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「これから後期始業まで・・・残り十日あまりの夏休みは、“個性”を伸ばしつつ必殺技を編み出す――圧縮訓練となる!」


仮免取得試験に先立ち、A組は セメントスが考案したというトレーニングの台所ランド(通称TDL)に集まっていた。
そこで我々に課せられたのは、一人最低でも2つの必殺技を作るというノルマだ。
相澤から「プルスウルトラの精神で乗り越えろ」と鼓舞されたあと、各員、セメントスに用意されたトレーニング場所へと移り、エクトプラズムの分身と向かい合う。


「では、いきます・・・感覚強化(センスビヨンド)――聴覚強化(リスニング)!」


早速、今まで密かに温めていた必殺技をエクトプラズムに披露してみせる。強子の耳に、20人の生徒と 20人のエクトプラズムの分身との対話が聞こえてくる。


「フム・・・聴覚ノ強化ダナ。救ケヲ求メル者ノ声ヲ聞キ逃サヌタメカ、或イハ、己ノ倒スベキ敵ノ居場所ヲ探ルカ・・・」


エクトプラズムは一つ頷くと、他にもあるのかと強子に訊ねた。
当然、あるさ!強子はこのクラスの誰よりも、やれることが多いんだから!


「それじゃあ 次は・・・嗅覚強化(スニッフィング)!」

「フム・・・嗅覚ノ強化カ。鍛エレバ、ハウンドドッグ同様、匂イカラ 犯人ノ特定ヤ追跡ガ可能ダロウ」


エクトプラズムは再び頷くと、悩むような仕草を見せた。


「イズレモ有用ナ技デハアルガ・・・“必殺技”ト呼ブニハ、些カ 弱イナ」

「えぇ!?これ、必殺技じゃ駄目なんですか!?有用なのに!」


エクトプラズムに申し立てていると、強子の目の前にゴッ!と何か大きなものが降ってきた。
降ってきたそれは、トレーニング場を形成する地面と同じ物質で、教壇くらいの大きさがあるだろうか――そんなものが強子の足元に落ちたかと思えば、ワンバウンドして、強子のスネに当たった。弁慶の泣き所だ・・・涙が滲むほどの激痛である。
痛みに悶える強子の頭上には、強子より足場の高いところでトレーニングをする爆豪がいたはず。おそらく、彼の爆破によってトレーニング場が破壊され、強子のほうに破片が飛んできたのだろう。


「爆豪くん はりきってる!」

「あいつもう、技のビジョンたくさんあるんだろうな」

「入学時から技名つけてたもんね!」


周りの皆が見入るほど、爆豪は凄まじい気迫で訓練に励んでいる。
けれど、破片を飛ばしてきたことに文句の一つでも言ってやらねばと強子が彼を見上げると・・・爆豪と、目があった。
余裕のない、必死な表情。もっと力をつけようと、さらに強くなろうと・・・闘志をメラメラと燃やす彼の瞳は、強子が思わず気圧されそうになるほどだ。
しかし、彼はすぐにふいっと目を逸らすと、もうこちらに目もくれず、再び訓練に集中する。


「(・・・ああ、そうだ―――強く、ならなきゃ)」


神野区の一件のあと、強子もそう、心から望んだじゃないか。
そして、強くなるにどうすべきなのか・・・強子は知っている。雄英で何度も言われてきたことだ。


「っ・・・プルス、ウルトラァッ!!」


両足を踏ん張り、グッと両手で拳を握り、そう叫んで気合いを入れれば、


「「「プルスウルトラー!!」」」


強子に続くよう、周りにいた皆も気合いを入れ直した。
必殺技案のダメ出しにも、破片が飛んできたことにも、文句を言ってるヒマはなかった。そんなヒマがあるなら、もっと強くなるための努力をすべきなんだ。
強くなりたいと望んでいるのは、爆豪だけじゃない、強子だけでもない・・・皆、後れをとるわけにはいかないのだから!










そんな感じで圧縮訓練をこなす日々の、とある夜のこと。


「できたよー!砂藤くん監修のもとで作った、レモンシフォンケーキぃ!」

「「「わぁーい!!」」」


1階の談話スペースで寛ぐ女子6人が、強子の手元にあるケーキを見て笑顔を綻ばせた。優しい黄色の柔らかそうなケーキには、ほわっほわのホイップクリームが添えられている。


「身能は手際がいいからよ、ケーキが上手く焼けてるぜ!あ、クリームには蜂蜜入れてみたんだ。みんな、訓練で疲れてるかと思ってよォ」


そう言う砂藤は、男子ひとりがクラスの女子たちに囲まれているという状況に、強子の後ろで照れたような仕草を見せている。
部屋王決定戦の際に、美味しいシフォンケーキをふるまった砂藤。その腕前を見込んだ強子が、彼にスイーツ作りを教えてほしいと頼み込んだのだ。
そうして彼に弟子入りした強子は、日々 彼の指導を受けて、着実にスイーツ作りの腕をあげていた。


