空音
12
「拾ったぁ?嘘つくなよコラ」
「うん、まあ、そんなに大した物じゃないから気にしないで」
「……、妙な男引っ掛けてんじゃねーよ」
何だ、それは。
引っ掛けてなんかいませんが。
「んなもの、そこらに捨てとけ」
「いやいや。何言ってんの、宇崎さん」
面白くなさそうに吐き捨てる宇崎を不思議に思いながら、私は足を進める彼の背中を追った。
「どこ行くの?」
「……面白いモンが見れるかもしれねぇって言っただろ」
「うん」
「それ、西高のトップのことだったんだよ」
「トップ?」
それの何が面白いのか忖度しかね、私は首を傾げた。
トップとはつまり、西高で一番偉い人のことだろう。
校長先生とかそういうのではなくて、生徒たちの間で一目を置かれる存在……荒くれ者の集うあの学校の頂点。
もしかしなくとも、
「ば、番長っ?」
「……なんで少し嬉しそうな表情してんだ、お前」
だって、このご時世では滅多に存在しないじゃないか。
希少だよ、番長って。
「まあ確かに、ありていに言えば、番長と言えなくもないけどよ……今時、番長って古くねーか?」
「そうかな」
「そうだろ。ときどき、お前って昭和くさくなるよな」
「えっ。どの辺が」
「携帯の一つも持っていない辺り」
「……」
感想を書く しおりを挟む 表紙へ