鳴門 | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
6.


差し出された手を取って立ち上がってから足元に深々と刺さる千本を確認すると、先端に結びつけられているはずのものが見当たらなかった。ついさっきまでそこにあったそれには小さな鈴がついていたのに。どこに行ったのかと辺りを見回してみれば、ここから数メートル離れたところに刺さっているそれが見えた。
ついに、成功したんだ───ジワジワと込み上げて来る嬉しさと達成感から緩む頬を抑えられそうになかった。

「ゲ、ゲンマ…!」
「ああ。上出来だ」

ぽふんとゲンマの手が頭に乗った感触。言葉は少なく、その口調でさえも素っ気ないけれど、私を見つめる目は優しく細められていて、口元には誇らしそうに笑みが浮かんでいる。
飛雷神の術(オリジナルは私のとは比べものにならないくらい凄いらしいが)───ゲンマに初めて教えてもらった術。アカデミーに入学してすぐ教えてもらってから今まで、ここまで形にするのに随分と掛かったけれどようやく一つ、兄の期待に応えることが出来た。

「……なまえ、」
「? なあに?」
「この術は、誰にでも出来るようなもんじゃねえ」
「? うん?」
「俺だってオリジナルと同じように使えるわけじゃねえ。それでもお前に教えたのは、お前なら……出来るかもしれないって思ったから……」
「……ゲンマ?」

どうして、そんなに苦しそうなのだろう。私と目線を合わせるべく屈んだゲンマの手が両肩に添えられ、反射的に体が跳ねる。ねえ、ゲンマ、どうしたの?

「出来るようになってから言うなんて、卑怯だって分かってる。だが、なまえ……この術はあんま人前で使うな」
「! なんで、」
「簡単なことじゃないんだ。なのに、お前みたいなガキがホイホイ使ったら……」

最後まで言わなかったけれど、言わんとしていることが分かってしまった。兄は私のことを心から心配してくれている。でも。

「でも、それじゃ出来るようになった意味がないじゃない」
「何も絶対に使うなとは言ってねえよ。あくまで気軽に使うなって言ってんだ」
「じゃあ、どう言う時に使えば良いの?」
「そうだなぁ……」

───……ねえ、ゲンマ。それは私次第だって、あの時言ったよね? だから、今、ここで使うよ。

「サクラ。タズナさんのこと、お願いね?」
「なまえ……?」

チリンと鈴の音を聞きながら千本を力任せに踏みつけ、足元に深々と突き刺した。
情けなくも震える手に力を込め、もう一本の千本をきつく握り締める。自分以外のものを移動させたことはないけれど、オリジナルに出来るのだったら私のにだって出来るはずだ。恐らく二人を同時に移動させるほどの余裕はないだろうから、いざとなればサスケだけでも先に移すことが出来れば良い。1、2、と心の中で唱えるカウントが5になった瞬間、思い切り地面を蹴った。

「サスケ!」

再不斬に踏みつけられ、身動きの取れないサスケに向かって飛ばした千本を握らせ、不安定な体勢のままチャクラを練り上げる。

(飛雷神の術!)

ほんの一瞬、目の前がぐにゃりと歪み、サクラの側に現れたサスケを確認してほっと胸を撫で下ろした。

prevnovel topnext