誤解 ※上鳴視点

雄英に入学して、初日。
見慣れない顔ぶれに囲まれながら、上鳴は自分の席に着いて ホームルームが始まるのを待っていた。ホームルームの時間になれば担任の教師がやってきて、入学式やらガイダンスでもあるのだろうと、この後の流れを予想しながら。
ぽつぽつと教室に人が増えていき、あとほんの数人でクラス全員が揃うだろうという、そのとき・・・1−Aの教室に足を踏み入れたその人物を視界に入れ、上鳴がハッと息をのむ。


「(めっちゃ可愛い子 キタァー!!)」


すでに教室にいた女子も可愛い子たちばかりだと喜んでいた上鳴だが・・・その子は 別格だ。
透き通るような白い肌。彼女が歩くたび、艶やかな髪が嫋やかにたなびく。ふっくらした形のいい唇は、愛らしい桜色。ぱちりと見開かれた大きな眼が、くるんとカールした豊かな睫毛に縁取られ、さながら人形のよう。すべてが完璧、まさに美少女!
顔だけでなく、スタイルも良い。そのプロポーションの良さは、ぱっと見ただけで明白だ。
すらりと伸びた四肢はほどよく引き締まって、質感の良さそうな柔肌が目にまぶしい。制服の下にあってもわかる豊満な胸と、曲線美を描く 腰のくびれ。
これぞ、理想―――世の女性たちの理想を詰めこんで具現化したような存在。
上鳴は彼女に見惚れるあまり、息をすることも忘れていたくらいだ。
つまり、何が言いたいかっていうと・・・彼女の容姿は、上鳴の好み ど真ん中ストレートだったのである。


「(やっべぇ!こんな美少女、今まで見たことねぇよ・・・雄英に来てよかった!)」


上鳴のテンション、急上昇。
こんな可愛い子と、きらめかしい青春の高校生活をこれから紡いでいき・・・あわよくば、友情がいつの間にか恋に変わっちゃってたりなんかしちゃったりする、甘酸っぱいスクールデイズ―――そんな未来を妄想して、ヘラりと顔が弛む。


「(・・・って いやいや!ちょっと待て、俺!!)」


思い出せ・・・あの、凄惨な悲劇を!
以前“いいな”と思っていた女子に、モノを貢いだり、時間と労力をかけて、彼女に色々と尽くしたというのに・・・実はその子には、金持ちでイケメンというハイスペック彼氏がいて、最初から上鳴のことなんか眼中になかったという。
それを知ったときのショックときたら・・・これを悲劇と言わずして、何と言うか。
―――でも、その女に上鳴がいいように使われたのも、仕方ないことだった。だって・・・アイツ、めちゃくちゃ可愛かったんだよ!男なら誰だって彼女にころっと騙されるはずだ。
とはいえ、上鳴とて学習能力はあるわけで。あの悲劇を味わった上鳴は、その心に 固く誓ったのだ。
金輪際、可愛らしい女子の見た目には騙されないぞ と。もう二度と、同じ轍を踏んでなるものか と。

ここで、今、上鳴の目の前にいる美少女に話を戻そう。
上鳴を振ったアイツと、少し雰囲気が似ている。同じような系統の顔ではある、が・・・アイツより、目の前の彼女のほうが断然カワイイ。
これだけ恵まれた容姿の彼女だ―――きっと、これまでの人生、まわりの人間にうんと甘やかされ、バカな男どもをたぶらかして・・・甘い汁を吸って生きてきたに違いない。そうとしか思えない。
この可愛さに騙されるな・・・騙されるな、上鳴電気!!


「(・・・いや でも、この子のこと、よく知りもせずに決めつけるのは、良くないよな・・・)」


教室の窓側にいた 目付きの悪い男子と知り合いらしく、何やら言葉を交わしている彼女を見やる。
あんな凶悪面の奴とも笑顔で応対できるのだから(少し顔が引きつってたようだけど)、やはり、彼女はそんなイヤな奴ではないのでは?と上鳴は考えを改める。
―――よし。まずは彼女が本当にイヤな奴かどうか、確認しよう!そう・・・一緒にメシでも食べながら!


「なあ、君 名前なんつーの?つか、今度メシ行こうぜ!何好きなん?」


互いを知るための、まず第一歩。上鳴は友好的な笑顔を浮かべて、彼女に明るく話しかけた。
しかし―――


「・・・」


返事が ない・・・どころか、何の反応も示さない。
なんだ?どうしたんだ?彼女の表情を見ようとのぞき込むと、彼女は、じっと何かに耐えるように目を瞑っていた。


「―――あのさぁ・・・」


直後、彼女が口を開いた。
なんだ!?俺、何かした!?焦った上鳴は思わず身構えるが・・・そんな上鳴には目もくれず、彼女は あの凶悪面の奴の前まで進み出ると、ドンッと鈍い音をたてて奴の机に手のひらを叩きつけた。


