最悪だ

「緑谷と爆豪、そこに身能を加えたチームですが・・・・・・オールマイトさん、頼みます」


演習試験のチーム采配を決める、職員会議でのこと。
相澤は、自分の担任するクラスの中でも とりわけトラブルを起こす事が多い連中――その対戦相手をオールマイトに託した。


「この三人に関しては能力や成績で組んでいません・・・ひとえに、仲の悪さ!!」


爆豪と緑谷、爆豪と身能・・・どちらも、異様なまでの仲の悪さであることは、クラスでも周知の事実。
そして一方で、こちらはあまり周知されていないが・・・緑谷と身能の二人も、不仲であった。
といっても、この二人は 喧嘩をするわけではない。反対に、相手を無視をするということもない。表面上は、普通にクラスメイトとして接している。ただ・・・水面下では、互いが互いを 甚く敬遠していた。
本来であれば、同じパワータイプ個性の者どうし、互いに競い合い、高め合える関係になれるはずなのに・・・“競い合い”の部分ばかりが先行して、気づけば、二人の関係は見事に拗れていた。


「緑谷のことがお気に入りなんでしょう。“秘蔵っ子”もセットにしてますんで、うまく誘導しといて下さいね」

「(・・・相澤くん、よく見てるよ 君・・・!)」







対戦ステージへと向かうバスの中は、しんと静まり返っていた。
各々、なるべく距離をおいて離れた席に座っており、互いの姿が視界に入らないようにしている。
緊迫した雰囲気を少しでも和まそうと、「・・・しりとりとかする?」とオールマイトが気を利かせるも、バス車内にいる三人からは、何ひとつ反応が得られない。
その殺伐とした空気の中・・・強子は口元に手を置き、額に汗をうかべながら、険しい表情でぐるぐると頭を悩ませていた。


「(どうしよう・・・どうしよう!?ああ、もうっ、最悪だ!なんで こうなる可能性を想定してなかったんだ!)」


よくよく考えれば、仲の悪さを考慮して組まれた緑谷と爆豪――この二人の 双方とも仲が悪い強子が、このペアと組まされるのは道理である。
しかしながら、原作で赤点だったペアか、絶縁中の八百万ペア・・・そちらにヤマを張っていた強子は、こうなる可能性なんて、頭からすっかり抜け落ちていた。


「(本当に・・・っ、どうしよう!?)」


対策を練るため・・・まずは、原作ではどういう展開だったかを思い出さねばなるまい。
強子は必死に頭をしぼり、展開の大枠をなんとか思い出していた。

まず、この30分間の演習試験における勝利条件は、“教師にハンドカフスをかけて勝つ”か、“チームの誰かがステージから脱出する”ことだ。
戦って勝つか、逃げて勝つか、どちらかを選ばなくてはいけないのだが・・・
原作では―――爆豪は、オールマイトと“戦って勝つ”つもりで正面から戦闘を吹っかけ、反対に 緑谷の方は、“逃げて勝つ”ことを考え、爆豪を制止していたはず。


「(協力どころじゃ、ないよねぇ・・・)」


もともと関係最悪の二人なのに、目指す方向も真逆なのだから、チームプレイなんて発揮できるわけがない。
でも・・・その悪状況がくつがえる、転機があった。
爆豪がオールマイトに敗れそうになったとき―――緑谷の力を借りるくらいなら負けた方がマシだと言った彼を、緑谷が、思いきり殴り飛ばしたのだ。「負けた方がマシだなんて、君が言うなよ!」と叱咤して。
そして、「勝つのを諦めないのが、君じゃないか・・・!!」とも口にした。それは幼馴染だからこそ知っていた――緑谷が憧れる、彼の凄いところだった。
緑谷の言葉を聞いた爆豪は、不本意ながら、嫌いな緑谷を使ってでも勝とうと考えを改めるのだ。

そのシーンがとても印象的で、強子は今でもよく覚えている。
爆豪は、自分の“オリジン”――最後には絶対勝つ 最高のヒーローへの憧れを思い出し、また一つ成長して強くなった。
緑谷も、苦手とする相手と組み、神にも等しい憧れのヒーローへと立ち向かい、勝利を掴んだ。
なによりも・・・緑谷と爆豪の二人が、初めて“協力”するシーンだ。これを境に二人が仲良くなる・・・なんてことは全くないけど、それでも―――ここで二人が“協力”したという経験が、将来に活きてくる。

そんなことを思い返していた強子が、ふと気付く。


「(私・・・いらない子じゃない!?っていうか邪魔だよね!!?)」


因縁の二人が初めて一つとなって戦う、感動的なシーン。
しかし、そこへ強子が入って水を差すなんざ、おこがましいにも程がある。原作改変もいいとこだ。
そもそも・・・この二人なら 放っておいたって合格するだろう。強子がいる必要はないのだ。
むしろ、強子が余計な手出しをすることで、二人が赤点になる可能性もあるのでは?
赤点の者は、林間合宿の肝試しを出来ずに補習地獄だ・・・けど、それって、原作と違うよな。
けど、原作と違う展開って・・・かなり、マズいんじゃないのか?
ヴィラン襲撃の規模は相当なもの。原作と異なる要素が一つでもあれば・・・原作と同じように、死人が出ずに終わるという保証もないのでは!?

