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ありすちゃんは自ら掲示板に書かれるようなことをしに行くから、書かれても仕方がない。というか、本人いわく、誰にも悪口の矛先が向かないようにじぶんが持って行ってるとか言ってたな。

なんとなく、アイパットで掲示板を調べかけて、手を止める。

じぶんの事が書かれているのは気になるけど、やっぱり見るのは怖い。


《ゆゆちゃん!ゆゆーーゆゆゆゆゆゆゆ》


ダイレクトチャットが点滅して、ハッとして開くとありすちゃんからだった。

なんだか、ありすちゃんから来ると安心する。はあいと打ち込むと、数秒も待たずに返事が返ってくる。


《大好き!》

《ゆゆも〜》

《あのね、あのね、好き!》


どっかから俺のグループ会話見えてんのかな。

なんて、そんなタイミングで変に好き好き攻撃してくるありすちゃん。
これが初めてではなくて、よくパテやグループでありすちゃんの話題がでたりするとこれが来る。でも別に話題出てないときもたまに、ただのカマチョでしてくるから気まぐれなんだろうなと解釈していた。

が、今回は本当に間が良すぎるな。


《ありすちゃん、エスパー?》

《なになになんで?》

《いま丁度ありすちゃんの話してた》

《わかった、悪口でしょ!》


めっ。と可愛く打ってくるのが、可愛いアバなのだが、どうしても昼間に「西野ぉ!」と叫んでいたわたる様が脳裏をよぎる。態度の落差が激しすぎて、なんだかおもしろくなってきた。
にやにやしながら画面を人差し指でなぞり、文字を打ち込む。


《かわゆ。ねえどれくらい好き?》

《いっぱいちゅき》

《さすがwwww》


最近お気に入りのネタをしてほしくて振ってみたら、わかってもらえたようだ。

パテも返しつつ、グループのチャットは放置してありすちゃんとふざけ合っていたら荒みかけてた心が浄化された。やっぱり持つべきは陽気な友だな。

アイパットは電源を切った。掲示板が見たい気もするが、やっぱり見たってじぶんのこと書かれてるのみてショックを受けて終わりだからやめた。改めてじぶんの誹謗中傷書かれながらもゲームしてるありすちゃんは、いつもこんな気持ちなのかなと考える。

もっと優しくしよう……特に優しくしなかったわけでもないが、なんだか可愛がってあげなきゃいけない気がした。


ピンポーン。


「……え」


こんな深夜にインターホンが鳴るなんて。

びびり過ぎてこたつから出られないでいると、またピピピンポーンと繰り返される。

鳴らしすぎだろ…。
とりあえずモニターだけ確認しようと立ち上がると、アイフォンから着信音が鳴り響く。怖過ぎて固まったが、アイフォンの画面をみて肩の力が抜けた。


「おい、居留守使ってんじゃねーよ やえ」

「使ってないから、出てきたんだろ…」


ひゃひゃひゃと家の扉の前で、アイフォン構えていたのはとみりさんだった。

勝手に上がり込んでいくのを止める気にもなれず、呆れながら鍵とチェーンをしめてると「寒い〜〜」なんて言いながら暖房をつける音がした。おまえの家かここは。
こたつの部屋に戻ると、ソファーに座ってるとみりさんがコンビニの袋から飲食物を取り出している。


「ちょっと、自由すぎるだろ」

「はあ?やえ、開けるの遅すぎ。メリーさんだったらてめぇぶっころされてるぞ」

「メリーさんだったら勝手に入ってくるわ」


てか、メリーさんだったら、どのみちぶっころされる。

しょうもない話なんか持ちかけながらコートを脱ぐとみりさんは、ゲームでは何度も遊んだりやりとりしたにしてもリアルで会うのは数回目なのに図々しくないか?
友達ってほど友達でもないその人に、対応に困ってペースを乱される。


「明日仕事なんだけど」

「やえどーせ俺より遅く起きるだろ」

「何時?」

「6時」


ああ、とこの間もそんな時間に起こされたことを思い出す。


「泊まるの?」

「いーの?」

「まあいいけど」


やりぃ、なんて。

つぎつぎ出される缶チューハイとお菓子やアイスに、こいつはまた…と思いながら今すぐは食べないらしいアイスを冷凍庫にしまいにいく。


「この間のアイスもまだあんだけど」

「まだ食べてないのかよ」


箱だぞ?そんなすぐ空になるもんなの。

カシュッと缶を開ける音がして、もうなにも止められない。俺も飲んでやろうとこたつに入りながら缶を選んでいたら、この間とみりさんに飲まれて飲めなかったチューハイがあった。


「わーい、これにしよ」

「それやえ用。俺それ飲まない」


まずい。なんて、辛口のチューハイを傾ける。

なんてことない気の回し方に驚くが、とみりさんはしれっとして俺のアイフォンの画面を覗き見て「またこのゲームしてたのかよ」と開きっぱなしのゲームを構う。

ありすちゃんにチャット返してる途中だったな。


「え、ありすきっも。ゆゆの前だと超デレデレじゃん」

「可愛いだろ」

「おまえもデレかよ」


ゆゆとありすだとお互いデレデレしちゃうのは、もはや癖なのだ。

とみりさんがふーん、と俺のアイフォン画面を構う。お菓子を好きに開けていいと言われたので、新商品ぽいスナック菓子の袋をあけると変な匂いがした。鮒鮨ポテチ…やばい予感しかしない。
お酢っぽい匂いに眉をひそめて、開けときながらとみりさんのほうへ移動させる。

新しく柿ピーをあけると普通に美味しかった。


「ありすにとみり今一緒に居ますって送ろうぜ」

「やめたげて」


ほんとうに送り兼ねないのでアイフォンを取り上げると、掲示板にゆゆのことが書かれてるって会話のチャットまで遡られていた。
こんなとこまで遡って読んでたのか…とログアウトしたが、とみりさんは遡っただけで読んでないのかもしれない。

なにも言われないのを良いことに、おれもなにも言わずに缶チューハイを流し込む。ぱちぱち口で弾ける炭酸とほんの少しのアルコールの苦味が癖になる。


「さっむ、何とかして」

「こたつ入れよ」


めんどくさくなってきて、投げるように言うとムッとしたのかおれの横に入って来ようとする。

狭い狭い、と押し返しながら笑ってしまった。





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