「(女子力は 高いに越したことないもんね!)」


強子はケーキを8つに切り分け、女子6人と師匠である砂藤の7人に配る。その間に、八百万が高級な茶葉を使って 紅茶を淹れてくれた。
そうして美味しそうなケーキと紅茶のセットが出来上がると、さっそく女子たちはフォークを手に取り、ケーキにかぶりついた。


「「「おいし〜!!」」」


ケーキを頬張り、幸せそうに破顔した彼女たちを見て、強子も笑みをこぼす。
強子も自分用のケーキを食べようとフォークを手にすると同時・・・男子棟の方から、何人かがぞろぞろと1階の共同スペースへ降りてきた。


「―――本当に毎度、物間がごめんな」

「ちょっと拳藤、邪魔しないでよ・・・せっかくどこかボロが出ないか偵察してたのに」

「おい、さっきは視察って言ったろ!」


現れたのは、B組の拳藤と物間に、鉄哲と、大きな角の生えた外国人の 角取ポニーもいる。その4人の後ろに、不機嫌そうな上鳴と尾白、そして困惑気味な緑谷もいた。
話を聞くと どうやら、A組とB組の寮に差がないか確認しようと物間が“視察”に来たので、仕方なく 上鳴たちが寮の男子棟の部屋まで案内していたらしい。残るB組3人は、A組に向かった物間を止めるべく追ってきたのだそうで・・・ご苦労なこった。


「まあ、A組の部屋は どこも想像の範疇を超えなかったよ」

「こいつ、さんざん人の部屋をけなしやがってぇ・・・・・・あ、」

「?」


むすっとしていた上鳴が、談話スペースにいる強子を視界にいれた途端、動きを止めた。そして、何やらひらめいたようで、ニヤリと口元を歪める。


「ちょっと待てよ 物間・・・まだ、A組のベストセンス部屋を見てないだろ。うちの“部屋王”の部屋を見ずして、A組の寮の 何を語れるってんだ?」


八百万の淹れた紅茶に口をつけていた強子は、上鳴の言葉を聞き、ブッと紅茶を吹き出した。


「はァ?“部屋王”?ふん、どうせ他と大差ないだろ?」

「物間!いい加減にしろって!もうこれ以上A組に迷惑をかけるわけにはっ・・・」

「A組の“部屋王”――身能の私室は・・・すげーぞ?」


自信に満ちた様子で告げる上鳴を、強子は口元の紅茶を拭いながら、目をつり上げて睨む。
上鳴め・・・物間にけなされた苛立ちを発散させるため、強子を物間被害の道ずれにしようってか!?


「よし、見に行こう!」

「・・・物間の見張りとして、私も行く」


もう帰ろうという雰囲気になっていたはずの物間と拳藤の二人が・・・なぜか、急に乗り気だ。
どういうわけか止めてくれる人はA組にもB組にもおらず、当然のように強子の部屋を見に行く流れになってしまった。


「なんでこんなことに・・・?」

「まぁまぁ・・・“部屋王”なんだし、いいだろ?」


へらへらと笑う上鳴にイラッとしながら、物間たちを強子の部屋まで案内すると―――やはりと言うか、A組の皆と同じように、強子の机に飾ってある写真に目をとめ、フリーズした。


「どうよ!A組(うち)の“部屋王”は!?」


どうよ と言われても、どうってことないだろうよ と思ったのだが―――物間はカクリと崩れて膝立ちになり、拳藤は震える両手で顔を覆った。
え、何それ、どういう反応?無言で、ただ悲壮感を漂わせる二人に、強子は困惑する。
そして鉄哲と角取の二人は、ほっこりした表情で強子を見ていて、そんな反応も気にくわない。
でも・・・何より癪にさわるのは、物間たちをドヤ顔で見ている上鳴だ。なんでお前が、そんな偉そうなんだよ!







「あ、あの・・・私がブレンドしたお紅茶ですわ。よろしかったら、どうぞ」


1階の談話スペースに戻ってくると、八百万が気遣わしげに紅茶を運んできた。
物間も拳藤も、強子の部屋を見たあとはズーンと落ち込んでおり(何故?)、その哀愁っぷりは、八百万が思わず高級紅茶をふるまってしまうくらいだ。
談話スペースにいる誰もが、この重たい空気にあてられて、固い表情で黙りを決めている。


「なにか、お茶うけにお菓子でもあれば良かったのですけど・・・」


己の力不足を悔いるように、頬に手を添えた八百万が呟く。それを聞いた強子は、はたと思いつく。


「あ、じゃあ・・・ケーキ食べる?さっき焼いたやつ、まだ残ってるから」


強子の分のケーキはこれから食べようと思っていたので、まだ一切れだけ残っている。
それをフォークで半分に切り分けると、片方のケーキにフォークを差し、物間の眼前に差し出した。


