鳴門 | ナノ
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43.


落下したなまえが着地する隙を狙ってワイヤーを飛ばし拘束したところであらかじめ仕込んでおいた影分身に背後から忍び寄らせ、その首元にクナイを突きつけた。遠目には我愛羅を奪還したナルトの姿も見え、ここまでは概ね作戦通りだ。

「ふぅ……これで少しはゆっくり話せるな」
「万華鏡写輪眼まで……流石ですね。カカシ先生」
「なまえ、なぜ里を抜けた? なぜ暁なんかに」
「色々と聞きたい気持ちは分からなくもないですけど、あなたの質問に一々答える義理はない」
「お前は仲間想いで、家族を大切にする優しい子だったはずだ。なのに……一体何があったんだ?」
「別に何も。それに仲間? 家族? どっちも下らない。それこそあなたの言うなまえが嘘で塗り固められた張りぼての存在だったとは考えないんですか?」
「俺はお前を信じてる。少なくともゲンマといる時のお前が嘘だったとは思わないよ」

兄の名前を出しても眉一つ動かさないか。あいつの存在なら多少なりとも動揺を誘えるのではないかと思ったのだが。

「あいつは、何も気づけずお前を止められなかった自分を今でも責めている。だが、それ以上にお前の帰りを待ち続けている。お前のことを心から信じているからだ」

この二年間、あいつがどんな気持ちでいたか。止められなかったこと、誰よりも近くで成長を見守り一緒に過ごしてきたにも関わらず気づけなかったこと。俺達が全てを分かってやることは出来ない。だが、これだけは分かる。ゲンマはなまえを少しも疑っていない。それこそ妹を無条件に信じてやることが兄の務めだと言わんばかりに。

「なら、その兄とか言う人に伝えてください。私には家族なんていないし、始めからずっと一人でしたよ。これからもずっと」
「なまえ……」

何がなまえのことをここまで変えてしまったのだろう。俺達の言葉はもうこの子には届かないのだろうか。

「さて、気は済みましたか? そろそろデイダラさんを追いたいし、いつまでもあなたに構っているほど暇じゃないんですよ。ねえ、カカシ先生?」
「そうだね。出来れば、なまえの意思で木ノ葉に戻ってきて欲しかったけど、こればっかりは仕方がない。少し手荒くなるが悪く思うなよ?」
「出来るんですか? あなたに」
「分かってないな。お前は拘束され、俺の影分身も控えている。どっちに分があるかなんて一目瞭然でしょ?」

不意になまえの口元が怪しく笑みを浮かべたような気がした。

「なっ、影分身だと?」

いつの間に───そう思っている間にもなまえの影分身が大爆発を起こし、辺り一面が一瞬にして白煙に包まれた。その中から拘束していたはずのワイヤーが歪な弧を描きながら投げ捨てられ、続いて凄まじい速さで飛び出し駆けていくなまえの姿が見えた。

「今のは……」

勘づかせないほどのスピードで印を組み、そこからの分身大爆破による陽動。いつかに食らったイタチの手法と同じだ。この二年でどこまで強くなっているか分からないとナルトやサクラに言っておきながら、実は俺の方こそ認識が甘かったのかもしれない。暁はビンゴ・ブックに載るほどの手練で構成された犯罪組織。もしなまえがこの二年間でイタチだけじゃなく、他の奴等からも修行をつけられているとしたら。

「厄介なことになったな」

もちろん簡単にいくとは思っていなかったが、一筋縄ではいかない現実に自然と眉間に皺が寄るのを感じた。

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