奇跡 ※天喰視点

人は恋をすると変わる なんてよく聞くけれど、ビッグ3などと呼ばれている天喰も例に漏れず・・・彼の日常生活に、ある変化が生じた。


「(・・・今頃、身能さんは何をしてるんだろう・・・)」


恋患い―――その典型的な症状である。
気がつけば、ほんの ふとした瞬間にでも、天喰の頭は彼女のことを考えるようになっていた。
授業中、彼女はどんな顔をして先生の話を聞いているんだろうか。
戦闘訓練では、好戦的にクラスメイトたちに挑んでいるんだろうか。また無茶してるんじゃないか?怪我をしてないといいけど・・・。
寮内では、彼女も いつもより気を抜いたラフな姿を見せたりするんだろうか。
―――今、彼女はどこに、誰といて、何をして、どんな表情をしているんだろうと思考しては、毎度のように思う。


「(・・・・・・会いたい)」


無意識のうち、彼女の姿を探すクセもついてしまった。
教室から見えるグラウンドに彼女の姿がないだろうかと視線を滑らせて。
校内を移動中は、廊下を曲がった先に彼女がいればいいなと期待する。
食堂に行けば、その日のメニューより先に、彼女がどこにいるかを確認してしまう。
そんな有り様だから、ミリオに「わりと重症なんだよね!」と笑われもした。

そうして、ようやく彼女に会えたとき―――彼女は必ず、眩しくて温かな 太陽みたいな笑顔を天喰に向けてくれるものだから・・・余計に、天喰の頭から彼女のことが離れなくなるのだ。










心情の変化とともに、生活の中に楽しみと癒しを得た天喰だったが・・・しかし、彼の性格のほうは、そう簡単には変わってくれない。


「ジャガイモだと思って臨んでも・・・頭部以外が人間のままで、依然 人間にしか見えない。どうしたらいい、言葉が・・・出てこない」


1年生相手にインターンについて話して欲しいと、ビッグ3として頼まれたものの・・・いざ1年生の教室に立ち、大勢の注目を浴びたら、やっぱりこうなった。


「頭が真っ白だ・・・つらいっ!帰りた、い・・・?」


いつものように弱音を口走っていた彼が、そこで気がついた。
教室の最後方―――愛らしい笑みを浮かべて 天喰にひらひらと手を振っている、彼女の姿に。


「環せんぱーい!」


きらきらと眩しくきらめく、愛くるしい笑顔。
優雅に手を振るその背後からは、神々しい光が射しているようにさえ錯覚する。


「(てっ・・・天使!!?)」


・・・な、わけがない。
緊張のあまり頭から抜けていたが・・・思い返せば、ここは1ーAの教室である。そして、本来は各クラス20人在籍しているはずが、この教室には21人いるじゃないか。
つまり、20人の頭部ジャガイモ人間たちの後方にいる、天使と見まごう美少女――彼女こそ、天喰が恋い焦がれている相手、身能 強子である。


「身能、さん・・・!」


カッと眼をかっ開き、彼女の名を口にした天喰。
彼女を視認した瞬間から、心臓が暴れだす。ドッドッと鼓動が早くなり、全身に血液がめぐって 熱くなる。
彼女に会えて嬉しい、彼女と話したい、彼女の笑顔をずって見ていたい・・・そんな感情が顔を出すと同時、はたと思い出す。
今の、自分の―――なんともカッコわるい姿を。
1年生を前にして、まともに話すこともできないで、年上の威厳なんて欠片もない。ビッグ3“らしさ”も微塵もない。
ビビって、弱音をこぼすだけの、情けない姿。


「(!・・・また身能さんに、怒られるッ!)」


その発想に至った瞬間、天喰は教壇の裏に隠れるようにしゃがみ込んでいた。


「あああもう駄目だっ・・・俺はもう いっそ、貝になりたい!!」


いっそ、誰にも気づかれないような海の底でひっそりと生きる貝になれれば、どれほど気楽だろうか。感情を持たぬ貝ならば、こんな自責の念に駆られることもないだろうに。


「ちょっと先輩ッ、どうしてそうなるんですかぁ!私たち、知らない仲じゃないですよねえ!?」


怒鳴るような彼女の抗議の声に、天喰はさらに身を縮める。
そう―――“知らない仲”じゃない。だからこそ、怖くなるのだ。
こんな情けない人間が、彼女のサイドキックだなんて・・・彼女にガッカリされるのではないか?彼女に呆れられるのではないか?彼女に、見放されるのではないか?って。
だって、ほら、


「・・・やっぱりまた 身能さんに怒られた・・・」


こうしてまた怒られてしまう自分が、情けなくなる。
せっかく彼女に会えたというのに、こんな情けない姿ばかり見られることがつらくて・・・天喰は、少しでも彼女から身を隠すよう、アサリの貝殻を『再現』して頭にかぶった。
これ以上、カッコわるい姿を彼女に晒すくらいなら、