「自信作だよ!よろしかったら、どーぞ!」


理由はわからないけど、彼らが落ち込んだ原因は強子の部屋のようだし、お詫びにケーキを進呈しよう。
物間はぱあっと嬉しそうに笑顔になると、寸分の迷いもなく、強子の差し出したケーキにパクリと食らいついた。餌付け、成功である。
ついで、もう片方のケーキをフォークに刺すと、今度は拳藤に差し出す。
彼女は強子の行動に驚いたように体を仰け反らせると、あわあわと戸惑っていたのだが、


「はい、あーん」


ずいっと拳藤の口元に向けてケーキを押し出すと、彼女はごくりと唾を飲み、覚悟を決めたような表情になって・・・緊張で口を震わせながら ケーキにかぶりついた。
もっちゃもっちゃと 頬を膨らませてケーキを味わう二人は、幸せそうに目元も口角もゆるゆるにしており、機嫌はすっかり良くなったらしい。
ふと強子は、二人の頬が血色よく赤らんでいることに気づく。


「(はっはーん・・・)」


ニヤっと口元を歪めると、悪戯心に火のついた強子が口を開く。


「二人とも・・・間接キスだね!」

「「ブッ!」」


同時にむせこんだ二人を見て、強子が可笑しそうにケタケタと笑った。
同じフォークでケーキを食べた物間と拳藤・・・二人とも、間接キスくらいでそんな嬉しそうにしちゃって、かわいいなぁ。
強子がそんな下らないことで笑っていれば、重苦しかった場の空気が、次第に和やかなものへと変わり、皆の緊張もほぐれてくる。


「ねえねえ、角取さんの部屋ってどんな感じなの?」


葉隠も肩の力がぬけたようで、気になっていたことを口にした。


「ワタシの部屋・・・コンナ感じデス」


少し恥ずかしそうにしながらも、角取が携帯の画面を見せた。
それを皮ぎりに、B組の面々が彼らの部屋の様子を教えてくれる。
角取は日本のアニメが好きらしく、アニメのポスターやらフィギュアがところ狭しと部屋に飾られていた。
拳藤は、木とスチールの家具で クールにコーディネートされたボーイッシュな部屋。
鉄哲の部屋は切島のと似ているが、鉄哲の部屋ではカーテンを金属製にして、カーテンの開け閉めもトレーニングの一環にしているらしい。
そして物間は・・・文句のつけようがない、フレンチスタイルの超お洒落な部屋だった。


「えっ、可愛い!」

「まぁ、こういう部屋もステキですわね」


A組とB組が微笑ましい交流をする中―――まだ、釈然としない様子の男がいた。


「なんか、おかしくねぇ?」


上鳴だ。


「勝手に来て、人の部屋けなして、ケーキ食って談笑したら帰る・・・?ずいぶんやりたい放題じゃねーか。このまますんなり帰れると思うなよ・・・なあ尾白」

「あー・・・うん、言われっぱなしなのはちょっとね・・・」

「いやいや僕はけなしたんじゃないよ、見たままを言っただけだけど?」


物間の言い分に、上鳴も尾白もひくりと頬の筋肉が引きつった。(緑谷も静かに落ち込んだ)
ナチュラルにけなされ、貶められたとなっては尚のこと・・・このままでは気が収まらない。プライドを傷つけられた男子たちは手負いの獣だ。
物間はA組のほうから絡まれるという珍しい状況を理解すると、即座に全力で絡み返した。


「えええ!?それじゃあどうするの!?帰さないって言ったからには、何かあるんだろうねぇ!?勝負!?勝負する!?どっちが上か はっきり決めちゃううう!?」

「(この人の A組に対する並々ならぬ対抗心はどこから来るんだろう・・・?)」


普段こっちからしか絡まない相手が絡んできたのだ・・・可愛さ余って憎さ百倍ならぬ、憎さ余って可愛さ百倍な気分なのだろう。
拳藤や飯田が、この妙ななりゆきを止めようと試みるも、物間たちを止めることはかなわなかった。


「それより何で勝負するのさ!なんでも受けて立つけどね!」

「えっ・・・えっと、どうする?」


勝負を挑んだ側も、受けて立った側も、どちらも勝負の内容は考えてなかった。アレは駄目だ、コレも駄目だと話し合いがヒートアップしていく中―――事のなりゆきを皆と見ていた轟が、「あ」と思い出したような声をあげた。


「どうしたの、轟くん」

「勝負が決まりゃいいんなら、いいもんがある」







轟が自室から持ってきたのは、樽を模したおもちゃだった。
樽に空いているいくつもの穴の中の一つだけが、樽の中央から頭だけを出している海賊を飛び出させる仕組みで、順番に剣を穴に刺していき、その一つに刺した人の負けになるのだ。