「・・・ッアア!?っにしやがんだテメェ!!」

「君のそういう他人を貶めるような態度、感心しないなと思って。気を付けた方がいいよ?」

「んだとコラ!!」


あろうことか、二人は・・・そのまま喧嘩をおっ始めたのだ。


「え、俺は・・・?無視?」


戸惑いがちに口を開く。
しかし、ヒートアップしていく彼らは、もはや二人の世界を築き上げており、上鳴の存在など忘れているようだ。
隣の席になった耳郎が「ドンマイ」と 上鳴に憐れむような視線をよこした。


「(なに、この不完全燃焼な感じ・・・)」


入学早々、あまりにぞんざいな仕打ちに、上鳴はドゥーンと沈んだ。
このとき、彼女の頭の中は爆豪への怒りでいっぱいで、そもそも上鳴に話しかけられたことに気づいていなかったのだが―――そうとは知らない上鳴は、釈然としない感情をもやもやと燻ぶらせる。
しかし、その後、担任の相澤が現れると入学式もガイダンスもすっ飛ばして個性把握テストを行う展開になり、上鳴の燻ぶる感情はそっと胸にしまうしかなかった。







「そういや身能のコスチューム、爆豪とも似てねえ?」


初めての戦闘訓練。その初戦となる爆豪たちの勝負をモニターで観戦していると、上鳴のすぐ傍にいた切島が、身能に気軽く話しかけた。


「そ、そう?」

「ああ、ぱっと見な!」


二人の会話を眺めながら、はたと思いつく。
この流れに便乗することで、上鳴も身能と話すことができるんじゃないか!?
出会い頭に彼女に無視をされてからというもの、まだ彼女と言葉を交わす機会がなかったが・・・今こそチャンスなのでは!?
前回は話しかけるタイミングが良くなかったかもしれない。でも、今回は大丈夫なはず。切島とは普通に話していたし。


「爆豪といえばよぉ、爆豪と身能の夢の対戦カード、今回は叶わなかったなー」


無意識のうち緊張でもしていたようで、抑揚のない低い声が出た。でも、そんなことはどうでもいい。
身能がちらりと上鳴を見たので、上鳴は期待を胸に、ごくりと唾をのんだ。
彼女が対抗意識を燃やす“爆豪”の名まで出したのだ。そりゃ、無反応なわけがない。
果たして彼女は、どう反応する?
まずは無難に、自己紹介から?あるいは真面目に、爆豪たちの勝負内容について意見を交えるか?ノリが良ければ、“いつのまに夢のカードなんて扱いになったの!?”なんてツッコミが飛んでくるかもしれない。


「・・・」


けれど彼女は、上鳴に対して何の返答もせず、ふいっと上鳴から視線をはずすと、嫌そうな顔でモニターを静かに見つめた。


「(・・・あれ?また 無視された・・・?俺、なんか嫌われるような事したっけ!?)」


このとき、“コスチュームが爆豪とペアルックっぽい”ことに気づかれたくない彼女が、爆豪の話題を避けていたことなど、上鳴は知らない。上鳴が彼女の態度を冷たいと捉えるのも、仕方ないことだった。
そうした連日の彼女の態度により、上鳴の胸中にしこりを残した結果が―――その日の放課後、カタチとして現れる。
戦闘訓練後にクラスで行った反省会が終わり、各々がまばらに帰宅し始めた頃、


「麗日、今度飯いかね?何好きなん」

「蛙吹は?何か好きなもんあるか?」

「おーい八百万、今度一緒にメシ食いにいかね?」


クラスの女子たちに声をかけていた上鳴(全敗だった)と身能の視線が、混じりあった。

―――身能は何好きなん?今度メシ行こうぜ!

そんな簡単な言葉が、上鳴の口から出てこなかった。
自分で思っていた以上に・・・身能と出会い頭、クラス全員の前で盛大にシカトされたショックは 根深かったようだ。
彼女にまた無視されたら?
そんな不安が頭をよぎり、上鳴は声を発することができなかったのである。
そして、じっと自分を見つめる彼女の視線から逃れるよう、くるりと背を向けると、上鳴はすごすごと自席へ戻っていった。





ある日、食堂で昼食をとっていると、突如 警報が鳴り響いた。速やかに避難しろとアナウンスが流れ、食堂にいた生徒たちは一気にパニック状態に陥る。
慌てふためき、押し合い圧し合いしている群衆に為すすべもない上鳴であったが、飯田の活躍により、どうにか事態が収束した。そのとき、