この先のことを考えると、ここで強子が余計な事をするわけにはいかない。
であれば、いっそ―――


「(姿をくらまそう!!)」


もう、これしかない。試験開始早々 ダッシュで戦線離脱だ!
強子がいなくなれば、あの二人はあの二人でどうにかするしかない。
強子は赤点になってしまうだろうが・・・それで二人が協力し合えるのなら、構わない。
二人のため、ひいては、林間合宿以降の展開に影響を出さないため、強子がいなくなることが最善なんだ。





受験者三人が戦闘ステージの中央にあるスタート地点に着き、開始の合図を待つ間、強子は辺りを見回す。
オールマイトは指定された脱出ゲートの方角からやって来るはずだ。
彼と会敵せず、爆豪と緑谷から離れるには・・・ゲートとは反対方向に向かうのがいいだろう。その後は、模擬市街地の入り組んだ街中で、試験終了まで身を潜めていればいい。


『爆豪・緑谷・身能チーム、演習試験―――レディー、ゴォ!!!』


開始の合図と同時、強子はくるっと身をひるがえし、逃走ゲートと反対側に足を進めた・・・のだが、


「ぐえっ!?」


背後から後ろ襟を掴まれて、前に進もうとしていた強子の首が締まり、変な声が出た。
強子はケホケホと咽ながら、後ろ襟を掴んでいる男を睨んだ。


「な、何すんの!爆豪くん!?」

「・・・行くぞ」

「は?・・・って、うわ ちょっと!」


爆豪が強子の後ろ襟を掴んだまま、脱出ゲートの方に向かって大股で歩いていく。
後ろ向きだった強子が足をもつらせて尻もちをつくが、彼は構わず、強子をズルズルと引きずるようにして前進していく。
爆豪の行動に動揺しつつ、彼の手から逃れようと身をよじる強子に、彼は低い声で絞り出す。


「・・・俺とお前で、オールマイトをブッ倒すぞ」

「「ハッ!?」」


爆豪が発した衝撃の一言に、強子も緑谷もぎょっと目を剥いた。


「かっ、勝手に決めないでよ!私には私の考えがあるんだからっ・・・!」
「せっ、戦闘は何があっても避けるべきだって!!ここはまず迂回して・・・!」


わあわあと二人同時に口答えしたのが苛ついたのか、爆豪はより一層 目をつり上げて、二人を一蹴する。


「俺と補欠女で終盤まで翻弄して、疲弊したとこ俺がブッ潰す!」

「だ、だからっ・・・なんで私なの!やるなら緑谷くんとやってよ!幼馴染でしょ!?」

「う、んえっ・・・!?」

「ざっけんな!デクとなんざ 誰が手を組むかよッ!!てめェとだって本意じゃねーが・・・クソデクと比べりゃ、てめェの方がまだ 毛ほどはマシってだけだ」

「はァア!?どんだけ横暴なの アンタは!!」


自分勝手な上、失礼じゃないか?とても人に協力をあおぐ態度とは思えない。こんなやつとは、絶対にチームなんて組めないよ。
まあ、どんな態度だろうと・・・彼らとチームを組むつもりは強子にないのだけれど。


「・・・オ、オールマイトを 何だと思ってんのさ。いくら身能さんの力を借りても、正面からやり合って かっちゃんがオールマイトに勝つなんて・・・」


緑谷が最後まで言い切ることはなかった。言い切る前に、爆豪の裏拳で殴り飛ばされたのだ。
加減なく頭部を殴られ、頭を押さえながら地面を転がる緑谷を、爆豪は血走った目で一瞥する。


「これ以上、喋んなッ・・・ちょっと調子良いからって喋んな、ムカツクから・・・!!」


そう凄む爆豪は、強子ですら近寄りがたいと思うほど 殺気だっていた。
けれど、緑谷は負けじと彼に意見する。


「試験に合格するために僕は言ってるんだよ!聞いてって かっちゃん・・・!」

「だァから!てめェの力なんざ合格に必要ねェっつってんだ!!」

「怒鳴らないでよ!!それでいつも会話にならないんだよ!!」


強子は尻もちをついたまま、頭上で交わされる怒鳴り合いを、死人のような顔で聞いていた。


「(最悪だ・・・)」


これほどまでに最悪なチームが、他にあるだろうか。
もう試験は始まっているというのに、我々の この体たらく・・・ヴィランと戦闘どころじゃない。
それも、強子たちが今から戦う相手は―――

―――その時、とつてもない爆風が強子たちを襲った。
爆豪の“爆破”のような熱は伴わない。だが・・・彼のより もっと範囲は広く・・・建物や地面までもが揺さぶられるほど 莫大な威力。


「「「!?」」」


爆豪はとっさに踏ん張って耐えたが、強子も緑谷も 風圧に負けて吹き飛ばされた。
いったい何事かと爆風の出どころを見やり 息を整えていれば・・・粉塵が舞う中、肌で感じるほどの威圧感を纏わせたオールマイトが 姿を現した。


「試験だなんだと考えてると 痛い目みるぞ。私はヴィランだ。ヒーローよ・・・真心込めて、かかってこい」


言うやいなや、オールマイトがこちらに向かってくる!!