「おー、海賊が危機一髪的なヤツだ!」

「轟さん、意外なものをお持ちなのですね」

「もらった」

「でも、こんなに大きかったっけ?」


通常は、片手で掴めるくらいのサイズのはずだが・・・目の前にあるのは、バケツくらい大きさだ。


「デラックス版だろ、デラックス版!もうこれでいいんじゃね!?」

「そうだね、A組とB組、どちらに時の運が味方するのか・・・勝負しようじゃないか!!」


A組とB組一人ずつ交互に剣を刺していき、海賊を飛び出させた組が負けというルールだ。B組は男女二人ずつなので、公平を期してA組からも男女二人ずつ選出する。
当然、部屋をけなされて不満だった上鳴と尾白の参加は確定だ。面白そうだからやりたいと真っ先に手をあげた葉隠も納得のいく人選である。
では、残る一人をどうするかと言ったところで・・・ポン、と強子の肩に手を置かれた。


「残る一人は、身能だ!」

「なんで、私!?」


上鳴の横暴な人選に抗議する強子。上鳴のやつ、強子相手なら迷惑かけても構わないとか思ってるんじゃないだろうな!?
それにしても―――嫌な予感に、強子は眉を寄せた。
勝負とはいえ、ただのオモチャ。何もビビることはない、はずなのに・・・強子のカンが告げている。このオモチャは、“危険”だと。


「じゃ、僕からいくよ。B組の勝利への一刺し目だ!」


じゃんけんで先行を勝ち取った物間が、樽の穴に剣を刺す。カチッと音がしたかと思った次の瞬間―――

ビリビリビリ・・・ッ!

電流が物間の体に流れた。
声にならない悲鳴をあげ、テーブルに突っ伏す物間。突然のことにいったい何が起こったのかわからず、みんな唖然とするしかない。
電流といっても、上鳴の仕業ではなく、間違いなくオモチャの樽から出ていた。
つまり、物間の負けか?いやでも、負けの証の海賊人形は、まだ樽に入ったままだ。ワケがわからない。


「説明書を見ればわかるんじゃないかな?轟くん、説明書は・・・」


緑谷が轟に話しかけるも、轟は「ない」と簡素に返す。だがその顔には、多少の動揺があった。


「それ、サポート科の奴からもらったんだ。たしか発目とかいう名前の。自分で作ったヤツで、やったら感想教えてくれって・・・」

「「「・・・えええ〜!?」」」


発目のサポートアイテムの被害にあったことのある緑谷や飯田たち、そして、彼女のぶっ飛び具合を原作を読んで知っている強子も、思わず叫ぶ。


「ねえ、やめておいた方がいいんじゃないかな?発目さんのことだから、いろいろ仕込んでそうな気がするし・・・」


緑谷がおずおずと提案してきたので、強子も頷いて同意する。 


「うん。ケガでもして、明日の訓練に響いても嫌だしね」

「ええ、そうですわ!」

「何かあってからでは遅いぞ!」


八百万と飯田も全力で同意する。


「そうだね、身能さんたちの言うとおり、わざわざ危ない目にあうこともないだろうし・・・勝負はいったん休止ってことで・・・」


拳藤がそう言いかけたとき、物間が「ハァァア!?」と声を挟む。


「冗談だろ、こんなのちっともなんともないんだけど・・・!?」

「いや、けっこうダメージ受けてたろ」


物間はボサボサの乱れた髪を手で直しながら、上鳴を粘りつくような半眼で見据えて言った。


「―――逃げるんだ?」

「!」

「こんなおもちゃのゲームからも逃げるんだ、A組はぁ!?ごめんねぇ!弱いA組に勝負なんか持ちかけてさ、受けたはいいけど内心ぶるぶる震えてたんだよねぇ!?」

「んなわけねーだろ!ゲーム続行だよ!!」


わかりやすい挑発の大安売りをどーんと買ってしまった上鳴に、ため息がもれる。
物間も、自分だけ被害にあって ハイおしまいとは到底納得できないのだろう。痛みよりプライド。そして死なばもろともなのだ。
尾白は物間の感電ですっかり冷静になっていたが、上鳴のやる気に水を差すのも躊躇われ、結局は勝負に付き合うことにした。


「でも、葉隠さんと身能さんは、無理しなくても・・・」

「なーに言ってんの、尾白くん!こうなりゃ最後までつき合うよ!」

「葉隠ェ・・・」


ノリのいい葉隠に、上鳴が感激して目を潤ませた。そして、ちらりと強子の様子を窺う。
強子はふぅと息を吐き出すと、樽の置いてあるテーブルへ近づき、椅子に座った。


「ただのオモチャの 運任せなゲームとはいえ、これは勝負でしょ?なら・・・負けるわけにはいかないよね―――かのアングラ系ヒーロー、イレイザーヘッドに“強運の持ち主”とまで言わせしめたこの私、身能強子の実力を見せてやる!」


強子たちに続いてB組の女子二人も参加の意思を見せ、参加者8人全員が席に着くと・・・ついに、勝負が始まった。
さっそく上鳴が剣を持って、樽の穴に突き刺す。電流に耐性のある上鳴は、多少の電流ならどんとこいと思っていたのだが―――予想していた電流はやってこなかった。
かわりに、突如 樽の一部が変形し、上鳴の腕を拘束して、

ペシィッ!!

