お腹を空かせたあたたの目の前に、黒いローブを被った見知らぬ老婆が現れました。
どうやら物売りのようです。

「美味しいリンゴはいかがかね??」

老婆がカゴから手にとって差し出した真っ赤なリンゴはとても美味しそうです。

「これはただのリンゴじゃない、願いが叶う魔法のリンゴさ!
一口食べればどんな願い事でも叶うのさ」

生憎お金を持っていなかったあなたは一度断るのですが、どうやらタダでくれるそうです。

「さぁ、何か願って。一口お食べ」



◇◇◇


「〜っ、何て親切な婆さんなんだ!!!
こいつは相当運がいいな!!!!」

「ねぇ、ブラックならどうする?」

目を輝かせ歓喜するブラックにNは本から視線を上げて質問した。

「どうするって…何を?」

「リンゴの事だよ。もしこの主人公がブラックだったとしたら…どうする?」

「へ?そりゃ勿論食うさ!!!夢が叶うってのはウサンクサイけど…
お腹すかせてるんだろ!?絶対食う!!それにタダだぜタダ!!!」

タダと言う所だけやけに声のトーンを変え、拳を前に構えて力説するブラック。

「・・・・・・っ」

「何がおかしいんだよ…」

肩を上下に揺らして笑いを必死にこらえるNを見たブラックは眉を上げた。

「…ブラックっ、白雪姫って知ってる?」

「あぁ、知ってるけど??アレだろ、毒リンゴをお姫様が食べちゃうっていう…
あー…ちょっと待て、お前が読んでたのってまさか」

「そう、白雪姫」

本を閉じて表紙を見せながらNはにっこりと笑った。

「お、おまっ!!!」

顔をみるみる赤くして怒鳴りだしたブラックにNは辛抱たまらないとばかりに笑いだした。

「まっ、まぎらわしいんだよお前!!!真剣な顔して難しそうな小説読んでると思ったらっ!!!!
〜ってか笑うなーーっ!!!!」

「あはははっ、だってブラック…。っふふ、そんなに警戒心ないと簡単にお妃さまに殺されちゃうよっ…!!」

「生憎オレはこの世で最高に美しい人じゃないから大丈夫だ、問題ない」

「うん、ブラックはどちらかというと最高に可愛い人だよね!!」

「お前の目はよっぽど腐ってるんだな」

「そうだね…この前大雨暴風の中遠方にいるブラックを見つけるのに3秒も時間がかかっちゃったし。もっと努力しないといけないね」

「……(たった三秒でみつかっちゃうのかオレ)」

「そんな不安そうな顔しないで!悪い魔女が来ても大丈夫、
もし僕のブラックに変な人が近づいたらすぐに助けに行くからね!」

「そういう意味の不安じゃないから勘違いすんな!!
それに自分で追い払うから来なくていい。
ってか今何気に“僕の”とか言ったよな、オイ」

「あ、でも毒リンゴなら食べても大丈夫だからね!!
僕も見ないフリしてるから!!」

「オレを殺す気満々デスカ?」

「うん、だって毒リンゴで眠りに付いた者はその恋人のキスで生き返るんだよ!?」

「で??」

「つまり、僕がブラックにキスすれば全て解決!!何の問題もなし!!
あとは目覚めたブラックを僕の城に連れて行けばハッピーエンドさ!!」

「バッドエンドだよバカ!!!目覚めた途端悪夢のはじまりじゃねーか!!」

「怖いよねブラック…でも大丈夫。
初夜は優しくしてげるから…二人で良い夢みようね?」

「勘違い激しいんだよお前!!どーやったらそういう話になるの!?
ってか初夜って何だよ!!!」

「やだなブラック、恋人同士で愛し合う初めての夜の事に決まってるじゃないかw」

「知るか!!!第一恋人じゃねーし!!!」

「……そうか。そうだね、いい加減僕も本気にならないと」

Nは正面に立つブラックの片腕を掴むとそのまま自分の方へと引き寄せた。

「なっ、」

ブラックは抵抗しようと一度身じろいだが強く抱きしめられているせいか力が上手く入らず脱出は叶わなかった。

「ねぇブラック。そろそろ答え、聞かせてよ」

「こたえって……っ!!!!」

Nが言う答えというのは、観覧車の時に告げられたあの告白の事だとブラックは瞬時に理解した。

「いやぁ…それが、耳塞いでたからお前の声、ちっとも聞こえてなくて、さ」

「嘘、バレバレだよ。
ブラックもいい加減本気になろうよ…」

「なっ、オレは本当に聞こえて、」

「聞こえてたでしょ?でもそこまで言うなら仕方ないね。
それならもう一度言う、僕は君の事が好きなんだ」

「〜〜っ!!!!!!」

聞きたくなかった。
それがブラックの本音だ。
観覧車で聞いた時よりもはるかにはっきりとした声のせいか、今度は全身が熱くなるのをブラックは感じた。

「今度こそ聞こえたよね?
僕はブラックを愛してるんだ。
プラズマ団の王であるにもかかわらず、組織に敵対する君をね」

「何言って…」

「君への愛はポケモン…いや、トモダチへのラヴを既に通り越してしまっているんだ。
だから…ブラックもいい加減本気で僕を見て、」

「−−〜んっ!!!!」

抱きしめていたはずのNの手がブラックの顎を軽く上げ、そのまま顔を近づけてブラックの口を塞いだ。

「ふぅっ、…んんっ」

これっぽっちの経験もない深い深いキス。
いきなりの事で息が続かないブラックはすぐさまNの胸をドンドンと叩いた。
それに気付いたのか名残惜しそうにNはブラックの唇を解放した。

「っは、っは、…っお、まぇっ!!」

キッとブラックはNを睨みつけたが当の本人は肩を落として溜息を吐いただけだった。

「だって、こうでもしないとブラックと進展出来ないと思ったんだ」

無表情で子供のように言い訳するNにブラックは更に怒りのゲージを上げた。

「〜お前はっ、何でいつもいっつもそーなんだ!!!
ポケモンの解放って言ってヒトとポケモンを引き離そうとしたり、
ストーカー行為の果てには人の気持ち無視してこんな事したり…
自分の思い通りにならないからってテンパってわがままばっか!!」

一通り怒鳴ったブラックははぁはぁと息を荒くして肩を上下させた。

「うん、わがままなのは良く分かってる。
でも欲しいと思ったらソレを手に入れたいって…普通そう思わない?」

「まぁ、そうだけど…」

「僕、今まで何かに対してこんなに欲しいって、愛おしいって強く思った事一度もなかったんだ。
トモダチを解放するっていう大切な使命もあるのに…こんなんじゃ全然集中出来ない。
だから…だから、」



早く僕に堕ちてー…




リンゴ
(僕の願い、叶えてくれませんか?)


ーEND−

あとがき...
Topsecretの続き、みたいなお話でした。
Nが白雪姫にあこがれてたら良いなぁと思いながら書きました。
毒リンゴだって分かってても、願いが叶うというのが嘘だったとしてもちょっと期待してしまう、みたいなww←意味わからん
ブラック視点に続きます。



2010/12/12
23:01(0)



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