「正面戦闘はマズイ!逃げよう!!」


言われなくても強子は最初からそのつもりだが・・・


「俺に指図すんな!」

「かっちゃん!!」


爆豪は退くどころか、オールマイトに向けて閃光弾(スタングレネード)を放った。


「オールマイト!言われねぇでも、最初(ハナ)から・・・」


ぐわしっと、オールマイトに正面から顔を掴まれたが、爆豪は一切ひるまず・・・顔を掴まれたまま、手のひらを彼に向ける。


「そぉつぉぃあよ(そのつもりだよ)」

「あ痛たタタタタタ!」


爆豪は、連打爆撃を彼に至近距離から打ち込んでいく。
この隙に、強子は彼らから距離をとろうと走り出した。とにかく、爆豪から、緑谷から・・・そしてオールマイトから離れないと!!
しかし、駆けだして数歩も進まぬうちに、爆豪はオールマイトによって地面に叩きつけられていた。


「作戦・・・があるようには見えないが―――君は、チームを置いて逃げるのかい?」


瞬く間に、強子の正面にオールマイトが立ちふさがっていて、ヒッと息をのむ。
強子が戦う体勢をとるより早く、彼の拳が強子のみぞおちに入った。


「ッ、・・・ガハッ!」

「身能さん!?」


殴られた衝撃で、息を吸いこめなくなる。苦しい。地面に転がりながら 痛みに堪えるように呻き声を漏らす。
緑谷に焦った様子で名前を呼ばれるも、そちらに気をまわすほどの余裕もない。


「君も君だ 緑谷少年!そんなところで傍観していては、救えるものも救えないぞ!」


目にも止まらぬ速さで、今度は緑谷の目の前に現れたオールマイト。
緑谷は慌ててフルカウルを発動し、後方へとジャンプして距離をとろうとしたが・・・


「バッ、どけ!!」


後方から爆破で飛んできた爆豪と直撃し、二人して地面に落ちる羽目になった。


「どけっ」

「だから!正面からぶつかって勝てるハズないだろ!?」

「喋んな・・・勝つんだよ、それが・・・ヒーローなんだから」


なおも立ち上がる爆豪の言葉に、強子の胸が絞めつけられる。
そうだ・・・あいつは、いつだって、どんな事にだって勝とうとする奴だ。
爆豪と緑谷―――二人には なんとしても、この勝負に勝ってほしい。だから、そのためには・・・


「(私がいたら、駄目なんだ・・・!)」


強子は痛む体を引きずり、少しでも彼らから離れようと、ほふく前進する。


「とりあえず、」


地面を這っていた強子に影が差し、何だろうかと頭上を見上げると・・・ガードレールを持ったオールマイトが 空から落ちてくるではないか。


「逃げたい君には、こいつをプレゼントだ!」

「!?」


強子をガードレールで押し付けるようにして、オールマイトは地面にガードレールの支柱を突き刺した。彼女の体が ガードレールと地面に挟まれ、身動きを封じられる。
強子を拘束した後、息つく間も与えず、オールマイトは爆豪の腹部にパンチを見舞わせた。
もろにパンチを食らった爆豪の体は、あまりの衝撃に耐えきれず嘔吐しながら、何メートルもぶっ飛ばされる。


「かっちゃん・・・!」


緑谷が爆豪に気を取られた刹那、その顔面に容赦なくオールマイトの拳が入り、緑谷の体が吹き飛んで建物へと打ち付けられた。


「う、嘘、でしょ・・・!?」


強子は身動きがとれないまま、眼前で繰り広げられる一方的な戦闘に、愕然とした。
離れたところで倒れている爆豪は、未だ嘔吐が止まらず、苦しみもがいている。
顔面を殴られた緑谷は、軽い脳震盪だろうか・・・視点が定まらず座りこんでいる。
―――こんなにも、一方的にやられるなんて。こんなにも、圧倒的な差があるなんて・・・!
こちらが二人だろうが、三人だろうが、たとえ二十人いようが・・・オールマイトに勝つなんて、不可能なんじゃないか?