拘束された腕に二本の指をかたどったものが、思いきり振り下ろされた。


「ってええ!?」


痛みに叫ぶ上鳴。唖然とする皆の前で、樽はウィィンと元の樽の形に戻っていく。


「今のって、シッペだよな・・・?」


そう言う砂藤。緑谷が考えこみ、ブツブツと呟き出した。


「電流、シッペ・・・この二つの共通点は罰ゲームでよく使われるということ。やっぱり発目さんは剣が刺さるごとに 何らかの定番罰ゲームを仕掛けたということか・・・あの発目さんが二種類くらいの罰ゲームで満足するとは考えにくいし、この穴全部、違うものなのかも・・・」

「この穴全部 違う罰ゲームなのかよ!?」

「だからこんなに大きかったのか」


上鳴が思わず泣きごとをもらす横で、尾白は妙に納得しながら樽を見つめる。
しかし、だからといって今さらやめられない。次は鉄哲だ。


「かかってこい、罰ゲーム!おりゃあ!」


樽から長い棒が飛び出し、幅広のゴムを鉄哲の正面で グーンと後ろへ引っ張り、

バチーンッ!!

すぐさま外れたゴムが勢いよく鉄哲の顔にヒットした。いわゆるゴムパッチンだ。
痛そうな音に、思わず顔を押さえる強子だったが・・・鉄哲本人には何のダメージもない。当たる直前に、個性の“スティール”で顔を固くさせたのだ。なるほど、いい個性の使い方だ。


「じゃあ次は俺だね・・・」


尾白が恐るおそる剣を刺すと、ウィーンと棒が出てくる。先についているのは、ガムテープだ。
棒が尾白に近づいたかと思うと、前に出しておた尾白の尻尾の先にそのガムテをつけた。

ベリベリィッ!!

べっとりとついたガムテが一気にはがされ、尾白は尻尾を抱えて身悶えする。
ガムテープによる、すね毛はがし・・・すねでも脅威なのだが、尻尾という未知の器官とくれば、その威力は計り知れない。


「それじゃあ、次は・・・」


男子のターンが終わり、いよいよ女子のターン。
拳藤が剣を刺すと、プシュッと彼女の顔に向けて何かが発射された。


「?・・・臭っ!!!」


かつて嗅いだことのないほどの悪臭に、拳藤が顔を思いっきりしかめる。臭いから逃れたい一心でとっさに“大拳”を出し、ブンブンと振る。
あたりに広まった悪臭のせいで えずく一同に、拳藤は申し訳なさそうに謝った。


「次は、私・・・!」


気を取り直し、葉隠が剣を刺す。
すると、透明な小さな塊が、葉隠の背中に入れられた。


「ひゃあああ!?冷たい〜!」


透明な塊は、氷だった。
じたばたと暴れる彼女の服から手早く氷を取り出してやると、続いて角取も ドキドキしながら剣を刺す。
今度は、先端に緑色の何かがついたアームが、角取の口めがけてその緑色の何かを放りこんだ。みるみるうちに、目からポロポロ涙をこぼし、鼻を押さえた角取。


「ツーンとシマス・・・!」

「・・・ワサビですわ!」


ハッと気づいた八百万の言葉に、角取は「オゥ!これがワサビ!」と感激している角取。
彼女をしり目に、指先で剣をくるくると回していた強子が、剣を握って 構える。


「いよいよ、私ね!」


いざ、樽に剣を刺さんとする強子に、物間が声をかけた。


「あ、避けるのは禁止だよ」

「えっ駄目なの!?」

「当然だろう?罰ゲームは いわば、剣を刺す者に与えられる 試練だ。その試練を耐えられる者でなければ、この勝負に参戦する権利なんて無いと思わないかい!?」


ようするに、勝負に参加したならば、避けずに 試練(罰ゲーム)を受けとめろ、と。
鉄哲や拳藤のように個性使用が許されるなら、強子は個性を使って罰ゲームを回避してやろうと考えていたのだが・・・思わぬ制約を物間から言い渡され、狼狽える。


「それとも、こんな子供向けのおもちゃの罰ゲームに、怖じ気づいてる!?ああそうだね、君は早く部屋に戻って、ベッドの中で泣いてればいいよ!頼れるA組連中の写真でも眺めながらさァ!?」


そこまで煽られては、強子の理性など軽く吹っ飛ぶ。自尊心の高い強子が、臆病者のように貶され・・・ここで引き下がれるわけがない。


「っ、こんな罰ゲームくらい、真っ向から受けて立つっての!・・・いくよ!」


そして強子は、目にも止まらぬ速さで樽の穴に剣を刺しこんだ。カチッとした音のあと、樽の一部が変形し・・・

バシャッ!バシャッ!!