「不純異性交遊やぁー!!」


宙に浮いて、そう叫んだ麗日の視線の先を、なんだなんだと覗き見て、上鳴はくわっと目を見開いて固まった。


「(・・・くんずほぐれつ!)」


麗日の視線の先にいたのは、抱きあうように密着していた身能と、クラス屈指のイケメン実力者――轟だった。
それを見た上鳴は、なんだかガッカリしたような心地になり、ため息を吐いた。
やっぱり、身能も、アイツと同じだった。
所詮、女はイケメンにしか興味がない。イケメンとはいちゃラブするが、自分のようなフツメンにはこれっぽっちも興味を示さず、会話すらマトモにしない。
だから、言っただろ?身能の可愛い見た目に騙されてはいけない―――やはり彼女は 性格極悪、自分本位にずる賢く生きる 腹黒女なのだ。
同じクラスの爆豪は、その横暴ぶりに“クソを下水で煮込んだような性格”だと思ったが・・・だとするなら身能は、“クズを下水でフォンデュしたような性格”といったところか。
我ながらいい例えだと満足げに頷く上鳴。
彼の中で、身能強子という人間の印象を決定付けた瞬間であった。







「上鳴、アンタもしかしてさ・・・前に強子に無視されたこと、まだ根にもってんの?」


耳郎にそう問いかけられ、ギクリと固まる。
USJ事件、体育祭、職場体験といったイベントをこなしていき・・・雄英に入学してからだいぶ経ったが―――未だ上鳴は、身能に邪険に扱われたことを、根にもっていた。身能に対して事あるごとに、ちくりちくりと ちょっとした嫌味を吐いているのは、そういうワケである。
耳郎が呆れたような表情になり、深いため息をこぼした。


「・・・あの子、上鳴が思ってるほど、イヤな奴じゃないと思うよ」


諭すように告げられたそれに、ツキリと胸が傷む。


「・・・んなこと、」


そんなことは、とっくに知ってる。中間のクラス順位が最下位の上鳴だって、さすがに気がつく。
上鳴は無意識に自分の頭頂部を擦りながら、以前、飯田の前でヒーロー殺しをかっこいいなどと言ってしまった時のことを思い出していた。
憤った身能の手刀をくらった頭頂部は、頭が割れたと思うほどに、痛かった。
・・・こう言うと 陳腐な表現になるのだが、


「(友達思い、なんだよなぁ・・・アイツ)」


自分本位な奴だとは思うけど、友達や身内に対しては、案外優しいところがある。生意気な態度で大口を叩くけど、それに見合うだけの実力も持ち合わせている。
・・・上鳴が思っていたほど、性根が腐ってるわけではないのだと、これまでの彼女の行いから察しがつく。
そんな彼女の人となりを知ってか―――いつの間にか、彼女のまわりには 多くの者が集まるようになっていた。
入学当初は身能に良い印象をもっていなかった者――八百万や轟といった面々すら、気づいた時には、彼女に懐柔されていた。
他のクラスメイトたちも、みるみるうちに彼女の勢力に取り込まれていった。
でも―――上鳴は、今さら彼女に対する姿勢は変えられない。もう、今さら引っ込みがつかないのだ。
なにより、“友達思い”ならばこそ・・・上鳴にだけは冷たい身能に、怒りを覚えるってもんだろ。







「うひゃー!強子ちゃん、おっぱい おっきーい!」

「ちょ、コラ!そこの透明人間!やめなさいっ・・・!」


聞こえた途端―――温泉の中で 尾白と水をバシャバシャかけあって遊んでいた上鳴が、ピタリと動きを止めた。
笑顔を消し、真剣な表情になった上鳴は、浴場の淵に立ちそびえる 高い壁へと視線を向けた。
あの壁を越えた向こう側には、女湯がある。
A組の男女とも入浴時間は重なっているので、今、あの壁の向こうには うちのクラスの女子たちがいるはず。つまり・・・壁一枚はさんだ向こうで、一糸まとわぬ姿の彼女たちが戯れているというわけだ。


「わっ本当だ!やわらかくてマシュマロみたーい!」

「ん、ぁっ・・・ッちょっとォ!!」


身能のものと思われる、鼻にかかった悩ましげな声。
自然と、男湯にいる者たちは皆、口を閉ざしていた。
壁の向こうの音を聞き漏らすまいと、誰もが微動だにせず、息を殺すように湯につかっている。
頼れるのは、耳から入ってくる音の情報のみ・・・そこから、全想像力を総動員して、イメージするんだ―――柔らかでふっくらとした胸を 目には見えない透明な手で揉みしだかれている、身能の あられもない姿。
見えない手で蹂躙されて、身能は恥ずかしそうに、悔しそうに、赤らんだ顔を歪めて身をよじるが、さらに芦戸も加担し、二人がかりで嫌がる彼女を凌辱していく―――
壁の向こうで行われる、身能と葉隠や芦戸たちの攻防を想像するだけで、合宿の疲れなんか軽く吹っ飛ぶ。控えめに言って、至高のエロス。


「・・・確かに、身能の身体、やわらかかったな・・・」


唐突に、轟が爆弾を投下した。
その発言に、A組男子たちに動揺が走る。上鳴も反射的に声をあげる。


「え、轟と身能ってやっぱりそうなの!?」


身能に懐柔された轟は、体育祭以降は特に彼女にべったりな印象を受けたが・・・まさか、もうそこまでの関係に!?
男子全員が愕然とした表情で轟を凝視するが、しかし、轟のやつは「何がだ?」と首を傾げた。
トボけやがって!さっきの言葉から、轟が身能の身体を堪能したことは明らかだ。うらやまけしからん!俺だって触りてぇ!
というか本当に二人が付き合ってるなら、美男美女カップルじゃねーか!爆発しろ!いや、爆破されろ!クッソ羨ましい!俺だって、身能と付き合いてぇよ!