「さて―――」


オールマイトがくるりと強子の方へと振り向き、強子は体を硬直させた。
彼は強子に向かって、一歩、一歩と・・・重々しく歩みを進める。


「今日の君は、随分とおとなしいじゃないか。いつもクラスメイト達にするように、私にも噛みついてくればいいだろうに。何をそんなに恐れることがある?」


何言ってんだよ、この男は。こんな“脅威”が目の前にいて、恐れない奴なんているのか?
今だけは、オールマイト殺害なんて本気で考える死柄木を、少しばかり尊敬する。よくまぁ、こんな人に歯向かおうと思えるよ。


「補欠入学である君を、相澤くんが除籍にしないのは・・・君が“負けず嫌い”だからなんだろ?」

「!」

「勝つための努力を惜しまない君だから、未だに在籍できている。それなら、君は、こんなところで寝転んでていいわけがないよな・・・ほら、立ち上がるんだ!さぁ!それとも君は、“ヴィラン”相手に負けを認めるのか?」

「ぅ・・・る、さいなっ!」


煩わしい激励に、強子は苛立たしげに顔を歪めた。
強子だって、本気でガードレールから抜け出そうと 全力を出しているさ。なのに、ガードレールは、ぴくりとも動いてくれないんだ。
それ以上に、オールマイトの纏う威圧感に、本能的に 体がすくんでしまう。
たとえガードレールから抜け出せたとて、目の前にいるこの男と対峙しなくてはいけないのだから・・・そこには一縷の望みもない。


「っどうせ、」


鬱憤を晴らすように 思いきり拳を地面に叩きつければ、殴った部分の地面が抉れ、クレーターができる。
そんな強子のパワーをもってしても、オールマイトが地面に突き立てたガードレールは 抜けやしない。
強子のパワーは・・・オールマイトのそれより、圧倒的に、劣るのだ。


「どうせ、かなわないんだっ!」


強子では、オールマイトには敵わない。
だって、まだ個性を扱いきれていない緑谷にさえ、強子はケタ外れな力量差で 負けている。それが現実だ。その程度の力しかない強子では―――


「何をやったって・・・オールマイトには 敵わない!」


地面に這いつくばったまま、滲む視界で地面を睨み、吐き捨てるように叫ぶ。
一瞬、間があいて、


「・・・・・・そっか。それは 残念だ」

「っ・・・!」


ぽつりとこぼしたオールマイトの、落胆した声。それを耳にした強子の心臓が、ぎゅっと掴まれたように苦しくなる。
オールマイトは、ゆらりと強子に向けて、その逞しい剛腕を構えた。
・・・ああ、とどめを刺される。これで、強子は 赤点決定だ。





―――そう思った瞬間、
グイッと強子は胸ぐらを引っ張られた。そのまま、凄まじいスピードで強子の体が引きずられる・・・と 同時に、強子の体を固定していたガードレールが、ガシャンと吹き飛び、強子の体が解放された。


「(えっ!?)」


驚きの声を出す間もないまま、強子の胸ぐらを引く力はさらに強まり―――強子の体は、思いっきり、宙にぶん投げられた。


「何やっても敵わない なんて―――君が、言うなよ!」


必死な形相で、強子に向かって緑谷が叫ぶ。
彼の姿が視界に入り・・・ようやく強子は、自分は“緑谷にぶん投げられた”のだと理解した。
猛烈な勢いで何メートルもぶっ飛ばされた強子が ズザザと横倒しに着地すると、間髪入れず、再び緑谷は強子の体を抱え上げて走り出す。
横たわっている爆豪のもとへ駆け寄り、彼のことも担ぎあげ、緑谷は両わきに二人の体を抱えた。


「ちょ、ちょっと!」
「てめっ、放せっ!」

「いいから!!」


抵抗を見せる二人を諫め、緑谷は二人を抱えたまま細い路地裏へと入り、足を止めることなく駆けていく。


「・・・敵わないなんて、言わないでよっ」


真っ直ぐに前を向いている緑谷だが、その言葉は強子に向けられている。


「君は、勝つためなら、使えるものは何でも使って、勝利をもぎ取ってきただろ・・・!」


何のことを言っているのかわからず 強子は逡巡するが、爆豪は何かを察したようで、眉間に皺を寄せたまま、黙って耳を傾けていた。


「君ひとりの力で敵わなくても、道具に頼ったり、相手の弱点や 相手の個性さえも利用して・・・」

「・・・!」


緑谷の言葉は、覚えのあるものだった―――

初めての戦闘訓練で、轟を相手に、強子は新品のコスチュームのマントを犠牲にして、氷漬けを回避した。
爆豪との因縁の対決では、道路標識をぶん回して攻撃したり、マンホールの蓋で特大爆破を防いだりしていた。
心操相手に、耳栓に頼ったこともあった。
それに、対戦相手に弱点があれば遠慮なくそこを突いてきた。
轟の場合、左側の炎を使わないと知っていたから、彼の左側を狙って攻撃した。
体育祭の常闇戦では、彼の苦手とする接近戦に持ち込もうと画策した。
芦戸戦では、彼女の個性“酸”を利用して、彼女を場外に追いやった。

―――でも・・・だから、なんだって言うんだ。
どんな道具を使ったって、どんな道具もオールマイトの前じゃ 塵になる。
弱点だの隙だの、オールマイトには在るはずもない。


「恥も外聞もなく―――勝つのを諦めないのが、君じゃないか・・・!!諦める前に、僕を“使う”くらいしてみろよ!」

「っんな・・・!?」


緑谷の言葉を聞いた強子の頭に、かぁっと血が上る。


「(お前はっ、それをっ・・・“私”に、言うのかよっ!!?)」


強子の知る展開では、緑谷はそのセリフを“爆豪”に言っていたはずだ。
なのに、爆豪ではなく、なぜ強子に言うんだ・・・!


