浮気性×平凡
「べつに良いんじゃない?好きな人が何人いたって、仕方ないと思う」
ミネラルウォーターの滴がぱたぱたと落ちるのを感じながら、恋人であるミヤをみた。
ミヤは長い睫毛を震わせると目を閉じてひらいて、綺麗なアーモンド形な瞳で俺をみたまま口を開く。
「貴志ちゃんは、平凡な顔のくせして薄情だなあ」
「は?悪口は陰で言ってくださーい」
だいたい博愛主義者であって薄情じゃないから。
更に言えば浮気ばかりする俺の恋人、ミヤにだけは言われたくない。
ミネラルウォーターをひとくち飲み込み、重たい腰をあげ制服の襟を正す。
「もういっちゃうの?」
「俺は部活なの、帰宅部は帰った帰った」
「え〜、要が日直で遅いからそれまで居てよ〜」
…なんで、今日の浮気相手を俺が一緒に待たなきゃいけないんだ。
扉に向かう前に、座ったままのミヤに近付いては綺麗に染まってるミルクティー色の髪を撫でる。
いつも見下ろされてる俺が、見上げられる時は決まって俺からキスをした。今だって。
触れる程度の、意味なんてないキス。
嘘、繋ぎ止めるための、キス。
「遅刻するから、行ってきます」
(終わりにしようと言えたなら)
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