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北校舎の横にある人気のないスポット。
滅多に人が寄り付かないことから、告白する絶好の場所としても使用されているらしい。

チャラ男――美原祥吾がそう教えてくれた。

「やっほ。ごめん、遅くなった」

通称“裏庭”と呼ばれるそこにいた美原先輩に声をかけると、彼は手元の携帯からこちらへ視線を移動させ、少しだけ眉根を寄せた。

「ごめんって謝ってるわりに、まったく急いでないように見えるけどぉ〜?」

そりゃあそうだ。
実際、約束の時間に遅れると分かっていながら、足を早めることはなかったのだから。

「あはは」

と、笑って誤魔化せば、

「まぁ、きみがそういう性格だってこと、だいぶ分かってきたからいいよ」

なんて苦笑いされてしまう。

そういう性格って……。
いや、正しいから文句は言えないけどさ。

「うん、ホント、ごめんね」
「……きみってさぁ、口ばっかりだよねぇ」
「え。そんなことないと思うけど」
「自覚してないのが一番タチ悪いよ」

そうかな?

首を傾げると、ほらそういうトコロ、と先輩に呆れられる。

うーん。
自分じゃ分からない。

「それで、今日は何もされなかった〜?」

美原先輩が覗き込むように尋ねてきた。

何故、私たちが人目を阻んで、こんなところで待ち合わせをしていたかと言うと。

あの上靴の一件で、私が嫌がらせを受けていることを知り、何か力になれないかと申し出てくれた先輩。
でも、自分は怒篭魂の幹部だから、立場上あまり目立つことはできない。
ならば話を聞くだけでもさ、と、こうして人気のない場所で会うようになった。

ありがたい、けど。

私は少し逡巡する。
今朝の来栖嬢の一件は、先輩に言った方がいいのだろうか。

……いや、やめよう。
言ったところで、美原先輩が私の話を信じてくれる保証はない。

先輩は私の味方だと言ってくれるけど、宇崎のときの二の舞いになるのが怖くて、私はその言葉を未だ信じられないでいる。

「何も、ないよ」

そっと紡いだ嘘。

だって分かってるから。
先輩もきっと、来栖嬢を選ぶ。


―――美原祥吾。
一つ上の先輩で、怒篭魂の幹部。
大の女好きとして知られるらしい。

思わせな素振りで相手をその気にさせ、相手から自分を求めてくるようになったらぞんざいに手のひらを返すのが彼のやり口だと、風の噂で耳にした。




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