「かっちゃんにだって出来てることなんだ・・・身能さんにも 出来るはずだよ!」


言われて、ハッとした。
緑谷に「テメェそりゃどういう意味だコラ!ぶっ飛ばすぞ!」と責め立てている爆豪を見やって、強子は唇を一文字に結ぶ。


「(最悪だ・・・!)」


確かに―――爆豪は 緑谷に言われるまでもなく、すでに“出来ている”。
強子という チームメイトを“使う”ことが、出来ている。
強子という 折り合いの悪い相手とも、協力して戦う覚悟が、出来ている。


「(なんだよ・・・出来てないのは、私だけかよ・・・!)」


チームでオールマイトと戦う――その覚悟が出来ていないのは、強子だけだ。
気づいた途端、どうしようもなく恥ずかしくなる。
かつて、原作の展開を見ていた“私”は・・・緑谷と協力しようとせず、一人で突っ走る爆豪に、「何やってんだよ!馬鹿!!」と じれったく思っていたはずなのに。
その“馬鹿”なことを、知らず知らずのうちに、“自分自身”がやっていただなんて―――みっともない。
まったく・・・自分は、なんて みっともない事をしているんだろうか。


「僕には オールマイトに勝つ算段も逃げ切れる算段も、とても思いつかないんだ」

「あ!?」
「・・・?」


緑谷にそっと下ろされ、久しぶりに地に足をつく。
爆豪も、強子も、怪訝そうな表情で彼を見た。


「でも・・・かっちゃんと身能さんの二人がいれば、オールマイトとだって戦えるって―――そう思えるんだ」


余裕なさそうなくせして、二ッと不敵な笑みをこちらに向けた緑谷。
揺らぎようのない信頼が、自分と爆豪に向けられているのをまざまざと思い知らされ、強子はかぁっと顔が熱くなるのを感じた。
それから観念したように、ペチッと額に手を当てる。


「(チクショウ・・・こんなの、三人で戦って勝つ以外に、選択肢ないだろ!)」








三人は、脱出ゲート方面に向かって戻っていくオールマイトへと、奇襲を仕掛ける策に出た。


「どこぉ見てんだぁ!!?」

「背後だったか―――」


背後からの奇襲に、爆豪へと振り返ったオールマイト・・・けれどその後ろに、緑谷が気取られないよう回り込む。
爆豪の爆破による煙幕で、あたりの視界を悪くしたので、気づかれにくいはず。
強子は、爆豪が“軌道”から逸れたことを確認すると、声を張り上げた。


「今だっ!!」

「デク!!撃て!!!」


二人からの合図を受けて、爆豪の籠手を構えた緑谷が、オールマイトの背に向ける。
ゼロ距離からの、最大威力。
これでダメージを与えつつ、少しでも彼と距離をとる・・・唯一の手段だ。


「なる程」

「ごめんなさいオールマイト!!」


言いながら、特大級の爆破を彼に放つ。
爆破は彼に直撃した・・・が、油断できない。今の攻撃で、彼にどれほどのダメージを与えられたものか、期待できたもんじゃない。
ふと緑谷を見ると、爆破の反動で痛んだ肩を押さえ、まだ座り込んでいる。
強子は彼に駆け寄ると、彼に向けて、手を差し出した。


「・・・行こうッ!」


驚いたように勢いよく顔をあげると、緑谷はキュッと口を締め、一つ頷いた。
そして緑谷は、差し出された強子の手に自分の手を重ね、互いに 互いの手を固く握る。
緑谷が彼女に引かれて立ちあがると、爆豪から怒号が飛んできた。


「走れや!アホども!」

「あっ、うん!」


緑谷の手がパッと放れ、脱出ゲート方面へと慌てて走り出す。
自分が“アホ”という認識はないが・・・強子も、彼らと並んでゴールへと走るのだった。







「もうすぐだ!もう!すぐそこ!脱出ゲート!」


しばらく走ったところで、緑谷が口を開いた。
彼の言う通り、強子たちの視界に、可愛らしいデザインの脱出ゲートが見える。一人でもそれをくぐれば、強子たちの勝ちだ。
しかし・・・強子たちの後方より、驚異的なスピードで迫り来る存在を察知する。間違いない、オールマイトだ。
強子は、彼が自分の背後に追いついた瞬間・・・キュっとその場で足を踏ん張り、後ろに振り返りながら 彼に向けて回し蹴りを打ち込んだ―――つもりだったが、