「帰りたいっ・・・!!」


天喰の心の奥底からの嘆願が教室に響きわたった。





その後、ミリオが1年生たちと戦うことになったのだが―――あのミリオを相手にしても どうにか一矢報いようとする彼女は、やはりカッコよくて、頼もしい(ただ・・・男の股間に拳をぶち込むとは・・・彼女は、加減というものを覚えたほうがいい)。
天喰は、戦闘中の彼女の 凛とした姿に思わず見惚れながら、日頃から彼女を間近で見られる1ーAの彼らが、羨ましくなった。
戦いながらも、気が置けない様子で彼女と言葉を交わしていた、赤い髪や緑の髪のクラスメイト・・・彼らはきっと、日頃から身能と信頼関係を構築してきたのだろう。彼らは、確かに親しい間柄なんだというのが伝わってきた。


「(もし俺が、あと二年遅く生まれていて、彼女と同じクラスになっていたら・・・)」


ふと、そんなあり得ないもしもを願ったが・・・その場合、天喰の情けない姿を今以上に彼女に晒すことになると気づいて、サァッと顔を青ざめさせる。
やっぱり天喰は、身能より二つ年上くらいでちょうどいいのだと思い直した。










1年生にインターン実施の許可がおりたそうだ。
当然ながら、身能はファットガム事務所でインターンをすることになった。
となると、この先・・・天喰が彼女と過ごす時間は増えるだろう―――そんな近い未来に想像を膨らませ、口元が弛みそうになるのをどうにか堪える。
週末が待ち遠しく、浮わついた気分を引きずっていた時のこと・・・天喰が自室の扉を開けると、目の前に身能が立っていたものだから、思わず目を瞬いた。
彼女に会いたすぎて、とうとう彼女の幻が見えてしまったのだろうか?


「ちょっと、先パアァイ!?」


・・・と思ったが、その怒声に、彼女が紛れもなく本物の身能 強子だと理解した。
何の心構えもできていなかったものだから、咄嗟に部屋の中へ戻ろうとするも、


「逃がすかッ!!」

「ぐっ!!?」


瞬時に後ろ襟を掴まれ、廊下へと引きずり出された。
すかさず彼女が部屋の扉を叩きつけるようにバタンと閉めると・・・自然と、世間で言うところの“壁ドン”をされているような体勢になってしまった。


「(ちっ・・・近い!!)」


心臓に悪いその距離感に動転しながら、どうにか彼女の話に耳を傾ければ、切島の頼みを断ったことに対して怒っているようだった。
彼のような好青年を嫌う要素なんてない。明るく、ハキハキとした態度は天喰が憧れるものだし。
けれど、ひとつ確かなのは―――切島がファットガム事務所に来たら、確実に、天喰が身能と過ごす時間が減るということ!
彼女と話す時間が、彼女が天喰に笑顔を向ける時間が・・・身能と親しい切島に、奪われるのだ!
それに、たぶん、何となくだけど・・・切島の中には、天喰が身能に抱いているのと同じような感情がある気がした。憧れとか、尊敬――そういった好意的な感情は、ふとした瞬間に、恋心に変わってしまったりするんじゃないのか!?
そんな不安が膨れあがって、気づいたときには「駄目だ!!」と切島を突っぱねていた。


「―――身能さんは、」

「・・・はい?」


一生懸命、切島に味方するようなことばかり並べたてる彼女に、疑問がわいた。
・・・訊くのは怖いが、訊かなければ死ぬまで悩んでしまいそうなので、勇気を出して、問いかける。


「身能さんは・・・切島くんのことが・・・好き、なのか・・・?」


・・・こんなことを訊いたって、意味ないのに。
もし“好き”だと彼女が答えたところで、天喰には、それを応援することも、邪魔することも出来そうにないんだから。
そもそも、自分みたいに情けない ダメ人間が、誰かに恋心を抱こうなど・・・身のほど知らずもいいとこだというのに。


「いいですか、先輩―――私が切島くんを好きか、なんて・・・そんなの当然っ、“好き”に決まってますよ!」

「ッ!!?」


聞いた瞬間、天喰があんぐりと口を開けて彼女を凝視した。
もしやとは思ったが・・・まさか、本当に、そうだとは・・・。
彼女が誰かを好きになるなら―――その相手は、たとえ天地がひっくり返ろうとも、自分ではないのはわかっている。
だけど・・・その相手が、自分ではない誰かであることが、こんなにも苦しくて、悔しくて、腹立たしいだなんて、知らなかった。
おまけに、自分がちっぽけで価値のない人間だと思い知らされるようで・・・まるで世界の終わりを見たような気持ちになる。


