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サッカー部とバスケ部2









「ナイッシュー!」


ラストー。

遣る瀬無く聞こえるが、よく通る女子マネの掛け声。

らすとらすと、と汗をぬぐいながら自分を奮い立たせてバスケットボールを手に取り、掛け声を出す。司令塔は先輩だから下手に指揮はとれないが、すこしは前に出て加勢していかないとうまくいかない。バスケはじぶんに向いてないな、とたまに感じる。

ナイッシュー!わあっと歓声とホイッスルの音が響いて、練習試合がおわった。


「ナイスー」

「いえーい!」


よこで先輩たちがハイタッチしてるのを見ながら、羨ましくなる。
いいなあ、バスケ部はあまり仲のいい同学年がいない。話はするが、同じクラスのやつはいないし。みんなチャラい…というか派手なやつが多くて、彼女がどうとかみんなで遊びに行こうとか。

女っ気のない俺は話になかなかついていけない。

スポドリを飲みながら、次の試合が始まったコートをみていたらポイっとタオルをぶつけられた。


「!」

「すげー汗じゃん」


なんだ、友人か。

体育館横の水飲み場をつかってたのか、なぜか頭から爪先までビショビショなおまえには言われたくない。


「サッカー部は頭から汗かくの?」

「あはは!暑すぎて水かぶっちゃった」


お前もすれば?なんて言われても、それは真似できない。

おれより友人のほうがタオル必要だろうなとおもって頭に乗せてやると、図々しく頭を差し出してくるから大雑把に拭いてやる。
休憩に入ってるらしいサッカー部のやつらが「おいナツ犬見てえだぞ」と拭いてやってる友人に笑いながらちょっかいをかけると、わん!だなんて素直に鳴き真似するからおれも笑った。ぜってーこいつ小型犬だ。


「おれも拭いてもらおうかな」


すこし掠れた高めの声、ふざけた奴らの声に混じった冗談に顔を上げると高瀬がいた。
え、と思ったのも束の間、はるちゃんは俺が!と仲良しサッカー部たちがわいわいしだして、しばらくすると収集の声がかかって友人もタオルだけ残して去ってしまった。

なんだったんだろう、なんか、冗談言うんだ。

頭の隅に残った声がなんどか反響して、すこし違和感を残した。





「だーかーらぁー!」


たんっ、ペットボトルを湯呑みみたいに机に打ち付けた友人は、部活で焼けた肌を真っ赤にしながら怒っている。


「花火大会行こーぜってばぁ」

「だーかーらぁー!」


友人の口調を真似して、おれは一度ため息をついた。


「サッカー部でいくんだろ?」


おれ部外者なんだけど。

べつにこれといってサッカー部に友達がいないおれは、友人と違って内向的だ。友人が連れてきた奴として気を使うのも使われるのも嫌だし、2人ならまだしも大勢ってどうなの。

やり残してた課題を片付けながら、とにかく無理なものは無理!と言う態度でいたら女子の1人が話しかけて来た。


「ねえ、ナツ。夏祭りサッカー部全員行くの?」

「え?おー、1年全員な」

「あたしらも一緒に行きたーい」


がたり、おれの横の席に座るその子は綺麗に巻かれた髪を少しいじりながらそう言った。

あたしら、ということはいつも彼女といる女子達も一緒なのか。男子は喜ぶこと間違いない。ふわふわ香る甘い匂いに、走らせていたペン先が止まる。女子ってすごく緊張する。


「えーいいんじゃないかな」


今日みんなに聞いとくわ、と普通に受け答えする友人は男女問わずコミュ力があって羨ましい。
じぶんに話しかけられたわけじゃないのに固まってしまう自分が情けない、小さく深呼吸してペン先を机に打ち付けた。