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あ、危なかったな。
もし刈り上げくんの言ってることが正しければ、私はまんまと騙されてしまうところだったわけだ。
なんて危険な世の中なんだ。

「あの、ありが」
「あんたもさぁ、もうちっと気ぃつけや?隙が多いと違うん?一部始終見させてもろうたけど、危機感がないと言うか、他人を疑わないというか……バカ丸出しやったで」
「バカ!?」

お礼を言おうとしたところ、先に刈り上げくんが畳みかけてきて、しかもバカ丸出しって……それは酷い。

でも、刈り上げくんの目は、思いのほか真剣だった。

「世の中なんてみーんな悪や。出会う人すべてが邪な考えを持ってる、そう思いいや」
「……性悪説?」
「分かってるやん。疑ってかからないから、さっきみたいにコロッと騙されてしまうんやで。バカや」
「……」

おっしゃる通りですけど。
なんかこう、ムカっとくるのは何故だろう。

いちいち人を貶さないと会話できないのかな、この人。

「近頃、あーいう手合いが増えてるみたいやしな。今回はたまたま俺が居合わせたから良かったものの……」
「あ、うん。ありがとね」
「あんたって本当、危なっかしいわ」

目も当てられん、そう言った刈り上げくんの言葉は耳に入ってこなかった。

“―――本当、危なっかしいやつ”

同じことを以前、宇崎にも言われた覚えがある。

あれは、私を心配してくれていたのだろうか。
今となっては、分からずじまいだけど。

つい最近のことなのに、ふと、懐かしいなと思ってしまった。

「なぁ、そういやあんた、怒篭魂を敵に回したらしいな」
「え?」

突然話題を変えた刈り上げくんは、私の中で今一番ホットな単語を口にした気がした。

「……なんで知ってるの?あなたも凪平生?」

制服を来てないから分からないけど、これだけ怒篭魂の幹部に引けをとらない容姿をしているのだから、凪平高校に在席していれば絶対に有名なはずだ。
耳にしたことすらないということは……いや、噂には疎くあるから、私が知らないだけかもしれない。

けれど、目の前の彼が同じ高校だとはどうしても思えなかった。
それは、直感。

「さぁ。凪平におるかもしれんし、おらんかもしれん。どっちやろうな?」
「……この地域に住んでるの?私と怒篭魂のことは、そんなに有名?」
「いや。俺が例外なだけやから、安心しーや」

安心……したいけど、できない。

道化師のように笑う彼は、自分を指さし、名前を乗った。

「俺はアキ。あんたのことは、前々から知ってたで」



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