「切島くんのことが好きです、大好きです」

「っ、」

「信頼できる人だし、尊敬もしてます」

「・・・っ」


彼女が言葉を発するたび、心がボロボロに痛めつけられていく。まるで『毒舌』の個性でも食らったかのようなダメージだ・・・。


「同時に――― 度し難いほどに厄介で、持て余しるんです」

「・・・・・・ん?何・・・?」


好意的な言葉が続いていたのに、唐突な“厄介”発言に、天喰は混乱する。
聞けば、彼女にとって切島は、大好きな友人であり、侮れないライバルであり、大切なクラスメイトであると語った。
どうやら、つまり彼女の言う“好き”は、恋愛的な意味ではないらしい。


「ファットさんも、環先輩も、私にとって大切な人だから―――だから二人に、切島くん(大切なクラスメイト)のことを知ってほしいと思ったんです」


天喰が、身能にとって、大切な人―――それを聞くと同時に、天喰の胸の内に、フワフワと、温かくて心地の良い感覚が芽生えた。


「まぁ、でも?切島くんが相手だって、ファットガム事務所の愛弟子の座はそう簡単には譲れません!私がいかに可愛がられてるか、知らしめてくれるわ・・・!」

「・・・身能さん」


ニヤリと悪どい顔をして告げた彼女を、なんとも彼女らしいなと微妙な表情になって見つめていれば、彼女はさらに付け加えた。


「そんでもって 切島くんに自慢してやるんです―――私の大好きな、最高のサイドキックの存在を!私たちが相性最高の名コンビだってところを、彼に見せつけてやりましょう!!」


彼女には、まったくもって、かなわない。
そんなことを言われたら、切島をインターンに連れていかないわけにいかないし・・・彼も含めたメンバーでのインターンが 楽しみになってしまうじゃないか。










身能と切島をインターン生として新たに迎えると、ファットガム事務所は たちどころに活気づいた。
天喰は、切島との関係はどうなるかと不安だったのだが・・・いざ、インターンが始まれば、性根の優しい彼に好感を抱くのに時間はかからなかった。それに、同じ人を好ましく思う者どうし 通じ合うものでもあるのか、意外にも、彼とはすんなり打ち解けた。
しかし、彼らのインターンが始まってから、天喰が何より驚かされたのは・・・


「―――治癒強化(リカバリービヨンド)」


彼女の新ワザを目の当たりにし、開いた口が塞がらない。
まるで逆再生かのように、傷が塞がっていく。そんな神業を見た天喰は、彼女の成長ぶりに感心するとともに・・・彼女の身を案じた。
以前より、拳銃を持った人間に立ち向かっていったり、身体に毒がまわった状態で一人でヴィランと戦おうとしたり・・・捨て身で 無茶ばかりする彼女のことだ。


「(この先、彼女が考えなしに突っ走ることがないといいけど・・・)」


だが―――いざ、彼女に銃口が向けられたのを見ると、考えるより先に 捨て身で彼女を庇おうとして、逆に天喰のほうが彼女に怒られることとなった。





それから、1週間のインターンを通して、彼女とともに時間を過ごすうち、天喰は心底思った―――


「(・・・・・・疲 れ る !!!)」


1週間が経つ頃には、精神的な疲労で、天喰は青い顔をげんなりとさせていた。
なぜかと言うと、単純な話で・・・身能の言動にいちいち振り回されているからである。

パトロール中に、彼女がモテるなんて話を聞かされ、頻繁に告白されているなんて事実を知らされる。彼女が人気者なのは当然だとわかっているけど・・・それでも、表現しがたい危機感に 胸がざわついた。
あげくに、彼女の理想の“タイプ”なんてものを聞かされ、自分には かすりもしない人物像だと思い知る。どうせ、天喰には、彼女に好かれる要素なんて一つもないんだ・・・。
というか、その“タイプ”って、もしかして切島に条件が合致してるのでは?と冷や汗をかいたところで、ファットの名前があがり・・・ファットの浮かれようにイラッとさせられた。

かと思えば、人混みに押された身能と急接近するというハプニングが起きた。
好きな子が、自分の胸に凭れるようにして くっついている!好きな子が自分の手の届くところに、触れ合う距離にいて、自分だけを見ている!
それが、こんなにも天喰の心を狂わせるだなんて、今まで想像もしなかった。嬉しくて、ホッとするような、でも恥ずかしくて胸が高鳴って、落ち着かない。平常心なんてもの、容易くもっていかれる。
ヒーローであれば、女性に触れる機会も多々あるけれど・・・こんな感情は初めてだった。

それに、彼女も彼女だ。
いつも“ネガティブ”やら“ヘボメンタル”と言って天喰をたしなめる態度のくせに、ふとした時に、“かっこいい”だとか 思ってもないことを言って天喰を舞い上がらせて・・・そうやって、いちいち彼女に一喜一憂させられるのだ(切島が言うには、こういうのをツンデレと言うらしい)。
突拍子もなく、予測がつかない彼女の言動のせいで、天喰の感情は激しく浮き沈みを繰り返している。情緒不安定もいいとこである。
今まで知らなかったが・・・誰かに恋をするというのは、こんなにも精神的な疲労がたまるものなのか・・・。


