鳴門 | ナノ
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44.


「行くぜ? なまえ」
「はい。お願いします!」

一直線に向かってくる小振りの鳥に向かって青白い帯を巻きつけ、デイダラさんが"喝!"と唱えるのに合わせて一気にチャクラを練り上げる。すると、ポトリと足元に落ちてきたそれは本来なら爆発するはずなのに綺麗な形を保ったままだ。

「へえ。俺の手から離れた奴まで防げるのか、うん?」
「チャクラが通ってさえいれば大抵のものは抑え込めます」
「と言うことは、尾獣もか。ずいぶんと便利な力だな」
「はい。ただ、仕掛けるまでに時間がかかるので使う時は陽動がいることが前提になりますけどね」

デイダラさんは私の力を見るために準備が整うまで待っていてくれたけれど、実際に敵を前にしたらそれこそ味方がいる状況でしか役に立たないだろうし、無理やり使おうとすれば大きな隙が生じてしまい兼ねない

「チャクラの量が主な原因だろうな。少し過剰な節さえある」
「でも、チャクラの量は威力やや強度に関わります。足りなければ対象を捕らえた瞬間にかき消されてしまう」
「なるほど。なら、相手に触れる面積が減れば必要なチャクラ量も自ずと減らせるはずだ。例えば、帯から糸へ」
「糸ですか?」
「ああ。都合良く打ってつけの術がある。なまえ、お前に傀儡の術を教えてやるよ」

今までデイダラさんとの修行を見ているだけだったサソリさんは、私の話を聞くや否やニヤリと目を細めたのだった。





─────木々が倒される音を頼りにたどり着いた場所にデイダラさんの姿は既になく、代わりに赤いチャクラをまとったナルトの姿だけがそこにあった。狐を模ったチャクラそのものがまるで殺気で出来ているかのようなとても嫌な感覚。これが九尾のチャクラなのだろう。

「ナルト」

瞬間、ギロッと殺気のこもった目が向けられ牙を生やした口元からグルルと獣のような唸り声が聞こえてくる。目の前のナルトはきっとナルト自身じゃなく九尾の意識に乗っ取られている状態なのだろう。

「なまえ、危険だ! ナルトに近づくな!」

背後からカカシ先生の声が聞こえてくる。恐らく先生もナルトを止めようとタイミングを見計らっているのだろう。でも───。

(そろそろデイダラさんも離れてくれたかな?)

ここに来るまでに密かに散らせておいた影分身の術が解けたと言うことは、無事に目的を果たしてくれたに違いない。ここから先は一人の方がやりやすいから。

「まずい。なまえ!」

ナルトが猛スピードで突っ込んでくるのとカカシ先生の焦った声が聞こえたのはほぼ同時だった。

「……」

袖口から滑り落としたクナイをそのまま足元に突き刺し、飛雷神の術で元々ナルトがいた場所へ移る。
これが二年間で完成させた私なりの飛雷神の術───自身が拠点になることで一定の範囲までの瞬間移動を可能にした時空間忍術だ。道具や特殊な印を使わない分、以前よりも移動出来る距離は狭まったしまったけれど、予備動作がほぼない状態で術を発動することが出来る。それでもって本命はこっち。お互いの居場所が入れ替わったと同時に素早く印を組んだ。そして───。

「糸縛りの術!」

クナイと自身から伸びるチャクラ糸がナルトの体に巻きつき金切り声を上げながらきつく締め上げた次の瞬間、可視化していた九尾のチャクラが一息に弾け飛んだ。それが泡になり、やがて宙へと霧散していっても熱や痛みは一向に感じられない。以前、無意識にこの術を使った時は気絶したりひどい火傷を負ったのに。サソリさんが修行をつけてくれたお陰に違いない。

「ナルト!」

決着がついたと踏んだからだろう。今まで様子を伺っていたカカシ先生はすかさず駆け寄ってきてナルトの体を支えながら私から距離を取った。

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