知っている情報を聞くこと
「やあ」
声をかけてきたのは、一緒に朝食を食べた栄華という男だったか。先程と、まとっている空気が違う気がして、真佐紀は一瞬誰だかわからなかった。
「あ、どうも……」
いきなり声をかけられたことについても戸惑い、真佐紀は適当な返しをする。何故いきなり話しかけられたのかはわからない。しかし、彼のよくわからない表情が今は微妙に笑っている。
ほんの微かな違いも分かるようになったのか、と内心笑いながらも、真佐紀はどうしたんですか、と聞いた。すると、彼は待ってましたとばかりに真佐紀に近づきながら言う。
「聞いた話によると、今椿組があるものを狙って侵入しているらしいんです。ここで僕たちが椿組を捕えれば、上の者たちが目をかけてくれると思いませんか?」
とても嬉しそうに言葉を発する彼に、真佐紀はただぽかんと聞いてるだけだった。しかし、考えれば彼は使えるかもしれない。真佐紀は話しを合わせるために答える。
「それは面白そうだね! もしよければさ、別々に探してその椿組の誰かを君が捕まえたら僕にすぐ教えてくれない? 一緒に楽しいことをしようよ」
はたして、彼には真佐紀の笑みがどのように映ったのか。男は薄い笑みを崩さずにわかりましたと答える。
「それでは、あなたもよろしく頼みますよ」
去っていく足取りが軽いように見える。真佐紀は再び先に進むことにした。