「なんや環ィ、ため息なんか吐いて・・・」


ファットガムが不思議そうに天喰を見やった。
身能と切島は、クラスメイトたちにお土産を買うとかで出掛けているので、今ここには天喰とファットの二人しかいない。
・・・彼らが来てからまだ数日なのに、彼らがいないと、事務所がやけに静かに、寂しく思えるのだから不思議だ。


「大したことじゃ・・・・・・ただ、ちょっと疲れてるだけで・・・」

「あ〜、いっつも強子ちゃんに振り回されとるからなぁ、環は」


天喰の言葉にファーッと笑い声をあげたファットに、ぎょっと目を剥いた。
まさか、天喰の身能に対する気持ちのことがバレてっ・・・・・・いや、誰よりも天喰たちのことを見ているファットに、バレないわけがないか。


「ええなぁ、青春!」


そう言って笑うファットの横顔が、なんだかいつもより“大人”に見えて・・・そのせいだろうか、天喰は自然とその悩みを吐露していた。


「全然よくない・・・身能さんには、情けない、カッコわるい姿ばかり見せてしまっている」


そりゃ、ため息だって出るさ。
好きな子を前にして、カッコいいところを見せたいと思うのは、男なら当たり前に抱く感情。身のほど知らずにも恋をした天喰だって、彼女の前では少しくらいカッコつけたいと願うもの。
なのに・・・彼女を前にすると、心を揺さぶられて右往左往するばかり。カッコつけるどころか、空回って裏目に出るし。
もとより自己嫌悪することが多かった天喰だが、彼女に恋をする前よりも、もっとずっと自責の念に苛まれて苦しいというのに・・・“青春”の、なにがいいものか。


「何言うてんねん。環が情けないとか、そんなん今更やろ」

「うっ・・・」


たこ焼きを口に放りこむファットがケロリと告げた言葉に、心が抉られる。
そうだった・・・もとよりネガティブでヘボメンタルな天喰は、恋をする前から、情けないところを彼女にさんざん見られていた。


「俺が切島くんに言うたこと忘れたんか?―――カッコつけられる人は、ほんまにカッコええから、カッコがつく!好きな子の前なら 身の丈以上のジブン見せられるなんて、んなウマイ話はあらへん!」


でも、じゃあ・・・天喰は今後もずっと、彼女の前で、情けなくてカッコつかない姿を見せないといけないのか・・・?
絶望する天喰を見て、ファットは逡巡すると、再び口を開いた。


「ええんちゃう?」

「え・・・?」

「等身大の情けない環で ええやん。カッコつけようと肩ひじ張らんでもな・・・強子ちゃんは、環の情けないとこも たまーに見せるカッコええとこも、全部引っくるめて・・・等身大の環を信頼してくれとるんやで」


ファットの言葉にはっとする。


「お前は強子ちゃんのサイドキックなんやから、強子ちゃんに弱っちぃジブンの情けない部分を堂々とさらけ出してええんや!ほんで なんぼでも強子ちゃんにフォローしてもらえ!相手の足らんとこを補うのが、最高のサイドキックやろ!!」


等身大でいい。情けない姿を見せてもいい。等身大の天喰を信頼してくれる。
その言葉を聞いて、少しだけ・・・ほんの少しだけ、前向きになれた気がした。










死穢八斎會の本拠地に乗り込む作戦、決行日。
複数事務所のチームアップに、警察部隊との協力―――かつてない大捕物に天喰も緊張を覚える。だけど、


「先輩がもっと強くなれそうな“食材”、色々と探したんですよ!」


イイ笑顔で 天喰に妙なものを食べさせようとする身能――彼女と一緒ならば、きっと 乗り越えられる。
しかし、八斎會の奴らは想像以上に手強いもので、なかなか先に進ませてもらえない。うっかり天喰が戦意を失いかけたところで、ミリオに渇を入れられ・・・自分のなすべき事を見つめ直した。


「ゴミみたいな人間の巣窟に、こんな可愛い子連れて来ちゃあ マズイだろ・・・このまま身ぐるみ剥いで、あられもない姿にしてやるよ!」

「っ・・・!」


身能をいやらしい目で見て、辱しめようとする八斎衆の奴らに・・・煮えくり返るような怒りを覚えた。それまでに抱いていた不安も、怯えも、すべての感情を吹き飛ばすほどの怒り。
それに、彼女を可愛いだけの女の子だと思っているなら、それはとんでもない侮辱である。
こいつらは、絶対に許せない。天喰の手で倒さなきゃ、気が済まない。
プロの力はまだこの先にとっておくべきだし、ちょうどいい・・・今ここで、自分のなすべき事に手を尽くそうじゃないか。

「ビッグ3なら・・・ヴィラン たったの三人くらい・・・一人で完封してみせてよッ!!」

あの頃とは、違う。
彼女に怒られることが怖いからじゃない、彼女を守りたいから、敵に立ち向かうのだ。
そして、彼女とともに積み重ねてきたものがあるから、天喰は断言できるのだ。


