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恐る恐るホールを覗き見ると、にやにやしてる谷やんと怒ってる爽やかバイト。
カウンターの向こう側でひゃっひゃっひゃと気持ち悪い声で爆笑するとみりさんの横では、助さんも大爆笑している。


「にしっ……むぐぐぐ!!」

「おい!客いないからって騒ぐなっつってんだろ!?」


おれを呼び続けるありすちゃんの口を強制的に手で塞ぐ爽やかバイトの言う通り、お客さんが居なくて安心したけど。


「な、何事……?」


怖すぎてホールに出る気になれず、キッチンから体半分のぞかせて疑問を投げかける。


「おめーがぼっちだから呼んだんだよ!」


口を塞がれてたありすちゃんが、抵抗しながらそう言う。

びっくりしながら谷やんを見ると、意地悪く笑っているから言ったのだと分かって顔をしかめる。


「にしのさんびびってんじゃ〜ん」


とみりさんの言葉に、ありすちゃんがお前がチャラくて怖いんだよと言うけど。どちらかとありすちゃんのドスの効いた声が怖い。

てか、とみりさんの知らんぷりもある意味怖い。

なんでゆゆって呼ばないの、バラさないの、ゆする気か?男なのにホスト通いしなきゃいけなくなるのか俺。


「良かったなあ西野」


構われて。なんて言うけど、なんか違うんだよ。

こんなスポットライト当てられたような構われ方は心臓に悪いから、望んでないんだけど。
そうは思えど、各々がまた話し出して、おれが居たままでも楽しそうな雰囲気に自然と顔がほころぶ。


「西野さんと和也チェンジで」

「はいはい、その前に帰ろうか」


いつの間にありすちゃんと和也は喧嘩腰な仲になったのだろうか。


「なに、西野さんもゆゆの知り合い?」


助さんがそういうから、カウンターにはいらずキッチンとホールの間で仁王立ちしていた俺は「え」と声をあげた。

なんとなく爽やかバイトと谷やんが言わないのは分かってるので、とみりさんに視線がいく。


「そうなの〜にしのさん?」

「そ、そうだね。知ってる…」


面白がられてる。

へんな汗がでてそうなくらい内心焦っているが、極力顔に出さないように片口あげて笑う。


「やっぱゆゆってここの常連かぁ」

「でも俺毎日居ても、ゆゆちゃんみたいな人いないんだけど」


ぶは、谷やんととみりさんが吹き出す。

ありすちゃんの一言は、2人のツボに入ったらしい。引きつった顔で爽やかバイトが2人を見て、なにか察したのかもしれない。俺を睨むように見る。

ふい、爽やかバイトと目が合わないようにありすちゃんを見て、すこしキッチンへ引っ込む。


「見つかると良いですね」


じゃあ、とキッチンに入ろうとする。

そんな俺に待って、と言葉で足止めしたありすちゃんはおれをじっと見て黙る。なんだかバレてるような気がして、気が気じゃないのは俺だけだろうか。
とみりさんのローストビーフ丼を横からつつく助さんは、会話すら聞いてない。だから心配ないんだけど。

「西野さんは?」との疑問系に、首をかしげる。


「西野さんは、ゆゆちゃんについてヒントくれるよね?」

「だめ、絶対」

「和也に聞いてないんだわ」

「だめよ〜だめだめ」

「谷やんにも聞いてないんだわ」

「教えるなーにしのー!」

「おいとみり!お前なんでそっち側なんだよ!!」


いや実際そっち側なんだよね。

あひゃひゃひゃと笑い転げそうなとみりさんに、ドン引きな爽やかバイト。わかる、本当に笑い方が気持ち悪い。

谷やんが全く気にしてないのは、結構2人が似てるからだろうか。


「そういやさ、とみりって本名?」


呼びにくいんだけど、と谷やんが言うと助さんが笑って否定する。


「違ぇ違ぇ、富竹さんだよ」

「え、まじ?とみたけさんなの、とみ、だっさ」

「言うと思ったからありすぶっころ」


とみたけ、からなんでとみり。

そう思っていたら助さんが「“富竹李王”で、高校からとみりって呼ばれてた」と言うから何だか納得。
たけおじゃなくて良かったね。


「おい西野、いま失礼なこと考えたろ」


だからなんで分かるのとみりさん、怖い。

横に首を振ってしらを切ると、ありすちゃんが「西野さんに突っかかるのはやめろ」と、とみりさんを制してくれる。
いつの間にかカウンターから、キッチンとホールの狭間に移動してきた爽やかバイトはおれの横で「みんなうるさい」と反抗期全開だ。ずいぶん賑やかになったなあ。




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