珈琲ブレイク

 真佐紀はしばらく散歩という名の見回りをしていたが、途中卯月以外の誰かと会うことはなかった。時折、何か聞きなれない音が聞こえた気がしたが、ほんのかすかな音の為、どこから聞こえてきたのかわからない。なんの成果も得られないまま、真佐紀は自分の研究室へと戻った。
 久しぶりに研究所内で寝たからなのか、緊張と興奮でよく眠れなかったからなのか。今更現れた眠気に真佐紀は欠伸を一つする。
 珈琲でも飲もうかな、とぼやきながら、真佐紀は適当に引き出しの中を漁る。しばらく漁っていたが目当てのものがないとわかると、買いだし面倒だなという意を込めてか舌打ちをした。

 珈琲を一口飲む。苦みが一瞬のうちに広がり、ブラックではなくカフェオレとかにするんだったという後悔が瞬時に頭をよぎった。
 砂糖だけでも頼もうかと思ったが、今更かと思い結局そのまま飲み続ける。
 飲み続けていくうちに、苦さとはまた違った酸味が口に広がってきた。ほのかに感じる程度で、あじのほとんどは苦みなのだが。
 カップに入っている液体は少しずつではあるが少なくなっていき、やがて空になる。飲み終えると、真佐紀は軽いため息を吐いた。
 これからどうしようか。やはり、まだ散歩を続けていようか。
 そんなことを考えながら自分の研究室へと戻ろうとしたとき。何かが目の端をかすめた。

 

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