「俺なら、一人で三人完封できる!!」


君を、何があろうと絶対に、守る―――いつか言葉にして誓った言葉を、なぜか今になって思い出していた。


「ここは任せます、サンイーター!」

「!」


まるで「食べ終わったら食器を片付けてね」などと当然のことを頼むような、疑いの余地など微塵もないといった声。彼女は・・・天喰が勝つと、確信しているのだ。
それなら尚更、天喰には勝つことしか許されない。


「オイオイ、ヒーロー!彼氏ヅラしてカッコつけてんじゃねーぞ!?」


たとえヴィランにひどい毒舌を吐かれようとも・・・今の天喰は、絶対にひるまない!





宣言通り、八斎衆の三人を倒したが・・・思ったより手こずってしまった。負傷した天喰が動けるようになる頃には、八斎會との戦いも終盤に差し掛かっていた。
どうにか彼女を探し出せば、危うくクロノに刺されそうになっていたところでヒヤリとし、即座にクロノを拘束する。それから彼女が大怪我を負っているのに気がついて、ひゅっと息をのんだ。
自分でもおかしな話だと思うが・・・自分の怪我なんかより、彼女が傷ついていることのほうが、ずっと痛みを強く感じる。
そうして彼女の身を案じるも、「治崎の負けっ面を拝みに行く」と息巻く彼女を見て、思ったより元気そうだと安心した。
いつもの強気な彼女だと、平常運転で好戦的な彼女だと―――そう、油断してしまっていたのだ。

戦いが終結し、エリという少女も無事に保護した。
現場が安堵の空気に包まれていたとき、「ビヨンドが一人でヴィラン連合を追跡している」という情報が入り・・・嫌な予感に、背筋が凍った。
動ける者が総出で彼女のあとを追ったが、思いのほか入り組んだ街は迷路のようで、彼女の捜索に難航する。不運なことに索敵に長けた者もおらず、焦った緑谷が一人飛び出した。
天喰も焦りながら、しかし、“最悪”の場合も想定し、サメの嗅覚に頼りながら捜索を続け・・・そして、“最悪”が現実となる。
離れたところからでも血の匂いを拾えるほどの、大量出血。どう考えても致死量の血が流れている。嫌でも彼女の“死”をイメージさせられるものだった。
その先にある光景を恐ろしく思いながら、血の匂いをたどり・・・ついに彼女のもとに着けば、


「サンイーター!」


天喰を見て、ぱぁっと天使のような笑顔を浮かべた彼女。五体満足で、出血箇所も見当たらない・・・服は汚れているようだけど。
これは・・・幻覚じゃないよな?都合のいい夢じゃないよな?
だって、足元の地面は、一面が赤黒く染まっているというのに。明らかに、ここで“何か”があっただろうに。
彼女が生きていて、動いて、喋っている――その信じられない幸福を噛みしめながら、眠る彼女を病院まで運んでいった。







そんなことがあった後だというのに、だ。
治療中の彼女が病室からいなくなったと聞いて、血相を変えて病院内を探し回れば、集中治療室のある方向から歩いてくる彼女を見つけた。
慌てて彼女に駆け寄り、いったいどこに行っていたのかと問い詰めると、


「ナイトアイと、話がしたくて・・・」


親に怒られた子供みたいに、小さく言い訳する彼女を前にして、閉口する。
ナイトアイの身に何があったのかは、大まかにだけど聞いていた。彼が非常に危うい状態だということも。
彼が治崎にやられたところには彼女もいたそうだから、ナイトアイのことに、彼女が責任を感じているだろうことは想像に難くない。


「・・・それで、彼とは、話せたのか・・・?」


話題が話題なだけに慎重に問いかけると、彼女はこちらに親指を立て、二ッと笑って見せた。


「それはもう、たっぷり話せましたとも!」


そして、ぺらぺらと口を動かし始めた彼女に、天喰は怪訝そうに眉をひそめる。


「・・・身能さ 「っていうか、先輩もあちこち怪我してるんですから、病室に戻ったほうがよくないですか?」


声をかける隙も与えてもらえないくらい、彼女はやたらと饒舌に、言葉を続けている。
何かを隠すように、はぐらかすように、相手の思考を奪うがごとく、怒涛の勢いで言葉を連ねていく彼女。
こういった彼女を見るのは初めてではないが・・・天喰が知るかぎり、彼女がこうなるときは大抵、彼女にとって不都合があるときだった。


「身能さん・・・っ」


いやな雰囲気に焦燥して、再び彼女の名を呼ぶが、やはり彼女は聞こえないフリして、天喰の言葉に耳を貸そうとしない。
・・・こちらの心配など露知らず、彼女はあくまでも自分を貫こうとする。
だから、歯がゆさのような、苛立ちにも似た感情が、沸々と天喰の胸の内に膨らんできて―――