「(あれっ・・・いない!?)」


後ろには誰の姿もなく、強子の足はむなしく空を切った。


「その反応速度は さすがだが、」


下の方から声がして咄嗟にそちらを見ると、強子の蹴りをかわすようにオールマイトがしゃがんでいた。


「それだけじゃ 私は倒せないぞ!」


まだ回し蹴りの体勢のまま 片足で立つ強子に、しゃがんでいる彼は、目にもとまらぬ速さで痛烈な足払いをかけた。
強子が顔面から地面に倒れる。一拍遅れて、強子の足に激痛が襲いくる。
思わず苦痛の声をあげ のたうち回るが、強子がそうこうしてる一瞬の間に・・・なんと、爆豪と緑谷の二人も、オールマイトによってボロクソに打ちのめされ、地面に臥せているではないか。


「素晴らしいぞ 少年少女!不本意ながら協力し、敵に立ち向かう・・・ただ!三人共!それは今試験の前提だからね、って話だぞ」


圧倒的な速度。耐久力もパワーも、圧倒的に―――シンプルな強さを突きつけられ、改めて、絶望する。
強子たちが対峙する男は、世界一高い壁(最強のヒーロー)なのだと。


「“最大火力で私を引き離しつつ、脱出ゲートをくぐる”・・・これが君たちの答えだったようだが、その“最大火力”も消えた―――終わりだ!!」


爆豪の籠手は、二つとも木っ端微塵に壊されてしまった。これ以上の火力は、強子も緑谷も、持ち合わせていない。
どう考えても・・・詰みだ。
この絶望的な状況で、強子には打つ手なんかありゃしない。


「うるせぇ・・・」


爆豪が吐き捨てると、特大級の爆破をオールマイトに向かって放った。爆風に巻き込まれた彼の身体が宙に浮く。
そのチャンスを逃さず、爆豪は すぐ近くにいた緑谷の腕を掴んだ。


「ブッとばす」

「えっ!?」


ゴールはもう目前だ。ゴールに向け、爆豪の爆風をのせて緑谷を飛ばせば、緑谷はほんの数歩で脱出ゲートをくぐれるだろう。


「スッキリしねぇが、今の実力差じゃまだ、こんな勝ち方しかねぇ」


爆豪の意図を察すると、強子は痛みを堪えて立ち上がった。
「死ね!!!」の掛け声とともに、緑谷をぶっ飛ばしたのを確認し・・・強子も走り出した。
ゴールに最も近い緑谷を阻止しようとするオールマイトを、誰かが阻止しないといけない。


「New Hampshire ・・・」


宙に浮きながら、パンチの風圧を推進力に、緑谷の方へ突進しようとするオールマイトを・・・強子が阻止せねば。


「爆豪くんっ、私を 飛ばして!」

「あ゛!?」


爆豪が険しい表情で強子を睨むが、有無を言わさず、上空のオールマイトを見ながら 爆豪のいる場所へピョンと飛び上がった。
察しのいい彼には、強子の意図が伝わったらしい。
一つ舌打ちしてから、彼は強子の下に潜るような体勢になり、手のひらを上に向けた。
強子はその手の上に乗りあげて、足を踏ん張る。
そして、爆豪は再び「死ね!!!」と掛け声をあげると、強子を爆風でぶっ飛ばした。
New Hampshire Smash を打たんと構えるオールマイトに向かい、一直線に飛んでいく。


「っさせるかァ!」


なにも 彼を倒す必要はない。
彼の体の向きを少し変えるだけいい。それでも、多少の時間稼ぎになるはず。僅かでも彼を妨害できれば、緑谷にゴールさせることが・・・


「まだまだ、あまいぞ ヒーロー共!」

「!?」


オールマイトは空中でくるりと身体を反転させたかと思うと、飛んできた強子の腕を掴み・・・緑谷に向けて、豪速球で強子の身体を投げ飛ばした。
ゴチンッ――頭が割れるかと思うほどの衝撃をくらい、緑谷と強子の二人はその場にうずくまる。痛みのあまり、今にも意識がとびそうだ。


「早よ行け!クソがっ!!」


うずくまる二人に渇を入れながら、爆豪は、特大級の爆破を再び、オールマイトに放つ。
この規模の爆破を 連続で放つとなると、彼の身体への負荷もかなり大きいはずなのに・・・。


「(勝たなきゃ・・・)」


体を張った爆豪の頑張りを 無下には出来ない。
強子はふらつきながら起き上がると、緑谷の腕を引っ張り、立ち上がらせる。


「行って!」

「えっ」

「私の足じゃ 無理だ」


足払いをかけられた足には青アザが拡がっており、強子の足は、肌色より もはや青色の面積の方が広い。見た目だけでなく、相応の痛みも伴っている。
フルカウルの緑谷の方が強子よりも速いだろう。


「・・・オールマイトは、私たちで、食い止めるから」


足をやられてたって、ほんのちょっとくらいは、オールマイトを邪魔してみせるさ。
一人じゃ どうしたって敵わないだろうけど、今、強子は・・・一人じゃない。
強子の言葉を聞き、緑谷がゴールに向けて、走り出す。追うように、オールマイトが緑谷に飛びかかる。でも、


