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ひそひそと谷やんと話してて、ふと思ったのだが谷やんてどこまで理解してるやら。
おれがありすちゃんの探してるゆゆ、っていうのは知ってても爽やかバイトが天下人だったことは知らなかっただろう。
飾りまで終わったケーキを、トレーの上に置く。
「なに、どうした西野」
じっと見すぎたのか、谷やんが苦笑するから
なんでもないと首を横に振ってトレーを持ち上げた。
「運んできます」「はいよ」
業務的な掛け声をして、ホールへ出る。
ありすちゃんたちは楽しそうに話してて、爽やかバイトもばれて肩の荷が降りたのか普通に笑っていた。
その光景は案外、普通で。
おれもばれた時はあんな風になるのかなと、フィルターを重ねて自分に置き換える。
でもあまり自信はなかった。ありすちゃんに客観的に好かれてる感じはするけど、移り気の多いひとだから。
もしもばれても、何も変わらなければいいな。
《聞いてもらってもいいですか》
戦闘中、唐突に主張してきた助さん
みんなが戦闘を続けたまま《どうぞどうぞ》という。
おれも攻撃しながらスタンプを連打した。
文字を打つのが面倒くさいときはスタンプだ。
《じぶん先日誕生日だったんです》
それはおめでとう、なんで敬語なの。
おおお と歓声をあげた今組んでるパテは5人。
助さん以外の4人でおめでとうとチャットして《何歳になったの》なんて質問がくりだされる。
《まあそれは置いといて》
祝って欲しくて言ったんだと思ってたのに。
みんなの祝いの言葉を横に放置した助さん、主張したいのはそこじゃなかったらしい。
《彼女に誕生日プレゼント何がいい?って聞かれたの》
《リア充乙》
《はい爆発しろーーー》
《画面の中の彼女ですか?頭の中ですか?》
《wwww》
一斉にリア充撲滅しだすパテメンバーに思わず笑ってしまう。
こういう時だけはうちの小さいグルは団結力が高い。普段あまり打たないやつも何気に野次飛ばしてくるから、余計みんなもテンションがあがる。
《いや、ちゃんと聞けよ》
《ノロケタラノロウ》
《なんて?カタカナ読みづらwww》
攻撃中だからチャットを打たずに、周りの会話を眺めているだけのおれはそろそろ回復してくれなきゃ死にそうなのだが。あ、死んだ。
……と思いきやすぐ蘇生された。
《とりあえずさ、プレゼント何がいいかでさ》
《彼女に聞かれたの?》
《そうー》
《魔法のカード》
《魔法のカードいいねww》
魔法のカードとは、このゲームでいう課金できるプリペイカードのことだろう。おれも欲しい。助さんはこれ以上課金したらやばい。
《まあ掃除機欲しいっつったの、ダイソンの》
《wwww》
《彼女になに求めてんだwwww》
おもわずおれも草を生やしてしまった。
《そしたらさー喧嘩になってさー》
《しょうもなw》
《つぎにおばあちゃんと母からも何がいいかきかれて、まあ掃除機っていうじゃん?ダイソンの》
《いうじゃん?じゃねえよww》
どんだけ欲しいんだよ。
まったくゲームとは関係ないしょうもない話を続ける助さんは、今日は話せないらしくて文字打つからほんと回復してくれない。それすらみんなにツッコミされる。
ごめんごめんと言うが、いつの間にかおれ毒食らってますけど。また倒れそう。
《まあ結局誰も買ってくれなかったんだよね》
《ですよね!》
《なので自分で買いました》
《くっそwwww》
以上、近日の話でした。
そういって力尽きて倒れている俺を蘇生してくれた。
さっきまでリア充乙とか言ってたやつも《彼女大事にしろよw》とか逆に応援しちゃってるし、こいつら幸せそうなリア充じゃなくネタ的リア充なら許すのか。
《おいゆゆまだ倒してないのかよー》
《誰のせいだ!》
おまえがちょいちょいおれを殺すから強化魔法が切れてんだよ!
ぐぬぬ、と歯を食いしばりながらスマホの攻撃ボタンを連打するがそんな早くなるわけでもなくて、助さんは《もう回復飽きてきたわ》なんて抜かしやがる。
そもそもいつもならおれが回復なのに、火力飽きたとか言って交代したくせに。ほんと助さんとみりさんありすちゃんの3人はそれぞれ自由過ぎる、類は友を呼ぶとか言うけどここまで類友なやつもなかなかいないぞ。
わあぎゃあ言いながら楽しいと言うより、騒がしいパテを終えると助さんからダイレクトが来た。
《ありす明日帰るんだって》
それは今日の昼間も聞いたし、さっきありすちゃんからLINEもきた。ドロップしたものを片付けてから、知ってる知ってると返す。
しばらく返事が来ない思ったら、ボイスチャットが起動された。喋れないんじゃなかったのか?
『ゆゆちゃーーーーーん!』
カンパーイ、と叫んでるのは少し呂律の回ってないありすちゃんじゃないか。
助さんのダイレクトだよな、ともう一度確認してみるがやはり助さんのダイレクトで、なんとなく察した。
《ありすちゃんと飲んでるの?》
『おーおー。俺ん家の仮眠室で飲んでる〜』
『すーちゃん家ってか、すーちゃんの会社の仮眠室な!超でかいよ、もはや俺の部屋より広いねこれ』
『ありすの部屋はほぼトイレだもんな』
『んだとこのやろぉ!』
ほぼトイレってなんだよ、残りの何割かトイレじゃない部分もなんなんだよ。
仮眠室だから宅飲みっていうか、社宅飲み?違うか。2人ともそれなりにテンション上がっているけど、元が高めだから酔っててもさほど変わらない。
『さっきまでとみ居たんだけどさ〜寝床に帰るっつって帰ってたわ』
《ほー》
『ゆゆちゃんおれにバイバイはー?』
《バイバーイ》
『よくできました〜〜!!』
酔ってんな。
いえーいと適当に返してると谷やんからLINEがくる。
2人に《落ちるね》と断ってゲームを落とすと、そのままLINEチャットを開いた。どうやら明日の仕事を1時間早く出てほしいとのことで、谷やんからそんなLINEの珍しいなと思いながら了承する。
祝日とかだっけ?
とか思いカレンダーを見直すけど、平日だし。なんだろ。
ぴこん、またLINEが来て《車でくるように》と書いてある。買い出しっぽい。はあい と返事してからアラームを一時間早くセットし直す。
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