声を発するロー。
「昨日、黙って外泊してすみませんでした!次からはちゃんと伝えるんで許してください!」
深く頭を下げると頭上から、は?と気が抜けた越えが聞こえた。
「え?無断外泊に怒ってたんじゃ……?」
「は……いや、そうじゃねぇが、そうだ。」
煮え切らないローの返事に疑問を抱くが、先程に比べると幾分か雰囲気が和らいだ気がする。
「とりあえず、島へ降りる時は俺に言え。」
「アイアイ、キャプテン。」
キャプテンであるローの言うことは絶対なので素直に返事をする。ふと顔を見ると、深かった眉間の皺はなくなり、どこか満足気な表情をしている。機嫌が良くなったみたいだと安心していると、ローの長い睫毛に小さな埃がついているのを見つけた。
「あ、ちょっと目を瞑ってもらってもいいですか?」
そう言えば、少し戸惑いながらも大人しく目を瞑るロー。睫毛長いなーとか寝不足で濃い隈を作っている割に肌が綺麗だなーとか、帽子かぶってないの珍しいな、おでこ可愛いなとか思っていたらやってしまった。
「なっ……!」
顔を赤くして言葉を失っているローに嗜虐心が疼いたのでもう一度君に額にキスをする。金属音が聞こえた時にはもう遅く、落ちていく視界に、額を押さえながら真っ赤に生っているローを見て、おっぱいがないのもいいかもしれないと思えた。




prev / next
[back]