「(・・・って いやいや!ちょっと待て、俺!!)」


落ち着け。相手は身能だぞ。
いくらルックスが良くても、中身が・・・


「もうっ、やめてよ!!だいたい 私よりも百ちゃんの方が巨乳なんだし、そっちを揉めばいいじゃないっ」

「えっ?私ですの!?」


・・・ほらな。こういう奴なんだよ、身能は。
アイツは自分が一番かわいいから、自分への被害を防ぐためなら、平気で他人を差し出すんだよ。そういう姑息な奴なんだよ。


「壁が邪魔して、頼れるのは聴覚のみ。だからこそ、より想像力をかき立てられ、よりエロスを感じるんス・・・身能はそれをわかってて、オイラたちに“音”を通して“夢”を与えてるんだ・・・とんだエンターテイナーだぜ」


峰田だ。女湯との間にある高い壁にぴとりと張りつき、聞き耳を立てている。


「ホラ、目をとじれば、見えてくるんスよ。壁の向こうの 人跡未踏の理想郷が・・・湯けむりの先、戯れる女子たちの 上気して赤らんだ顔、濡れそぼった髪、そこから滴るしずくが 瑞々しい肌をつたって―――」


峰田の言葉に想像力がかき立てられて、上鳴の脳内ではよりリアルに、細部まで鮮明に、身能たちの艶かしい姿を思い描いて―――ごくりと生唾をのむ。
・・・いやいや、落ち着け。一旦、落ち着こう。冷静になれ。
ほら、まわりの男どもを見てみ?
皆、峰田に呆れた視線を向けながら、なんてことない様子で・・・って、あれ?意外にも皆、頬を紅潮させ、そわそわと落ち着かない様子だ。
つーか爆豪、お前も顔を赤くしてプルプル震えてるけど どうした?お前はクラスの女子に顔を赤らめるような器じゃないだろ・・・のぼせたかな?


「・・・ひゃあっ!?」


ふいに聞こえた身能の甲高い声に、つい意識を持っていかれる。 
とうとう我慢できなくなった峰田が壁を越えようと試みたが―――それは見張りをしていた洸汰によって防がれ、未遂に終わった。

風呂から上がると・・・身能にばったりと鉢合わせた。
赤くほてった顔、湿り気をおびた髪・・・普段とはどこか違うように見える、風呂あがりの身能に顔が熱くなる。慌てて彼女から視線をそらすと、そそくさとその場を立ち去る。
ダメだ・・・上鳴電気、わかってるだろ?人間の本質的な魅力は 内面なんだ。どんなに見た目がタイプだろうと、騙されるなよ。相手は身能だ。


「・・・いやぁでも、身能、顔だけはカワイイんだよなぁ・・・マジで。顔だけは」


本気のトーンで呟けば、隣にいた瀬呂が「拗らせてんなぁ」と、他人事のようにノンキに笑った。





突然の、ヴィラン連合の襲撃。
身能は、彼女にしてはめずらしく保身に走っていた。


「守られる側の 私たちみたいな弱者は・・・守ってくれる人の近くで、大人しく守られてるべきなんだ。“自分の身の安全を確保すること”が、今 私たちに出来る最大限なんだよ」


いつものような無鉄砲さは見られない。むしろ、クラスメイトを救けに行こうとする切島や飯田を施設に引き止める側だった。
真剣な表情で彼らを説得するその姿を見て、気づく。
彼女は、守ろうとしているのだ――切島や飯田、今この施設にいる者たちを。ヴィランに傷つけられないよう、殺されないようにと、守っていたんだ。

けれど、彼女の努力もむなしく、ヴィランが施設に乗り込んできて・・・上鳴たちがいた室内が一瞬で業火に埋め尽くされる。
炎によって身能一人が分断され、炎に包まれて見えなくなる―――その様をスローモーションで見ながら、上鳴たちはブラドキングの個性“操血”によって 強制的に屋外へ連れ出された。
その最中、炎の奥から聞こえた彼女の叫びが、耳について離れない。


「―――よくも、私の大事な人たちをっ!」


震えるほど、怒り狂った身能の声。あんな身能の声は初めて聞いた。
まず一番に上鳴が思ったことは・・・彼女は、“大事な人たち”のことを、そこまで大事にしているのだということ。
そして、その“大事な人たち”の中に、おそらく上鳴は含まれていないだろうということだった。

