鳴門 | ナノ
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42.


カカシ先生に言われても間髪を入れずに返せるくらいには覚悟を決めたつもりだったのに。

「お前は休んでろっつったろ。うん?」
「いえ、休ませてもらったお陰で大分楽になりましたから。お二人の援護くらいは出来ますよ?」
「フン。さっきまで青白い顔をしてフラフラになっていた奴が何を言う。万が一にもお前が前線に出ることはない」

まだ奥に控えていたらしい敵が現れたかと思うとナルトの風魔手裏剣を片手で受け止め、それがなまえだと分かったら頭の中が真っ白になった。覚悟を決めたはずだったのに、本人を前にしただけでこんなにも脆く崩れ去ってしまうなんて。

「なまえ……っ」
「……」
「おい! 聞こえてんだろ。我愛羅がそんな目に遭って何とも思わねーのかよ! 何でお前がそっちにいるんだってよば、なまえ!」
「ハァ……うるさいな。一々そんな叫ばなくても聞こえてるよ」
「ッ!」

胸の辺りがズキッと痛んだような気がした。私達が知るなまえはいつも穏やかな声でナルトはいつも元気だね。こっちまで元気が出てくるよ、なんて柔らかく微笑んでいたのに。冷たい。今までのなまえが一瞬でかき消されてしまうくらい今のなまえは表情も声も、唯々冷たかった。

「何でこちら側にいるかなんてこの格好を見れば分かるでしょ? 私も暁で、我愛羅は私達のターゲットだっただけ。もちろんナルト、あなたもね?」

会ったら言いたいことがたくさんあったはずなのに。すっかり変わってしまったなまえを前にしていくつも言葉が浮かんでは次々と消えていく。それはナルトやカカシ先生も同じなのか、グッと唾を飲み込んだり、眉間に皺を寄せたりと口を開く気配はない。窒息してしまいそうなくらい重苦しい雰囲気が漂う中、ふとなまえが困ったように口角を上げた。

「そんな顔しないでよ。二年もあれば人なんて呆気なく変わるんだから。それはあなた達にも言えることでしょ?」

外見のことだけじゃなく内面もね、と昔とよく似た笑みがどうしようもなく悲しかった。記憶の中にいるなまえと目の前にいるなまえの姿が重なって綯い交ぜになっていくような。気持ち悪くて、吐きそうだ。

「さっきからずいぶんと親しそうに話しているな。こいつ等と知り合いなのか、うん?」
「ただ同期ってだけですよ」
「うん? お前、木ノ葉の出身だったのか」
「言ってませんでしたか?」
「ああ。初耳だ」
「すみません。どうでも良いことだったので、すっかり忘れていたんですよ」
「どうでも良いだと? ふざけんなァ!」

ナルトの怒号に気圧されて辺りの空気がざわついたような気がした。同時になまえの口元が怪しく歪んだのが見えて、もしかしてわざとナルトを挑発するような言葉を選んだのだろうか。

「まあ、良い。お前が人柱力と昔馴染みと言うなら好都合だ」

乗れと金髪の方がなまえの手を引いて我愛羅を咥えた鳥へ飛び乗ったかと思うと、あっと言う間に上昇して外へと飛び去ってしまう。

「なまえ!」
「待て! コラ!」
「チィ……ナルトと俺はなまえ達を追う。サクラとチヨバア様は中のこいつを……ただしガイ班が戻ってくるまでくれぐれも無茶はしないように」
「分かった!」

みるみる遠ざかっていくなまえのことが気になって仕方がない。許されるのなら今すぐにでも追いかけたい。でも、目の前の男が上の空で倒せるような相手じゃないことは、こうして対峙しただけで嫌でも分かる。今はなまえのことは二人に任せるしかない。邪念を振り払うべくグッと唇を噛んだ。

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