03
菜嶋洸一に教室まで送ってもらった後、あまりの眠たさに自分の机に突っ伏して仮眠をとろうとしていたら、何故か大騒ぎの友人たちに囲まれ邪魔されてしまった。
「ゆーり!!ど、どういうこと?何であんた、コウくんと一緒に登校してんの!て、てて手まで繋いじゃってっ」
「昨日、あんたが菜嶋くんに告白されたとかいうデタラメな噂が回ってたんだけど、あれは嘘じゃなかったってこと!?」
「聞いてんの、悠里っ!」
夢の世界へ片足を突っ込んでいた私は、やたらと騒ぐ友人たちに肩を揺さぶられ、現実世界へと連れ戻される。
「うーん……」
「寝ぼけてんじゃないわよ!仮に告白されたのが事実だとして、あんたまさか、前みたいに適当に返事したわけじゃないでしょうね!!」
そう言って、友人の一人――小学時代からの付き合いの真美ちゃんが、私の頬を全力で引っ張ってくる。
い、いひゃい……。
前みたいにって?と、高校生になってから仲良くなった子たちが首を傾げた。
誰か、真美ちゃんの暴動を止めてくれないの。
「悠里はね、この通りぼけっとしてるでしょ?中学の時に先輩から告白されて、それを告白だと気づかないままオーケーしちゃった過去があるのよ!しかも、その誤解は二年も続いたのよ!?うぅ……こんな子に引っかかってしまった先輩が不憫で不憫で……」
真美ちゃんがキッとこちらを睨んできたので、その節はどうもすみません、と頭を下げておく。
いや、だって、まさか私なんかに告白してくる人がいるなんて思いもしなくて……。
そう釈明すると、真美ちゃんはさらに目を三角にした。
「あんなに分かりやすくて、あんなにアピールしてたのに!悠里のバカぁぁ」
ちなみに、その先輩は真美ちゃんの憧れの人だった。
憧れであって異性として好きだったわけではないらしいんだけど、そんな先輩を真美ちゃんいわく不憫に扱ってしまったらしい私を、真美ちゃんはなかなか許してくれない。
最後には、誤解も解けて、円満に解決したのに。
「えっ。じゃあ、まさか今回の菜嶋くんも同じ流れってこと?」
「ゆーりなら有り得そう……」
友人たちがボソボソと囁き始めたので、会話はもう終わったのかと、私は再び眠りに就くために目を瞑る。
――が。
「蝶谷、ちょっといいか」
またも、邪魔をされた。