ヴィラン襲撃の一件が収束してから、ふと、身能のほうを見やる。
炎に包まれた彼女の身を危ぶんだが、しかし、彼女はきっちりヴィランを倒した後、燃えさかる施設から逃げおおせていた。
両腕に火傷を負ったものの 命に別状はないらしく、救助隊が来るまでの間、マンダレイの親戚――洸汰に火傷を冷やしてもらっていた。


「ヒーローも、ヴィランも!個性をひけらかして、バカだろ!個性なんか無けりゃ、こんな風に傷つけ合うことも、殺し合うこともないのに、なんで・・・」


身能と話していた洸汰が、急に声を張り上げた。
その言葉の内容に、上鳴はなんとなく息をひそめる。
個性を、超人社会を、そしてヒーローを否定するような子供に対して・・・自分ならば どう答えるだろうと逡巡する。
ただ、身能の言葉なら、洸汰の心に届くに違いないと、予感があった。不思議だけど、時おり彼女の言葉には、まるで大人が語っているかのような・・・妙な説得力が宿るのだ。
そして上鳴の予感した通り・・・彼女に頭を撫でられながら、静かに鼻をすすっている洸汰を見て、彼の中で何かが変わったのだと確信した。


「(俺には冷てぇし、自分勝手でイヤな奴なのに・・・結構いいトコ、あんだよなぁ)」


上鳴にとってはイヤな奴、だけど―――友達を守ろうと必死だったり、自分がぼろぼろに傷ついてでもヴィランを倒したり、幼い子供に明るい道を示したり・・・わりとマジメに、ヒーローやってんだよなあ。







『これって、偏向報道なんじゃないですか?捏造報道とも言えますかね?マスメディアってのは立法、行政、司法と並んで、“第4の権力”とまで呼ばれてるんですから・・・公正かつ中立な立場での報道をお願いしたいのですが』


―――前言撤回だ。
マスコミを煽る身能をテレビで見て、ぎょっと目を剥いた。
なんちゅう悪役っぷりだろうか・・・美人が怒ると恐いってのは本当だった。お前も、爆豪に負けず劣らず悪人面だぞ!?そのうえ、身能の ああ言えばこう言う性格、マスコミの嫌がるとこを的確に突いていく口撃・・・マスゴミとか言っちゃってるし。
これを機に、下水道みたいな彼女の性格が、世間に露呈してしまう。マスコミに暴かれて、彼女の化けの皮が剥がれ、ついに本性が現れてしまう・・・!


『私は・・・同じ ヒーローを目指す者として、アイツほど尊敬できる人を ほかに知りません!あの爆豪勝己が、ヴィランの支配下なんかに下るわけがない!』


身能の本性―――それを、“やっぱり友達思いじゃねーか”とか思ってしまう俺も・・・もう、身能に懐柔されてるのかもしれない。





ふと気がつくと、正面に向かい合うように身能がいて、彼女は目じりに涙をためるほど楽しげに笑いながら、上鳴を見ていた。


「(っえ 何この状況!?身能かわいすぎねえ!?)」


突然のことで少し錯乱しながら、状況を整理する。
確か、寮の前で相澤から説教されてクラスが暗いムードになったところで、上鳴は爆豪によって 無理やりアホ化させられて―――
そうか!アホ化している間、上鳴は意識が朦朧とするので覚えてないが・・・身能の前でウェイウェイやっていたわけか!
しかし、それって、無意識のうち・・・上鳴も知らない深層心理で、上鳴は 身能とのコミュニケーションを欲していたってことか?
そう思うと急激に恥ずかしくなったが、それでも、身能の天使のように可愛い笑顔から視線を外すのがもったいなくて、そのまま直視する。
きっと、彼女が心からの笑顔を上鳴に向けるのは、これが初めてだ。今まで一度も・・・アホ化して皆に笑われている時でさえも、彼女が上鳴個人を見て笑うことはなかったから。


「あっはははは・・・はぐぅっ!」


爆豪に頬を引っ張られて、身能から笑顔が消えた。
彼女は、上鳴から爆豪へと向き直ると、さっそく二人の世界を築き上げて・・・もう上鳴の存在など見えていないように二人で言い争っている。
凄まじい 既視感。ドゥーンと沈んでいると、爆豪がちらりと上鳴を見て、勝ち誇ったようにフンと鼻で嗤った。


「(・・・はっ!?爆豪、お前・・・そういうアレ!?)」


上鳴への、“牽制”と思わしき行動。
いつの間にか身能は、あの爆豪すらも懐柔していたらしい。信じられない。誰よりも身能と反発しあっていた、あの爆豪が!?
最後の砦だと思っていた爆豪までが身能に取り込まれたということは・・・身能に取り込まれていないのは、もう自分だけじゃないか!?
そのことに気がつくと、ある種の寂しさと、同時に、言いようのない焦燥感に襲われた。


