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それは、まあ。
仕方がない。
その件については、いつまで経っても私に携帯を持たせてくれないお兄ちゃんがいけないんだ。

お母さんもお父さんも、頼りない私より、しっかりしているお兄ちゃんの言うことを、例え本人が別の主張をしていたとしても聞いてしまう。
差別だ、と声を大にして言いたいところだけど、確かにおバカな私と優等生なお兄ちゃんを比べたら、どちらに利があるかは火を見るより明らかだ。

うぅ……優秀すぎるお兄ちゃんが、ちょっぴり憎い。
だって、私に携帯を持たせてくれないくせに、お兄ちゃんはちゃっかり自分のものを買ってたりする。
ずるいじゃないか。

私も、どこかでバイトして自分のお金で買ってみようかな……。

「ま、残念なことに、西高のトップは少し前にずらかったらしいけどな。番長に目通りがかなうのは、次の機会にお預けってわけだ」
「へー。でも、番長に会うことの何が面白いの?」
「……お前、知らねぇの?」

何が?

「西高の頭っつたら、一年前に代替わりして以来、謎に包まれた人物として知られてる。誰もそいつの姿を見たことがないんだよ。西高のやつらさえ……」
「自分のところの王様なのに?」
「そ、だからおもしれーんだよ。その姿なき王が、直々にやって来るかもしれないっつーんで、お前を連れてきたわけ」
「へぇ」
「……お前でも、さすがに西高のトップについての噂くらいは知ってると思ってたから、もうちょっと良い反応を期待してたけどな」

ご期待に添えず、申し訳ない。
でも、せっかくなので大げさに喜んでみる。

「えー、何それスゴーイ。実は前々から気になっていたんだよねー、西高の番長って……いたっ」
「白々しいわ」

宇崎はお気に召さなかったようで、またしてもデコピンされてしまった。
本日だけで、一体何度目になることやら……。
額がヒリヒリする。

「ま、だから……代わりに良いもん見せてやるよ」
「え?」

宇崎の楽しそうな笑顔に、少しだけ嫌な予感がした。

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