02
僕たちの横を通り抜け、雨に濡れるのも厭わずのそのそと屋外に歩き出ていた女の子。
彼女は友人と思しき女子生徒の制止の言葉に振り返り、きょとんとしている。
その間にも、彼女に降り注ぐ雨は止まない。
「あんた、雨!濡れちゃってるから!戻っておいで!」
「え?……あ、本当だ」
「ぼけっとするのもいい加減にしてよ!もう、今日はあんたの世話係が委員会でいないんだから、ちょっとは自重して。私じゃ手が回んない」
「世話係って、真美ちゃんのこと?」
今は昇降口にいる生徒の数も少なく、彼女たちの言動は意図せずともとても目立っていた。
だから、僕が彼女を見ていたのもほとんど無意識的にだ。
首を傾げた彼女は、それでも軒下に戻ることはなく、それどころか雨に打たれるのを楽しんでいる様子だった。
「でも、もう、濡れちゃった」
制服のスカートが水を含んで重みを増しているのが、遠巻きにも分かる。
「まったくゆーりってば……」
友人の子は飽きたように彼女に傘を差し出していた。
それを嬉しそうに受け取る彼女から、僕は目が離せなかった。
「コウ?」
「っ、あ、ごめん!入れてもらうね」
隣にいた“オトモダチ”に声をかけられ、すっかりこの子たちの存在を忘れていた自分に気がつく。
どうしたんだろう……。
自分らしくない。
誰かに目を奪われるなんて――。
「さっきの、変な子だったねー。びしょ濡れになってたし。恥ずかしくないのかな?」
「……」
「子供っぽいよね。コウの好きなタイプの正反対」
“オトモダチ”の言葉に、僕はなんて返事をしたんだっけ?
覚えてない。
ただ、雨に濡れながら無邪気に笑うあの子の姿が脳裏から離れなくて、頭がいっぱいになって。
他の“オトモダチ”と別れ、傘を半分こしている“オトモダチ”と二人で帰っている最中も、本来ならそのまま“お持ち帰り”しちゃうのがいつものパターンだったんだけど、おかげでそんな気にはなれなかった。
……ゆーり、ちゃん。
それから毎日、彼女の姿を見かける度に、僕はおかしな感情に囚われるようになった。