鳴門 | ナノ
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55.


カラン……と支えを失ったチャクラ刀が持ち主の傍らに転がりアスマ先生は口の端から一筋の血を垂らしながらベシャリと脱力した。

「───、」
「ごめんね? シカマル。でも、私はまだ死ぬわけにはいかないの」
「なまえ……テメー!」

シカマルの悲しみが怒りへ。そして殺気へと変わった次の瞬間、バサリと墨色の羽が目の前を覆った。

「何だこりゃ!?」
「目くらましか」

瞬く間に増えていくカラスが視界を遮りながら縦横無尽に飛び回る。増援───彼等が口にしていた言葉が脳裏を過ぎったのと黒刀の鋒が目前まで迫っていたのはほぼ同時だった。

「(これは……)……うぐっ、」

かと思えばグンッと強い力にいきなり引っ張られ、気がつけば二人の側へと戻ってきていた。当たる寸前に角都さんが伸ばした手で助けてくれたらしい。たった今まで立っていた場所を見遣るとそこにはやっぱりライドウさんの姿があった。

「シカマル、助けに来たわよ」
「いの……」
「シカマルを安全な場所に」
「ハイ!」

いの、チョウジ。それから少し離れていて分かり辛いけれどあれはアオバさんだろうか。アスマ先生を担いでアオバさんが控える建物に避難するや否やいのやチョウジに指示を飛ばすシカマルの声が聞こえてくる。いのはこの二年間で医療忍術を使えるようになったらしい。でも───。

「無駄だよ、いの。あなたの力じゃアスマ先生は救えない」
「うるせえ!」
「別にいのを貶しているわけじゃないよ。例えこの場にいたのが綱手様だったとしてもその人を救うことは出来ない。アスマ先生はここで死ぬの!」
「黙ってろ!」
「いつもの冷静さはどうしたの? シカマル。あなただって本当は分かっているんでしょう? こう言う時こそあなたの才能が発揮されないでどうするの?」
「黙ってろってつってんだ!」

ビリビリと空気が震えた。シカマルの憎しみがそのまま私へ向けられてしまえば良い。ここまでのことをされたのだから私を連れ戻すなんて考えもいい加減捨ててくれるだろうか。

「……なまえ……」
「ライドウさん。どうしてあなたがそんな顔をしているんですか? アスマ先生のあんな姿を見てもまだ私のやったことが信じられませんか?」

グッとライドウさんが眉を顰めた。ユラユラと不安定に揺れる瞳は私の真意を見極めようとでもしているのだろうか。そんなものありはしないのに。

「……ゲンマは相変わらずだ」
「……」
「だが、最近は寝る間も惜しんで仕事に明け暮れている。まるで何かを忘れるようにな。なまえ、お前はどう思う?」
「別に。好きでそうしているんでしょう? 私には関係ない」
「本当にそう思うか?」

カカシ先生もライドウさんもあの人の存在をチラつかせれば私が揺らぐとでも思っているのだろうか。それくらいで揺らぐ覚悟なら最初から里を抜けるなんて考えないし、暁に入ってはいないのに。

「もし、私があなた達の敵じゃなかったとしてそれでもアスマ先生をあんな目に遭わせますか? それが私の答えです」
「なまえ……」
「フン。もう良いか? 行くぞ」
「はい」
「じゃあな。クソヤロー共!」

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