5人の王子様の話2
「んで、虎先輩がさ」
「うん」
「水風船つくろうっていうから」
「うん」
「部員全員で割ったの」
え?ちょっと理解できなかった。
陽介の話を聞きながら適当にうなづきすぎて理解できなかった。
いや待てよ、陽介の説明がぶっ飛びすぎて理解できなかった気もする。
まず知らない奴の名前が、当たり前にでてくるから難しい。
「いやあ楽しかったな」
「へ〜え」
「あ、そういや史季いつ部活来るんだよ」
「待て待て、俺が?部活に?」
俺は帰宅部だけど。
「そうだよ同じミステリアス研究部じゃん」
「違うよ!?」
しかもミステリアスって、何の部活!
てかミステリーならまだ研究しがいあるけど。あ!もしかしてミステリアスな雰囲気を纏った部活ってことなのか。…いやいやいや。
どちらにしろ入った記憶ねえよ……。
「あ、王子様つぎ体育みたいだぜ」
急に頭をひねられたと思いきや、窓の外に向けられる。
王子様、とは
本当の王子様ではなくこの学園での愛称で、家柄成績容姿すべてにおいて優秀な彼らのことをいう。
そう、彼ら特進クラスの中の5人
「今日は2人しか体育でてねえみたい、でもお前の兄ちゃん王子様にまで好かれて大変だなあ」
兄は頭が良い。
特進クラスに難なく入れて、しかも上位にたつほど頭が良い。
でも兄は王子様のひとりではない。お姫様だ。姫と呼ばれてるのをよく聞く。
「可愛いもんな〜同い年にみえねえ」
「……友人に兄ちゃんをそうゆう目で見られるって複雑」
「どうゆう目だよ」
「半開きの目だよ」
「それはごめん」
ぼんやり見続けていたら、兄と目があった。
手を軽く振ってみたら普通に無視され、陽介にドンマイドン。なんてムカつく台詞で慰められる。
ほんと、兄ちゃんは俺が嫌いだね。
口に出したことはない
兄も言わないし、俺も問わない
でも小さい頃の記憶がそれを物語っていて、だから俺は兄の言うことならなんだってきいてきた。
謝っても、謝っても、許されないことをしたんだってさ。俺は。
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