「(俺は・・・このままで、いいのか・・・?)」


そして、入寮したその日―――我々A組は、身能の予想外な一面を目の当たりにする。


「実家にいたときと同じ装飾に、こだわりの配置・・・」


身能の部屋を見て、耳郎が呆然と呟いた。
皆の視線は、身能の勉強机に飾られた、20個の写真立てにくぎ付けだ。
上鳴は、端から7番目にある写真立てを見て、ぐわッと目を見開いた。


「(俺の写真がっ・・・ある!)」


その事実に驚きを禁じ得ない。
身能のやつ、上鳴のことなんて興味ないんじゃなかったのか?
それに、身能とツーショットを撮った覚えなどない上鳴だ。当然、その写真に写る上鳴の視線はカメラに向いていないし、身能もカメラ目線ではない。
おそらくこれは、校内販売されていた 体育祭の写真だろう。二人して別々の方向を見て、別々のことをしているが、たまたま二人が同じ写真に写った という感じの写真だ。上鳴はこんな写真を撮られてたなんて知らなかった。


「(あいつ・・・!好きな男子と一緒に写真を撮る勇気はないけど 偶然二人が写ってる写真を見つけて こっそり買っちゃうような、シャイな女子みてーな可愛いことしやがって!)」


なんだよコレ、ふざけんな!完全に男ウケ狙ってきてんだろコイツ!というより、上鳴をたぶらかそうとしてるとしか思えない。


「(可愛いが、過ぎるだろっ・・・!)」


くっ、と苦しげな表情で胸元に手をあてる。
相手は身能だというのに、いや、身能だからこそ・・・悔しいけど、キュンときた。
部屋王決定戦―――結果は、身能が18票獲得。参加者が19人なのだから、身能本人以外は全員が彼女に投票したことになるが・・・まあ、納得のいく結果である。






ところで・・・B組の物間といえば、病的なまでの、A組に対する嫉妬心と敵対心が有名だろう。それと同じくらい、物間は A組の身能に気があるらしいというのも、周知の事実であった。
ゆえに、A組 “部屋王”の部屋を物間に見せれば、いとも容易く 物間の減らず口を黙らせることができた。
身能がどれほど、(物間が嫌いな)A組を大好きかという現実を思い知らせれば、彼は面白いほどに意気消沈した。
ざまあみろ、さんざんA組男子の部屋をけなした お返しだ。物間に一矢報いてやったぞ、と喜んだのも 束の間―――

身能の手作りシフォンケーキをもっちゃもっちゃと美味しそうに頬張る物間を見て、ヒクリと顔が引きつった。


「(納得いかねえ・・・!)」


同じクラスの上鳴だってまだ、身能の手作りケーキを食べたことがないのに!
なんでB組の、よりによって 物間が食べてんだ!?身能、お前のA組愛はどうしたよ!A組を優先して然るべきだろうよ!
しかも「あーん」なんてしちゃって・・・そんなん、美味いに決まってんだろ!くそ、物間のニヤけ顔が腹立つぜ。
それに、拳藤も。身能に「あーん」してもらって幸せそうに頬を弛ませているけど・・・拳藤って、そんな感じだったっけ?お前、うちの身能よりスクールカースト上位だろ!?腑抜けてないでしっかりしてくれよ!
それから・・・悦びに浸る二人を見ていた身能が「はっはーん」みたいな顔してるけど、お前それ、絶対なんか勘違いしてるからな!


「(いや、冷静になれよ、俺!何をそんなにイラついてんだ)」


そうカッカすることもないだろう。
上鳴がケーキを食べてないのには、理由がある。なにも身能も、意地悪で上鳴にくれなかったわけではない。
実は、前日の夜も、身能はケーキを焼いて、クラスの皆に配ろうとした。当然、上鳴も食べられるはずだった。だった、のだが・・・皆に配る前に、爆豪がケーキを奪いとり、全て食べ尽くしたのだ。
まったく、ひでぇことしやがる!別に甘いものが好きなわけでもないだろうに―――あいつ、思った以上に 必死なんだな。
ちなみに、この件で身能は爆豪に相当な勢いでブチ切れて、その怒鳴り声は5階まで響いてたっつー話だ。
だから今日は、爆豪が風呂に入っている時間帯を狙ってケーキを焼いたようだが、時間が限られるので、男子の分までは作れなかったという。
よって・・・上鳴は身能のケーキをまだ食べてないし、八百万の高級紅茶も淹れてもらってない。


「・・・なんか、おかしくねぇ?」


冷静に考えたところで、ケーキと紅茶を嗜むB組にやっぱりイラついて、A組の面々と和やかに談笑しているところに、水を差す。
すると、物間が全力で絡み返してきて・・・なりゆきで、海賊が危機一髪的なオモチャで勝負をすることになった。

A組の参戦メンバーは、上鳴と尾白と葉隠と、残る一人はもちろん身能だ。
考えてみりゃ、身能が戦いの火種とも言えなくないので、当然の人選のはず。


「かのアングラ系ヒーロー、イレイザーヘッドに“強運の持ち主”とまで言わせしめたこの私、身能強子の実力を見せてやる!」


ものは言いようだな。とにかくこれで役者は揃い、いよいよ勝負がはじまった。
しかし、この女―――本当に“強運の持ち主”なのか?


