鳴門 | ナノ
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48.そうして彼は吐き捨てた。


ヤマトを隊長にした新生カカシ班がサスケと対峙している頃、綱手やシズネ、自来也はカカシの病室を訪れていた。

「尾獣のチャクラを抑え込み、死んだ忍さえも生き返らせる力か。それも転生術とも違うとは……」
「俄かには信じ難い話だのう。しかし、なぜそれが不知火なまえの仕業だと言い切れるのだ?」
「糸を見たんです」

糸? と三人が揃って首を傾げる一方でカカシは不自然に息を詰めた。あの場を離れた今になってようやく気づいたのだが、外に漏れ出た九尾のチャクラを無理やり抑え込んだあの糸には嫌と言うほど見覚えがあったからだ。
いくら忘れようとしても叶わない。あの糸を彼女もよく使っていたではないか。たった一つ記憶を掘り起こしただけでそこから面白いくらいあらゆるものが二人を繋いでいく。カカシだって無意識の内に二人の姿を重ねたことがあったではないか。後になって思えば、木ノ葉崩しの時、なまえがひどい火傷を負ったことも。考えれば考えるほど頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。不知火なまえ、あの子は一体何者なのか。

「カカシ?」
「……いえ。それを見たのはなまえが消える寸前の一度だけでしたが、限界まで引き伸ばされたことで千切れたように見えました。そして、その後我愛羅くんが目を覚ました。状況的にもあの時何か出来たとすればあの子くらいしかいません」

急に黙り込んだことで不審に思った綱手に呼び掛けられ、ふと我に返ったカカシは心内を悟られないようあくまで冷静に言葉を重ねていく。
もし、こちら側の誰かの仕業であればここまでの疑問が残ることもなかっただろう。かと言って、暁側に我愛羅を生かす理由もなければ意味もない。可能性を一つ一つ潰していけばあの子くらいしか残されていないのだ。加えて二人の接点が全くの0でないことも理由の一つだった。

「それに、チヨバア様の言っていたことも気になります」
「?」
「『この世はとうの昔に見限られたものだと思っていた』───と。詳しくは言いませんでしたが、それがなまえに関わる重要なことのように思えました」
「見限られた? 糸、生き返る……いや、まさかのう」

カカシの話を聞きながら頭の中で自身の考えを整理していた自来也はぶつぶつと繰り返していたが、最後のそれが引き金となったのだろう。信じられないとばかりに目を大きく見開いているが、同時にどこか確信めいた表情のようにも感じられる。それは綱手にも同じことが言えて。

「まさか? だが、そんなはずは……」
「何か思い当たることでも?」
「ああ。いや、まだそうと決まったわけではないが───シズネ、ゲンマを呼べ。至急確かめたいことがある」
「確かめたいことですか? ですが、彼は今任務で里を離れています」
「なら、すぐに呼び戻して代わりの奴を行かせろ。最優先事項だ」
「綱手、ワシは一旦木ノ葉を離れる。どうやら調べなくちゃいかんことが出来たようだ」
「ああ。任せたぞ」
「待ってください! 急にそんな……一体何だって言うんですか?」
「言っただろう。まだ決まったわけではないと。今の段階でベラベラと話すべきことじゃない」

お前は自分のことだけを考えて養生しろ、と里の長であり、医療忍術の権威でもある綱手に言われてしまえばカカシは大人しく引き下がるしかなかった。

「また後で来る。カカシ、ゲンマに伝えておきたいことはあるか?」
「……」
「不知火なまえと単独で接触したのはお前しかいない。言いたいことがあれば私が預かろう」

それを綱手に預けても、ゲンマの耳に入れても果たして良いものなのか。カカシは迷った。
聞いたところで誰も幸せにならないのに。何せ、なまえから無理やり押しつけられたのは兄への決別の言葉だったのだから。だが、だからと言って自分一人の手元に置いておくのも違うような気がして。

「あいつに伝えるかどうか、その判断はあなたとあいつ自身に任せます。なまえの言葉を預かってもらえますか?」
「ああ」

カカシはやけに重く感じる口をゆっくりと開いたのだった。

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