「そういえば他の皆さんの様子はどうで・・・っ!?」


―――気がついたときには、天喰は 彼女を力任せに抱き寄せていた。
彼女への 言葉では表現できない感情をぶつけるように、彼女を抱く二本の腕に、ぎゅっと、力を込めて。


「・・・君は、本当に・・・・・・」


彼女は、いつもそうだ。
不安も恐怖もひた隠しにして、見栄を張って、自分を大きく見せようと背伸びして・・・。


「身能さんがそうやって饒舌になるのは、余裕がないとき、感情が昂るときだってこと、俺は知ってる・・・」


言い当てれば、彼女は不本意そうに口を閉ざした。図星を指されて押し黙った彼女を見下ろし、天喰は小さく息を吐きだす。


「・・・君が、他人に弱みを見せたがらない人だってのは 知ってる。弱音を吐くことは忌避して、前向きな姿勢を貫いて、いつも 少しだけ背伸びをする・・・そういう性分なのも 知ってる」


君のことを、どれだけ見てきたと思ってるんだ。
・・・まあ、彼女のクラスメイトたちのように四六時中 一緒にいられるわけじゃないから、天喰の知らない部分もあるだろうけれど―――でも、天喰は、彼女のサイドキックとして、他の誰とも違うような濃い付き合いをしてきたつもりだ。彼女の長所も、短所も、天喰はよく知っている。


「強く、かっこいい人であろうと、身能さんが常に努力していることも知ってるし・・・俺は、そんな身能さんを、心から尊敬している。身能さんは、凄い人だよ」


不思議なものだ・・・職場体験の頃は、対極的な相手に、あんなにも苦手意識をもっていたはずなのに。
彼女の人となりを知ってからは、彼女こそが“最高のサイドキック”だと、盲目的なまでに彼女を信頼している。彼女と知り合ってからというもの、天喰は彼女から多くのことを学んできた。
おそらくは、彼女のほうもそうなんだろう。天喰と身能は、そういう関係なのだ。


「だけど・・・―――」

「・・・先輩?」


言葉を区切って、じっと彼女を見つめる。
強くあろうと常に努力している彼女は、その性分ゆえに・・・ひとに“弱み”を見せるのがヘタすぎる。
そんな彼女を相手に、どう接するのが正しいのか、天喰には正直よくわからない。彼女に何を言ってあげればいいのか、何をしてあげればいいのか、正解がわからないのだ。
だけど・・・口先だけでカッコいいことを言ったところで、どうせ彼女の心には刺さらないだろう。ならば天喰は、天喰なりの、等身大の言葉を送るしかないよな。


「―――本当につらいときは、つらいって 言っていいんだ」


情けないけれど、天喰には、こんなことしか言えない。
でも、こんなこと・・・天喰にしか言えないだろうから。


「いつも弱音を飲み込んでしまう君は・・・たまには、弱音を吐いたほうがいい。いつも前向きなぶん、少しくらい後ろ向きなことを言っていいんだ。不安も、愚痴も、嘆きも・・・誰かに打ち明けたっていいじゃないか。苦しいときは、心の内に溜め込んだものを吐き出せばいい」


こんな後ろ向きなことを彼女に言えるのは、いつもいつも後ろ向きなことばかり吐き出している天喰くらいだろう。


「身能さん・・・泣きたいときは、泣いたっていいんだよ」


一見すると 生まれながらに強い人と思われがちな彼女だけど、本当の彼女は、とっても強がりな普通の女の子だと知っている天喰だからこそ、こんなことを言えるんだ。
「でもっ」と彼女の震えた声が耳に届いて、彼女の我慢の限界が近いことを悟る。


「・・・でも!泣いたって、何も状況は変わらないじゃないですか!」


今にも泣きそうな声なのに、それでも精一杯に強がっている彼女に胸が苦しくなって、「・・・うん」と静かに頷く。
すると彼女は、泣いても状況は変わらないのだとか、ヒーローは笑ってないといけないだとか・・・泣けない理由をいくつも並べ立てていく。絶対に泣くもんかと、意地を張る彼女の話を静かに聞いていると、


「ナイトアイは、“笑っていろ”って、私にそう言った!!」


“笑っていろ”――きっと、ナイトアイとの最後の会話で、彼から言われた言葉なのだろう。
彼の言わんとすることは、よくわかる。


「身能さんの笑顔は、勇気をくれるから。身能さんが笑っていると、街の人たちは安心するし・・・一緒にいる人間も、自然と前向きになれる」


彼女の笑顔が、天喰の勇気の源だ。天喰は彼女の笑顔を見るとほっとするし、その笑顔を思い浮かべるだけで、いつもより前向きになれる。
彼女の笑った顔が好きで・・・いつだって、彼女の笑顔を見ていたいんだよ。