「ちょっ・・・強子?大丈夫?」


罰ゲーム一発目、水風船。
びしょ濡れになった身能を気の毒に思いながら見やり・・・カッと目を見開いた。
水で湿った彼女のTシャツの下、彼女の身につける下着がうっすらと・・・!
すぐに八百万がタオルを創造して肩にかけたので見えなくなったが・・・今見えたものは青春の思い出として、大切にしまっておこう。
身能は不機嫌そうにオモチャの樽を睨みながら、目にかかる邪魔な髪をかき上げてフンと鼻を鳴らした。


「何ともない・・・さっさと次、いこう」


水も滴る、イイ女―――美人ってのは、どんな顔をしてたってサマになるから得だよな。
いつもとはまた違う クールで大人っぽい雰囲気の身能に、拳藤が「ふわ〜」と陶酔したように息をこぼした。これがコミックなら、彼女の目はハートになっていただろう・・・拳藤って、そっち系の人なの?
あと物間、お前はさっさと鼻血を拭けよ・・・と思っていたら、物間が二巡目の罰ゲームで、ド派手に頬ビンタを食らっていたので、笑ってやった。

そして身能の二巡目の罰ゲームは、顔面パイ投げ。身能の顔に白いクリームがべっとりと付く。


「(なんか、エロいな・・・)」


口まわりについたクリームを 赤い舌でぺろりと器用に舐めとると「あんまり美味しくないね・・・」って!身能っ、お前ってやつはぁ!(歓喜)
・・・とか思っていたら、上鳴の次の罰ゲームでは、頭上から金ダライが降ってきて、反省した。

三巡目のくすぐりの刑では、笑ってんのか鳴いてんのかわかんないような声で「やだ、もうやめて!」とか「そこダメぇ!」とか・・・もうエロい目線でしか見れねーよ。
「誰か助けてー!」と叫んだ身能を助けようとして、自分もくすぐられる羽目になった拳藤は、思ってたより、バカなのかもしれない。

そのあとクソ苦いお茶を飲まされ、「にがーい」と言いながら両手で口元を押さえる身能は、やはりエロ可愛い。
でも、困り顔で涙目になってる彼女は、純粋に、可愛い。

そうして、彼女に見惚れる者たちは、自分の順番がくると 容赦ない罰ゲームによって現実に引き戻される―――そんな過酷なループ。
我々の真の敵はB組にあらず、罰ゲームへの恐怖と、そして 己の煩悩でもあるということか。
発目の作ったというこのオモチャは ただのオモチャにとどまらず、実に奥深い発明品であった。





もう―――我慢の限界だった。
ただでさえ、身能への認識がブレはじめていたところに・・・自分を残して、クラスメイト全員が身能に取り込まれてしまった。
さらに寮生活が始まってから、必然的に彼女との距離感が縮まり、日々、にじみ出る彼女の可愛らしさがあらわになっていく。なにげない日常生活の端々、ふとした瞬間にも、その美少女っぷりを思い知らされる。
なんせ身能は、朝の“おはよう”から夜の“おやすみ”まで、24時間体制で、一秒たりとも隙がなく、可愛すぎるのだ。
こんなのもう、我慢の限界だ。耐えられるはずがない。もう、敗北を認める言葉が、喉元まで出かかっていた。


「・・・悪かったな」


喉元にいたはずの言葉が、とうとう、震える声で発せられた。
もっと、シチュエーションやら言葉やらを選べれば良かったんだが・・・そんな悠長なことを言ってられない。
何でもいいから早く、身能との微妙な関係を解消したかった。
上鳴だってA組の一員なんだ。他の皆みたく、身能と心を通わせて、彼女と信頼しあえる関係になりたい。ちゃんと、身能のクラスメイト(仲間)でありたいんだ。


「俺、今までお前に、態度わるかったろ?だから・・・まぁ、その・・・ごめん」


彼女は悩むような仕草を見せたあと、理由を訊いてきたので、上鳴は恥をかき捨てて正直に話す。
過去にこっぴどく振られたこと、そのせいで 可愛い子ほど性格極悪だと思っていたこと。
その思い込みがあったから、入学当初、上鳴は身能の人間性を誤解してしまったというわけで・・・


「私、何も悪いこと してなくない?」

「(っ、そういうトコだよ!)」


身能の言葉に、ぐっと歯を食いしばる。
彼女に悪気はないんだろうけど・・・自分はまったく悪くないと思い込んだあげく、責任転嫁した相手をしれっと非難する―――そういうトコがあるから、イヤな奴だと思われるんだろ!?
正直を通り越して“あけすけ”というか、ユニークを通り越して“アクが強い”というか・・・たまにそういう近寄りがたさが、彼女の内に垣間見える。
誤解をしていたのは上鳴だが、誤解を招くような言動を見せた身能にも、多少なりとも非はあるよなぁ!?