いくつかの水風船が、強子の顔めがけて発射された。
強子の頭部にぶつかった水風船は勢いよく破裂し、彼女の髪も、顔も、服までもがびしょ濡れになった。


「・・・」


元の形に戻った樽を前にして、ぽたぽたと水を滴らせている強子は、むすっとした不機嫌な表情で樽を睨みつける。
―――なんて無様で、屈辱的だろうか。
身能強子として、生まれてこのかた、“罰ゲーム”を受ける機会など ただの一度もなかった。
頭の回転が早く、要領もよく、カースト上位に座する強子には、そんなものと縁がなかったのだ。


「ちょっ・・・強子?大丈夫?」


まわりの皆が固唾をのんで強子を見つめる中、耳郎が気遣わしげに問いかける。
八百万が気をきかせてタオルを創造すると、手早く強子の肩にタオルを掛けてやった。
強子は、目にかかって邪魔な髪をかき上げると、フンと鼻を鳴らして物間を見る。


「何ともない・・・さっさと次、いこう」


・・・耐えた。耐えてやった。
強子がぶち切れる展開を想定していた何人かは、ほっと肩の力を抜いたり、目頭を押さえて喜んだりと率直な反応を見せている。
そうして再び、物間から順番に剣を刺すことになったのだが・・・それを観戦する緑谷が、またブツブツと考察を始めた。


「痛みや不快感を与えるものから、嗅覚に味覚まで罰ゲームに取り入れている・・・しかも、一度もかぶらない。やっぱり、全部違う種類の罰ゲームなんだ!・・・でもこれ、負けた人の罰ゲームっていったい・・・?」


その言葉に、全員がハッとした。
ハズレじゃない穴でさえ、容赦のない罰ゲームなのだ。これでハズレの穴に当たってしまったら・・・?嫌な予感に、全員の緊張感が増す。
上鳴と物間も、互いに「リタイアしてもいいんだぜ?」と相手に促すが、どちらも意地をはって引こうとはしない。危険だとわかっていても、引き返せないのが 若さである―――


「ブッ!?」


二巡目、強子の罰ゲームは・・・顔面パイ投げであった。再び顔が汚れ、即座に八百万が強子にティッシュを手渡してくれる。 
その後も、くすぐりの刑や、ものすごく苦いお茶を飲まされたり・・・順調に、定番罰ゲームを食らっていく強子。
他の参加者も同様だ。デコピンや金ダライ落下、熱湯噴射、巨大風船の爆破など、あらゆる罰ゲームを食らって、皆のダメージが増えていく。そして、これ以上の罰ゲームが待ち構えているという不安もどんどん増えていく。
―――やっとたどり着いた、残った穴二つ。そのどちらかがハズレだ。


「うおりゃあ!」


順番の強子が、決死の覚悟で剣を突き刺した。
その途端、伸びてきたアームが強子を掴み、ぐるんぐるんと振り回す。解放された時には、ぐったりと青い顔をした強子がフラフラと揺れていた。
だがしかし、海賊の人形はまだ樽に入っている―――つまり、最後に残った穴がハズレだ!
そして次の順番は、物間である。


「勝負はA組の勝ちだな!さぁ、刺してもらおうか!」


勝ち誇る上鳴に、悔しそうに顔をしかめる物間。


「それがヒーロー志望のやること!?もう負けが決定してる事実は覆らないんだから、それでいいだろォ!?これ弱い者イジメだよねえぇ!?」

「罰ゲーム受けたくないから開き直りやがった」

「ここまで潔くないと、かえって潔く見えてくる不思議・・・」


呆れを通り越して、感心している上鳴と尾白。そうまでして罰ゲームを回避したいという彼の気持ちもわかる。
しかし、強子は、ニヒルな笑みを携えて物間を見やる。


「え?まさか物間くん・・・たかがオモチャに怖じ気づいてるわけ?でも、逃げるなんて許されないよねぇ!?罰ゲームは、剣を刺す者たちに与えられる試練!その試練を耐えられるから、物間くんは勝負に参加してるんでしょう!?最後まできちんと耐えてよ!!」


ここぞとばかりに反撃に出た強子。
物間よ、お前が強子を臆病者あつかいしたことは忘れてないぞ。


「なに?僕への意趣返し!?勝つだけじゃ飽きたらず、この僕に罰ゲームの集大成みたいなことをさせようって!?まったくこういうときに身能さんの本性がでたね!もっと広い心を持ちなよ!!」

「いいかげんにしろ」


拳藤が立ち上がり、物間に手刀をお見舞いする。
「うっ」と倒れこんだ物間の隣で、鉄哲が「男らしくねえぞ!」と物間に怒鳴りつけるが、それでも物間は・・・嫌なものは嫌だと、何があっても罰ゲームなんかしないと言いきった(ここまでくると、ある意味男らしい)。


「そんなに嫌なら 俺が代わりにやってやる!!」

「え、いいの?」

「身能も、それならいいだろ!?」


物間のあまりの情けなさに、業を煮やした鉄哲が剣をとる。
こいつは男の中の男だ――感嘆に値する鉄哲の選択にケチをつけられるはずもなく、強子も素直に了承した。


「―――刺すぞ」


鉄哲が覚悟を決め、剣を穴へとあてがう。
ゲームとは思えない緊張感の中、全員が何が起きてもいいよう身構えた。
・・・カチャ。剣が奥まで刺さった音が周囲に響く。
全員が息をのんだ一瞬後。

パァン!!!