「じゃあっ「でも 君はっ!」


懲りずに、まだ粘ろうとする彼女の言葉を遮って、天喰が声を張り上げた。


「―――うまく笑えてないじゃないか!!」


自分でもビックリするくらい大きな声が出てしまったが、仕方がない。わからず屋の彼女が折れてくれるまでは、天喰だってしつこく粘ってやるさ。


「つらいのを我慢したままじゃ、心から笑えないならっ・・・心から笑うために、一度くらい、“つらい”って、弱音を吐きだしてくれ!」


君は、後ろ向きなことを言うなって、前向きなことを言えって、そう言うけど・・・本当につらいときは、つらいって言っていいんだ。心の内に溜め込んだものを吐き出していい。
そうやって言葉で発散することで、君の心は、少しだけ軽くなるはずだから。君は知らないだろうけど、そういう“言葉”の使い方もあるんだよ。
だから、


「涙を堪える理由なんて、もう いいから・・・頼むから、泣いてくれ・・・!」


懇願するよう、言い聞かせる。
目の前で、好きな子が苦しんでいる。それが、まるで自分のことのように苦しくて、苦しくて・・・天喰は彼女の背に回している腕に さらに力を込めた。
心は泣きたがっているのに、理性が邪魔をして泣けずにいる彼女を・・・どうにかして、救けたい。


「・・・こうしていれば、俺以外の人には、身能さんが泣いてるなんてわからないから」


意地っぱりで、泣くことさえうまく出来ない彼女のために、周囲の視線からかくまうよう彼女を抱きしめて呟く。


「俺は身能さんの、サイドキックだから」


知ってるか?サイドキックは、同じチームの仲間として、助け合い、互いの弱みを補い合う仲で・・・


「サイドキックには・・・弱みを見せてもいいんだ」


いつもは天喰が彼女に情けないところばかり見せているけど・・・今度は、彼女のほうが、天喰に弱みを見せる番だ。
今は、意地を張る必要なんかないんだよ。
彼女がどれだけ情けない部分をさらけ出したところで、どうせ天喰が、等身大の彼女をどうしようもなく好きなのだと 再認識するだけである。


「・・・・・・ぅっ」


小さく嗚咽がもれたのを合図に、彼女の呼吸が乱れ、そして・・・


「っ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」


腹の奥底から、目いっぱいの声をあげて、彼女が泣き叫んだ。
小さな子どものように、感情のままに、わんわんと泣きはじめた彼女に、つい天喰の目頭も熱くなる。
天喰の服に皺が刻まれるほど強く握りしめ、彼女は心の丈を言葉にして吐き出していく。


「・・・私が、ナイトアイの代わりに刺されば良かったんだ!!」


はたと思いついたように彼女が口にした言葉。
意味を理解して、ぎゅうと胸を締め付けられた。そんなこと・・・たとえ嘘でも、言ってほしくない。
むせかえるほどに彼女の血の匂いが充満していた、あの現場が脳裏をよぎる。
あのとき、彼女の“死”を鮮明にイメージさせられたが・・・彼女が死ぬなんて、そんなの、考えただけで気が狂いそうだ。彼女を失うなんてことがあれば、絶対に立ち直れないだろう。


「・・・・・・足りなかったんだ。私が、もっと、頑張っていたら・・・奇跡のひとつでも起きたかもしれないのに」


ブツブツと呟かれた言葉を拾い、天喰は目を見開いた。
彼女の口から“奇跡”という言葉が出たのは、正直、意外である。
彼女という人は、自分の足で道を切り開き、欲しいものがあれば自分の手で掴みとり・・・そうやって、自分の理想どおりの人生を送っていると思っていた。
そりゃ人生、思い通りにいかないこともあるだろうが・・・そんなものは自力で覆して、自分の理想を実現させてしまう――そういう人だと思っていた。
だから、そんな彼女が“奇跡”とかいう、曖昧で、不確実で、存在も不確かなものに頼るなんて、意外に思えたのだ。


「・・・・・・身能さんは・・・よく、頑張ったよ」


宥めるように、天喰が優しく言い聞かせる。


「頑張った・・・君は十分に、最善を尽くしてくれたよ」


何を、しょぼくれることがあるだろうか。
じっと動かず、顔を俯けている彼女を見つめる天喰は、少しばかり迷う素振りを見せてから、重々しく口を開いた。


「身能さんが、それだけ頑張っても どうしようもないってことは・・・たぶん、誰にも、どうにも出来ないことだったんじゃないかな―――今は」


初めて出会った頃の彼女は、ただ、パワーが強いことを誇る女の子だった。
それだって充分に凄いことだけど・・・たった一週間の職場体験のうち、彼女は五感の強化という新たな強さを手に入れた。
これで彼女は、完全無欠な万能ヒーローになったかと思えば・・・今度は、怪我をしても自己回復できるようになったという。
出会ってからの短い期間で、彼女はあり得ないくらいの成長を遂げているのだ。
それこそ―――世間で言うところの、“奇跡”のような快進撃ではないか?