「(今度こそ、止める・・・!)」


ここを乗り切れば、強子たちの勝利だ。
緑谷を庇うよう、強子はオールマイトと向き合う・・・同時に、爆豪もオールマイトへ飛び上がる。
けれど―――爆豪は、ぐちゃりと、無惨に地面に叩きつけられた。


「寝てな、爆豪少年。そういう身を滅ぼすやり方は・・・悪いが、私的に少しトラウマもんでね」


強子も緑谷も驚愕して・・・彼の左腕によって地面にめり込む爆豪を見つめた。
爆豪の策にのって、爆豪の火力に頼って、爆豪の叱咤に背中を押されて・・・そうやって戦ってきた二人にとって、いつの間にか、爆豪は精神的支柱のようになっていたのだ。
けれど・・・爆豪が、起き上がってくる気配がない。
その事実が、強子と緑谷の二人を、どうしようもなく不安にさせた。


「身能少女・・・君も、自分を犠牲にせずには戦えないクチか?」


鋭い眼差しで、問うてくるオールマイト。
彼の言わんとすることは、理解できる。でもさ・・・世界一高い壁(オールマイト)を相手にするのだから、自分の身ひとつくらい犠牲にしなきゃ、勝利なんて掴めないでしょう?


「“私たち”が勝てるなら・・・それで いい!」


爆豪が倒れたくらいで、不安になっている場合じゃなかった。強子にもやるべきことがある。
例え強子が、SMASHで吹き飛ばされようが、四肢をもがれようが・・・構うもんか。
オールマイトが強子に意識を向けている隙に、緑谷がゴールしてくれるから。そのための犠牲なら、強子も喜んで引き受けよう。


「・・・ならば、お望み通りにしようか」


オールマイトが右腕を掲げて拳を構え、強子に向けて振り下ろす―――かと思ったその時、予想外のことが起きた。


「やめて下さい オールマイト!!」

「え゛ッ!?」


ゴール目前まで進んでいたはずの緑谷が、オールマイトの顔を思い切り ぶん殴る。


「(なんで!ゴールせずに 戻ってきちゃうんだよッ!?)」


あと一歩で、彼はゴールできてたはずなのに!
ああ―――でも・・・そういえば、原作でも“そうだった”と思い出す。
緑谷は、どうしようもなく“救けてしまう”人なんだ。
困っている人、救けを求める人がいれば、それが爆豪だろうが・・・強子だろうが。
躊躇なく、壁なんて一つもないみたいに、救けてしまう人間だった。


「(・・・・・・んで!?この後 どうするんだっけ!?)」


ふと我にかえった強子は、これから一体どうなるのかと、先の展開が読めずに困惑する。
オールマイトも、まさか緑谷が戻ってくるとは思いもしなかったようで、咄嗟のことに、彼の図体がふらりと傾いた。
そのオールマイトの右腕を、緑谷は・・・何のつもりか、背後から羽交い絞めにする。
さらに―――


「った!?」


爆豪を地面に縫い付けていた左腕に痛みを覚え、オールマイトは思わず声を漏らした。


「折れて、折れて・・・自分捻じ曲げてでも選んだ勝ち方で、それすら敵わねぇなんて・・・嫌だ・・・!!」


爆豪は、意識が朦朧としているくせに、オールマイトの左腕を力強く掴み、その上、彼の手に噛みついて離そうとしない。
二人の突然の行動に、強子がポカンと呆けていると、


「っ身能さん!」


オールマイトの“右腕”を押さえている緑谷が、切羽詰まった様子で強子を見つめた。


「身能っ・・・!」


オールマイトの“左腕”を押さえている爆豪が、ギラついた眼光で強子を睨んだ。
もの言わずとも 二人の眼が、強子に「いけ!」と語っている。


「(なんだよ コレ・・・!?)」


どうしよう―――こんな展開、強子は知らない。こんな無茶ぶり、どうすればいい!?
「いけ」と言われても、強子の足で、ゴールまで逃げ切れる自信はない。
かと言って、オールマイトを倒せるなんて、とても思えない。

最悪だ。
こんな大事な局面だというのに、自分は どうしたらいいのか・・・全くわからない。
考えがちっとも、まとまらない。

けれど―――葛藤する強子の心情と反し、強子の身体は勝手に動き始めていた。
“敵”を目の前にして、強子の体は、自然と戦う体勢を整えていく。


―――目の前に敵がおったら、何も考えんでも条件反射で殴れるくらい反復練習せなアカン!!


それは、職場体験で、ひたすら反復練習を行った 名残であった。
目の前に敵がいれば殴る――ファットガムの指導によって 強子の体に刷り込まれた、条件反射のようなもの。


―――まず、体の軸がブレんよう意識しぃや!足はしっかり地面を踏みしめて、固定する!


強子はスイッと右足を後ろに引くと、ぐっと足を踏み込んで、腰をおとした。体幹を安定させたまま、目の前の“敵”を見上げる。


―――ほんで、足の筋肉―――筋線維の一本いっぽんまで、フルに収縮させる!