乾いた音とともに、海賊の人形とカラフルな紙吹雪が舞ったかと思うや、樽から妙にハキハキした発目の声がした。


『おめでとうございます!』

「「「・・・え?」」」


唖然とする皆。緑谷がハッとした。


「発目さん、海賊を飛ばした人が勝ちって設定にしてたんだ!そういえば、このゲームの発売当初はそういう設定だったって聞いたことある・・・」

「「「はぁあ〜!?」」」

「じゃあ、どっちが勝ち・・・?」

「B組に決まってるだろう!?海賊を出したんだから!」

「ふざけんな!出したほうが負けって最初に決めただろーが!」

「っていうかさ、延々罰ゲーム受けただけじゃん・・・」


再びヒートアップしそうな物間とA組であったが、拳藤のその言葉に我に返った。
罰ゲームの数々を思い出すだけで、どっと疲れが押し寄せる。


「・・・今日は これで帰るよ」


よろりと帰っていく物間たちB組を見送るA組。嵐のような隣人が去り、A組の面々は安堵の息を吐いた。


「・・・ご近所づき合いって大変なんだな」

「いや、物間が大変なだけじゃない?」


しみじみと言う上鳴に、冷静につっこむ尾白。
これからB組も雄英敷地内で一緒に暮らしていく お隣さんだ。またやってくるだろう隣人に、A組は苦笑をもらした。


「さて・・・そろそろ部屋に戻るか」


立ち上がった上鳴が、伸びをしながら言う。
予期せぬ事態により無駄に疲れたし(勝負に参加した者はとくに)さっさと眠りにつきたいところだ。


「だが、その前に!!」


急に声を張り上げた飯田の方を見ると、彼は腕をびしぃっと床に向けた。


「片付けをしよう!!」


談話スペースの床を見れば、罰ゲームをやった影響で、かなり汚れていた。
あちこちが水浸し。風船の割れた破片やらパイ投げのクリームやら、罰ゲームの残骸が床に散乱しているではないか。
入寮して間もないというのに これはイカン!と、いうわけで・・・飯田主導のもと、勝負に参加した4人で談話スペースをきれいに片付けることとなった。
ちなみに、他の者たちは明日の訓練に備え、先に部屋へ戻っていった。





ゴミをあらかた片付けて、尾白と葉隠がゴミ捨てに行っている。使い終わった掃除用具は、飯田が片付けに行っている。
だいぶキレイになった談話スペースを見回して、床を拭いていた強子が ふうと息をついた。
雑巾を洗いに行こうかと強子が立ち上がると、


「・・・悪かったな」


強子と同じく床を拭いていた上鳴が、床を見つめながら言った。
今ここには強子しかいないので、彼の言葉は強子に向けられたもの。
強子に辛辣な態度ばかり見せる上鳴だが、“迷惑をかけたら謝る”くらいの良識は、強子に対しても持ち合わせていたらしい。


「いいよ・・・物間くんの扱いなら、私 わりと慣れてるし」


面倒なゲームに強子を巻き込みやがって と、最初こそ腹が立ったけど・・・対戦相手はあの物間だ。比較的、物間の扱いを心得ている強子が適任であったと言える。とはいえ強子も、物間と意地を張り合って、度が過ぎることもあるのだけど。
ここは、素直に謝った上鳴に免じて、こちらも素直に許してやろう。


「・・・や、そうじゃなくて、」


上鳴が床から視線をあげ、強子を見た。


「―――今までのこと」

「え?」


いつものヘラヘラしたふざけた顔じゃなく、めずらしく真面目な表情。
ぽかんと呆けている強子を前に、上鳴は顔を歪めて言いにくそうに口を開いた。


「俺、今までお前に、態度わるかったろ?だから・・・まぁ、その・・・ごめん」

「・・・」


半開きになっていた口を閉じ、彼の真意を探ろうとじっと上鳴を見つめる強子。上鳴は居心地悪そうに強子から視線をそらすと、後ろ頭をかいている。

いいよ―――と、素直には頷けない。

だって今まで、彼の言葉に、強子の心は幾度とダメージを受けてきた。理由もわからず一方的に傷つけられた。
そして今度は、唐突に、理由もわからないまま謝られ、今までのことが水に流されようとしている・・・。
強子がこのまま頷いたとしたら、それは“うわべ”だけの和解になってしまう。だから、


