真贋鑑定など素人には難しいものです

 光を感じるよりはやく、真佐紀は白衣で自身の顔を隠す。瞬間あたりが一際明るくなり、近くにいた人物は驚きと視界を奪われたことで体を動かすことができずにいた。
 その人物が未だ目をあけられずにいることを確認すると、真佐紀は一気に足払いをかける。実姉である美優希から教わった護身術的なものだ。まさかこんなところで役に立つとは思わず、かわいた笑みがでてくる。
 足払いされた人は受け身もとれず、勢いよく倒れる。更にそのあとに追い打ちをかけるように、真佐紀は手近にあった『何か』で頭を叩いた。

 気絶した人物を見下ろしながら、真佐紀はその人物が持っていた職員パスと自分の職員パスを見比べる。少し印刷が荒く見えるが、目の錯覚に見えるくらい微かなものだ。
 このくらいの差だと、やっぱ本物かなあとぼやく。散策は長く続いているが、見つけた怪しい人物は午前中に見つけた卯月くらいだ。
 そろそろ『彼』は誰か見つけたのだろうかと思い引き返そうとした。
 しかし、真佐紀は彼の名前を知っていても彼の研究室は知らない。探すのに時間がかかりそうなので『彼』を探すのは諦めようと思い、真佐紀は更に研究所内を歩き続ける。
 彼の存在などまるで無いかのように、世界は動いているようだった。

 

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