「でも、上鳴くんは私に辛辣だったよね・・・下らない“偏見”のせいで。“八つ当たり”なのか知らないけど、おかげで私は“謂われのない”誹謗、中傷を受けて・・・」

「だぁーっもう!悪かった、悪かったってェ!!お前がイヤな奴だと思い込んでた 俺が間違ってたよ!全部俺が悪い!!」


水を得た魚のごとく、ネチネチと上鳴への非難を止めない身能に(物間か、お前は!)、なかばヤケになって謝り倒す。
確かに、辛辣な態度をとったのは俺だけど!そりゃ悪いのは俺だけど!
こいつもしかして、俺を許す気なんかまるでないんじゃないか・・・?そう不安になったところで、


「いいよ」


彼女の口から、優しい声音で告げられハッと目を見開く。身能は呆れたような笑みを浮かべて、もう水に流そうと言う。
彼女に対して色々と悩み、葛藤していたのがバカらしくなるくらいに、あっけない決着であった。


「人間ってのは・・・誤解と理解をくり返すことで、互いにわかり合える生き物だと思うんだよね」


何やら悟ったような彼女の言葉の意味を考えて、はたと思い至る。
ああ、そうだった・・・彼女と親しい 八百万や轟をはじめ、クラスの大半のやつが、最初は身能という人間を誤解して距離をとっていたじゃないか。
初日の朝から、爆豪と喧嘩する彼女を見て、その怒った怖い顔を見て、“補欠”という肩書きを見て―――断片的な情報から、彼女の人間性を勝手に決めつけていた。
皆が、そうだった。


「・・・断片的な情報だけで決めつけんのは良くないっつーことか」


上鳴も、そうだった。
最初、身能に無視されたと思っていたけど・・・直情型の彼女は、あのとき 上鳴に気がついてなかっただけなんじゃないか?
戦闘訓練の観戦中、彼女が集中してるところに声をかけたから、上鳴は彼女の邪魔をしちゃったんじゃないか?
俺は、大事なことを見落としたまま、偏った見方をして―――自分だけ被害者面して、相手が悪いと思い込んでたんじゃないのか?


「(・・・そういえば、)」


かつて、自分を振ったアイツ―――彼氏がいるとは知らずにアピールしまくってたけど、記憶を探ると・・・彼女はいつも、自分に何か言いたげな表情をしていた気がする。
もしかして、彼氏がいるって言おうとしてたのに、上鳴は自分をアピールするのに必死で、聞いてなかっただけでは?
モノを貢いだ時も、買ってくれとねだられたわけではなかったはずだ。勉強を教えたり、宿題を手伝ったのも・・・喜んでもらえると思って、自ら率先してやったことだ。
上鳴は、彼女に騙されてたのではなく、勝手に舞い上がってただけに過ぎない。なのに、あの子のせいにするのは、間違ってるよな。
今思うと、あの子には悪いことをしてしまったかもしれない。


「(俺がもっと、相手の気持ちとか事情をわかってあげられる奴なら・・・何か、違ったかもしれないな)」

「うん。でもさ・・・」


俯いていたところに、身能の顔がニュッと現れて、上鳴の思考が停止した。


「私たち、こうして“誤解”と“理解”を乗り越えたんだから・・・最初から なんとなく仲良くなるよりも、もっとずっと仲良しになれるよね!」


目の前で、身能が自分だけに向けて にっこりと笑っている。
ああ・・・身能と上鳴の微妙な関係は解消されたんだ。これからの二人は 手を取り合っていける、そんな未来を確信させるような笑顔だった。
上鳴は、本当は、入学初日からずっと―――彼女のこの笑顔を見たかったのだ。長い月日を経て、ようやく見られたその笑顔を拝み・・・感動にそっと胸を震わせた。
そして、そんな上鳴の気持ちやら事情を知らない身能が、拗ねるように唇を尖らせて(めちゃくちゃ可愛い)言葉を続けた。


「まあ、本当は・・・私は 最初から上鳴くんと仲良くなりたかったんだけどねー」

「っ!」


うっせバーカ!そりゃ、こっちのセリフだっつーの!!










==========

―――自分だけ被害者面して、相手が悪いと思い込んでいたんじゃないのか?

そのセリフ、夢主に言ってあげてー、上鳴くん!
夢主は自分が気づかないところで、他者(上鳴)を傷つけていて・・・そして傷つけられた人は、その遺恨のせいで夢主が傷つくような態度をとっていた、と。
ヒーロー志望とはいえ人間ですから。そういうこともあります。
傷つけた本人ってのは、無自覚なことが多いですよね、自分も含めて。よくあることだけど、全く、やんなっちゃう。そうやって人は学んでいくのでしょう。

それと、上鳴の恋愛遍歴を勝手に捏造してごめんなさい。しかもフラれちゃってますし。
まあ、公式でチャラい設定なんで、失恋くらい過去に何度でもしているでしょう、彼は!



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