荒神真佐紀という男

 あれから、真佐紀は瑠璃と一緒に作業をしながら荒神博とは関係ないものを作っていた。研究所のほうが色々作れるとは思うのだが、なるべく他の人たちにさとられたくない。
 真佐紀は、正直面倒だと思いながらも荒神博の準備とその何かを作ることを必死に頑張っていた。

 真佐紀は、つい最近荒神入りした。卒業研究が思いのほかよかったらしく、学会で発表することができたし、その学会でなんと賞をもらうことができた。そのことがきっかけか、真佐紀は荒神入りの誘いを受けた。
 荒神入りは最初悩んだ。家族を捨てることになるし、荒神の不穏な噂を聞いていたからだ。しかし、魅力的な条件が彼の目の前でちらつき、勢いで入った。

 荒神入りしたことは後悔していない。むしろ、なぜあんなに荒神入りすることに悩んでいたのか不思議に思うくらいだ。
 真佐紀はNECTERに入ることもできたことを感謝しながら、ある日とある話を聞いた。
 それは、東京について。最初はおとぎ話か何かだと思っていたが、色々な話を聞くとどうやらそうではないらしい。
 そして、NECTERは現在東京進出を目論む過激派とそれを止めたい穏健派に分かれている。真佐紀は、過激派だ。東京という面白い話が、彼を掴んで離さない。
 しかし、まだ荒神にも入りたてである彼は、過激派だということを公言したことはない。一人を除いて。

「これで十分かな……」
 出来上がったものを見ながら、真佐紀は小さく息を吐く。たくさんある手のひらサイズのそれは、短時間に作ったには十分であろう。
「何も起こらないのが、一番いいんだけど」
 小さく呟いた言葉は、自分に言い聞かせるもの。荒神博がある日、何かが届く。その何かが届くのは万全なのだが、それを奪うものがあらわれないとも限らない。
 聞いた話によると、椿組が不穏な動きを見せている。
「これはチャンスかなあ」
 ぽつりとこぼした言葉はまた自分に言い聞かせるものなのか。真佐紀は、もし何かあれば先程出来上がったもので侵入した者の足止めをしようと思っている。
 うまくいくかはわからないが、やってみなければわからない。あとは当日を待つだけだった。

 

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