「身能さんは、普通は不可能だと思うことも、努力で、可能にしてしまえる人だから・・・今の身能さんには出来ないことだったとしても、君なら、いずれ叶えられる」


彼女は、普通の人が不可能だと思うどころか、そもそも思いつきもしないようなことを成し遂げてしまう。
それこそ―――世間で言うところの、“奇跡”のような話じゃないか?
うん・・・彼女の存在そのものが、“奇跡”と言ってもいいかもしれない。
彼女ならば、この先の未来がどれほど厄介なものであっても、彼女を待ち受ける運命がいかに残酷であったとしても・・・


「大丈夫」


今日という日まで、ひとつ、ひとつ・・・堅実に積み上げていた彼女を知っている天喰だからこそ、言える言葉だ。
驚いたように顔を上げた彼女は、泣きはらした赤い眼から はらはらと涙をこぼしている。悲しみと悔しさの入り混じった泣き顔を見て―――やはり、“大丈夫”だと確信した。


「奇跡だなんて、不確かで曖昧なものをアテにしなくたって・・・身能さんなら、君自身の力で、守りたいものを守れるし、君が望む未来を掴めるはずだ。だから、また、次も頑張ればいい」

「・・・なんで、そんなこと・・・」


何を、疑問に思うことがあるのだろうか。
呆然とこちらを見つめてくる彼女に、迷うことなく天喰は口を開いた。


「君が、凄いヒーローだってこと、俺は知ってる」


気高く、負けず嫌いな彼女なら、今回の挫折も乗り越えていける。
今は不可能だったとしても。その頬をつたう涙を拭ったなら、また君は、これからも挑み続けて・・・やがては、“奇跡”を起こす。
それはもう、不確かで曖昧なものではなく、約束された未来と言っていい。


「・・・・・・かっ、」

「(・・・・・・か?)」


小さく声を漏らした彼女に、首を傾げる。
じっと、穴が開くほどに天喰を見つめて動かない彼女に・・・どんどん不安になってきた。


「ぁ、えっと・・・身能さ、ん・・・?」


もしや、自分はなにか失言してしまっただろうか。振り返ってみると、色々と、口うるさく言ってしまった気がしてきた・・・。
彼女は「か」と言っていたが、なんだろう・・・「勝手なこと言うな!」と叱られたりするのか。はたまた、「カッコつけてんじゃねえ!」と怒鳴られたりするのか。


「(・・・・・・はっ!?)」


今さらながら、彼女と自分の体勢を自覚して、ギョッと顔を青ざめさせた。
―――俺は、なんということをっ!!つい、勢いで・・・彼女を抱きしめてしまったなんて!!!
まさか・・・さっきの「か」は、「彼氏ヅラすんな!!」の「か」だったのか!!?


「(ああああ・・・どうしよう!!?)」


早く・・・彼女の口から拒絶の言葉が出る前に、早く彼女から離れないと!
そう判断した天喰が、彼女を抱きしめる腕を弛めかけたところで―――ぽすんと、天喰の胸元に彼女が顔をうずめた。


「!!!!?」


これは人混みに押されたとか 事故とかではなく、彼女の意思による行動。それを理解し、ブワッと全身が熱くなる。
その上さらに・・・彼女が甘えるような仕草で天喰の胸にグリグリと顔をすり寄せるものだから、一瞬、意識が飛びかけた。


「(・・・な、なんだ、このかわいい生き物はッ!!?)」


破壊力バツグン。平常心なんてものは容易くもっていかれた。
衝撃のかわいさに意識が朦朧としながら・・・天喰は噛みしめる。
好きな子が、自分を信頼してくれている!好きな子が、素直に甘えた姿を自分にだけ見せてくれている!
それが、こんなにも幸せなことだなんて、今まで想像もできなかった。いつまでも 永遠にこうしていたいとすら、願ってしまう。


「(・・・だけど、)」


天喰が本当に見たいと願うのは、彼女の 心からの笑顔だから・・・この幸せに浸るのは、彼女が涙を流しきるまでの短い時間にとどめよう。
その涙が枯れて、頬の涙を拭ったら―――そのときは、笑顔で前に進む彼女を全力で応援しよう。そして、もしまた彼女が落ち込むことがあれば、天喰がいつでも支えになろう。
そう心に誓い、天喰は弛めかけた腕に再び力を込めて、彼女を強く抱きしめた。










==========

天喰くんの性格上、好きな子に対して、“自分のことも好きになってほしい”という願望はないだろうな・・・という解釈です。
見ているだけ、傍にいられるだけでも嬉しいし、自分を信頼してくれたら最高だ、とまでは思うけど、自分が夢主と恋人になるなんて発想は出てこないんじゃないかな、と。
恋愛に関しても彼は控えめだと思うのです。

でも、男の人って恋をするとホルモンの関係で行動力とか闘争心があがるらしいので、無意識のうちに天喰くんにもそういう変化はあると思ってます!



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