足先から、ふくらはぎ、膝、太ももまでの筋線維を総動員して、力を生み出す。


―――腰を捻るときに生まれる、その回転力も利用する!


オールマイトに対して右向きになっている身体――その上半身を正面に向けるよう腰を捻ると、そこにも力は生み出される。


―――突き出した手の甲が上になるよう手首を返して打つ、その螺旋回転のエネルギーを・・・相手に放つ!


肩から、二の腕、肘、手首に向けて、腕全体を内側に捻りこむよう、筋線維を総動員して、力を生み出す。
あとは、これを敵にぶつけるだけだ!





―――でも、本当に・・・?





これでいいの・・・?
強子のパワーで、世界一高い壁(オールマイト)を崩せるのだろうか?
急に不安が舞い戻ってきて、強子の瞳が揺れた。
オールマイトの両腕を押さえている二人を視界に入れれば、彼らは 気迫をみなぎらせて、縋るように強子を見ている。


「(なんとしても、勝たなきゃ・・・!)」


こんなにも、彼らから託されておいて。
ここまで、彼らにお膳だてさせておいて。
それで勝てないなんて、絶対に駄目だ!!


―――根性論だけじゃどうにもならんこともある。冷静に、客観的にみたジブンの力量をふまえて、状況を見極めんとアカン


強子はゆっくりと息を吐きながら、全身、全神経に集中した。
絶対に勝ちたいからこそ、落ち着いて、勝ち筋を探るんだ。強子がしくじれば、全てが水の泡となる。決して、失敗は許されない。
オールマイトより圧倒的に弱い強子は・・・この状況で、どうやったら勝てる!?

そのとき、研ぎ澄まされた強子の耳に、ぐじゅり、と不快な音が聞こえた。
それはおそらく、身体を蝕む音――正確には、体内の臓器や細胞が 炎症によって浸潤している音であるが――強子はその音を、オールマイトの左わき腹あたりから聞き取った。
そして瞬時に理解する。
オールフォーワンとの戦いで負った古傷が うずいているのだ、と。


「(すみません、オールマイト!)」


強子はギラリと視線を鋭くして、目の前の“敵”を見据えた。
フェアだのなんだの 言ってられない。勝つためには、オールマイトの体調なんて気遣ってられない・・・むしろ、弱点は利用させてもらおう。


―――軸を意識して、足・腰・腕それぞれで練りあげたエネルギーを連動させたら―――目の前の敵に、ぶつけろ!!


ドゴッという鈍い音とともに、強子の拳が、オールマイトの腹部――彼の活動限界を縮めた原因でもある古傷へと、めり込んだ。


「っ、ゴホ!」


咄嗟にオールマイトは左腕を振り上げると、吐血しそうな口元を手で押さえて―――「ガシャン」と金属音を耳にする。


「むっ・・・!?」


オールマイトが口元に持ってきた左手・・・その手首を見ると、ハンドカフスが掛けられている。
見覚えのあるそれは、この演習試験で、受験者たちに渡されていたものだ。


「っ捕えた!」


それは、一瞬の・・・イチかバチかの 勝負であった。
正攻法でハンドカフスを掛けようとしても、オールマイトのスピードなら避けられてしまう。
だからこそ、強子は賭けに出た。
強子が彼の古傷を突き、吐血するか 咳き込むかすれば・・・反射的に“口元を押さえるだろう”と予測した。
口元を押さえるのなら、“左腕で押さえるだろう”と予測した。
その場合、彼の手首は“このあたりにくるだろう”と予測した。
そして強子は、オールマイトの手首がくるだろう位置を決め打ちし・・・ハンドカフスを仕掛けにいった。
その結果―――彼が口元に手を置くと同時、ハンドカフスが彼の手首に掛かったわけだ。


「これは、やられたな・・・君たちの 勝ちだ」


オールマイトが袖で口元を拭いながら、苦笑を漏らした。
まだ勝ったことが信じられない様子の緑谷と、視線を合わせ、互いに安堵の笑みをこぼす。
爆豪を見れば、彼は気絶していた。無理もない。彼に頼りっぱなしだった自分を不甲斐なく思い、強子は心の中で彼に詫びた。
とにも かくにも、


『爆豪・緑谷・身能チーム―――条件達成!!!』


最悪のチームで挑んだ演習試験は、強子たちの勝利で幕を閉じた。








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・・・長かった!
過去 最長です!16000文字を越えてます!プルスウルトラしてます!(私が)
そして・・・熱かった!
かなり熱い展開でした!(燃えつきてます、私が)

ずっと書きたかった話なんですよ。
「人生はままならない」連載の中から名シーンを選べといわれたら、(今後の展開を含めても)今回の話はトップ10に入るでしょう!
たとえ、自己満足と言われてもいい!
やっぱり、原作既知の夢主であれば・・・原作のストーリーに振り回され、葛藤してもらわないとね!
原作を知ってるがゆえに、逆に苦悩する、そんな夢主ちゃんが見たかったんです。


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