鳴門 | ナノ
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7.


登っては落ちて、落ちる寸前に印を刻んで───ひたすらそれを繰り返していたものの、流石に限界を迎えたらしくその場に崩れるように座り込んだところを狙ってなまえに近寄った。

「なまえ、さっきの術のこと聞いても良い?」
「さっきの術、ですか?」
「ほら、再不斬と戦った時に使ってたやつ」

飛雷神の術───多少の違いはあるものの、サスケを再不斬の足元から一瞬で移動させた術はミナト先生のそれとあまりにも酷似していた。当時、先生の護衛小隊に所属していたこの子の兄でさえも三人掛かりでないとこの術を発動することが出来ないのに、まだ下忍になって間もないこの子はたった一人で……。

「なまえはあの術を使う時、どうやってるのかなって」
「えっと、私は拠点を立てて、その間を移動しています」
「拠点?」
「はい。これを目的地にそれぞれ立てて、その間の空間を繋ぐんです」

つまり、オリジナルが特殊な印を目印に空間を移動するのに対し、なまえの場合はポーチから取り出した二本の千本がその役割を担っていると言うことか。一見、何の変哲もないそれには見た目には分からない特殊な術式でも組み込まれているのだろう。

「このアイデアは誰が?」
「兄です。頑張ったんですけど、どうにもならなかったので代案と言うことで」
「代案か……なら、この修行は今のなまえに打ってつけだ」
「?」
「練り上げたチャクラを必要な分だけ必要な箇所に。このコントロールを難なく出来るようになれば、理論上ではどんな術だって体得可能になるってさっきも言ったでしょ? それはなまえの飛雷神の術だって例外じゃないよ。つまり、術の本来の形により近づけるかもしれないってこと」
「!」
「ま! あくまで理論上だけどね。ただ、試してみる価値はある。なまえのお兄さんだってそう思ったら、その形で習得させたんだろ」
「! 兄が?」
「うん」

元々、飛雷神の術は教わって出来るようになる類のものじゃない。あいつがそのことを知らないはずがないだろうに、なまえに根気よく修行をつけたと言うことは、この子の中に可能性を見出したからなのだろう。ここからはあくまで予想だが、恐らくあいつはもっと先のことまで見据えているのではないだろうか。それこそ本来の飛雷神の術の体得まで。

「拠点を立てずに自分や対象を移動出来るようになれば、使える場面も更に広がるし、この修行が大きな一歩になるはずだよ。そう言うことだから、なまえも頑張ってね?」
「うん。頑張る! ありがとう、カカシ先生」
「うん。俺も、飛雷神の術の完成を楽しみにしているから」

飛雷神の術を使えるほどなのだから、純粋なチャクラコントロール能力に関しては他の三人と比べてなまえの方がいくらか優れているに違いない。実際、木登り修行のコツを始めに掴んだのはサクラだったが、記録を最も伸ばしているのはなまえだった。幼い頃から忍である兄の下で修行を積んできているからだろうか。経験の貯金なんて言葉が思い浮かぶ。

(ま! この子が器用なのが大きいか)

休憩もそこそこに再びクナイを片手に順調に木を駆け上って行くなまえを見上げながら、自然と笑みが零れた。

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