「・・・理由を教えてくれる?」


確認しないわけにはいかない。“うわべ”だけで、なあなあにするのではなく、納得のいく理由がほしい。


「あー・・・恥ずかしい話なんだけどさ、」


視線をさ迷わせながら、そう前置きした上鳴。いったい何を言い出すつもりだろうかと勘ぐっていれば、


「身能の顔が、そっくりだったんだよ―――俺をこっぴどく振った女に」


・・・は?
上鳴の言葉に、強子は鳩が豆鉄砲を食ったような顔で固まった。


「そいつ、顔がとにかくもう、チョー可愛くて!!まわりの人間は皆、そいつをちやほやと甘やかしててさ・・・もちろん俺も、飯おごってやったり、プレゼント買ってやったり、勉強を教えてやったり、宿題を肩代わりしたこともあったし・・・いろいろアプローチしたんだけどさ。結局、その子は金持ちぼんぼんのイケメン野郎を選んで、俺はポイッと捨てられたっつーワケよ」


鼻の下を伸ばして 可愛らしい女子に甲斐甲斐しく構う上鳴の姿を想像するが・・・その姿は、“都合のいい男”としか思えない。
哀れなことだが、その女子にとって上鳴は、もとより“都合のいい男”でしかなかったのでは?と推察する。


「それ以来、俺は決めたんだ―――もう二度と、腹黒女子の言いなりになるもんか、ってな!可愛い女子の見た目にはもう、ほだされない!可愛い子ほど性格極悪だって、俺はわかってんだ!!」


いや、それは上鳴の偏見だろ!世のかわい子ちゃんたちに謝れ!
というか、彼の話を聞いていて思ったのだが・・・


「私、何も悪いこと してなくない?」


強子が思ったことをそのまま口にすれば、上鳴はグッと押し黙った。
聞いたかぎりじゃ、強子自身が上鳴に何かしたわけではない。強子には何の落ち度もない。
なら、強子に対する辛辣な態度は、ただの八つ当たりじゃないか?理不尽きわまりない。


「っ、そう、かもしんねーけど!お前だって、俺に冷たいっつーか、キツいとこあったろ!?」

「私、そんなことしてないよ」


記憶を探っても、強子が上鳴に辛辣な態度をとった覚えなどない。
ヒーロー殺しをかっこいいとか言った彼を叱ったことはあるが、あれは、上鳴じゃない人が相手でも 同じように叱っただろうし。


「でも、上鳴くんは私に辛辣だったよね・・・下らない“偏見”のせいで。“八つ当たり”なのか知らないけど、おかげで私は“謂われのない”誹謗、中傷を受けて・・・」

「だぁーっもう!悪かった、悪かったってェ!!お前がイヤな奴だと思い込んでた 俺が間違ってたよ!全部俺が悪い!!」


淡々と彼を責め立てれば、若干涙目になった上鳴が声を張り上げて謝罪した。
渾身で謝る上鳴を見ていた強子が、ふっと呆れたような笑みとともに、一言こぼす。


「いいよ―――もう、水に流そう」


ハッと驚いたように、上鳴が目を見開いた。
辛辣なことを言われたときは 絶対に許すものかと思っていたが、前言撤回しよう。


「人間ってのは・・・誤解と理解をくり返すことで、互いにわかり合える生き物だと思うんだよね」


思えば・・・今は大の仲良しの八百万だって、初めは誤解があって、親しくなるまで時間がかかったじゃないか。
轟だって、初めは強子に欠片も興味がなかったけど、少しずつ強子という人間を知り、理解していくことで、信頼関係を築くまでに至った。
緑谷との拗れた関係性だって同じだ。彼も強子も、相手を理解してるつもりになって、互いに本音をぶつけるまで 誤解していた部分も多い。


「・・・断片的な情報だけで決めつけんのは良くないっつーことか」

「うん。でもさ・・・」


反省の色を浮かべて、俯く上鳴。強子は彼と目を合わせるように、しゃがみ込んだ。
彼を見つめながら、強子はとある言葉を思い出す―――最初から運よく授かったものと、認められて手に入れたものでは、その本質が違うんだって。


「私たち、こうして“誤解”と“理解”を乗り越えたんだから・・・最初から なんとなく仲良くなるよりも、もっとずっと仲良しになれるよね!」


強子と上鳴の微妙な関係は解消され、これからの二人は 手を取り合っていける――そんな未来を確信して、強子はにっこりと笑ってみせた。









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きっと、イヤな出来ごとも、つらい思い出も・・・素晴らしい未来を手に入れるために必要な過程だと思うんです。
上鳴の理不尽な八つ当たりも、彼との絆をより深めるために必要だったと思って、納得してください。
彼の辛辣な態度の理由が下らないってガッカリされた方もいるでしょうが・・・世の中、案外そんなもんだと思います。納得してください。

なお、今回の危機一髪のゲームについては、元ネタが小説版となってますので、詳しく知りたい方は読んでみてくださいね!


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