はい、どうぞ
「やべ……」
ぼんやりとしていたためか、エドマンドはホテルの自動販売機でカフェオレを二つ買ってしまう。取り出し口から二つの温かいカフェオレを取り出す。
一本は自分が飲むのでいいのだが、もう一本はどうしようか。恋人に渡してもいいが、今は別行動中のためすぐ見つけられるとは限らない。せっかくの温かい飲み物も、この寒さですぐに冷めてしまうだろう。
そのとき、すぐ近くを誰かが通る。灰色がかかった髪と、同色の耳としっぽが目立つ。つい最近来天してきた財団員、フロートだ。
確か、彼女はコーヒーを好んで飲んでいたはず。ブラックコーヒーを飲んでいるところのほうがよく見かけたような気がするが、コーヒー系には変わりないだろう。
「ねえ、フロート」
名を呼んで、声をかける。振り返ってエドマンドを見る顔は訝しんでいた。
「……なんですか」
どうやらあまり機嫌はよくないらしい。もしかしたら、時差ボケしている可能性もあるが。
「いや、間違えてカフェオレ二個買っちゃってさ。コーヒー好きでしょ、もしよかったら飲まない?」
笑顔で、買ったばかりのカフェオレを差し出す。フロートはどこか戸惑った声を出していたが、素直に受け取ってくれた。
「ありがとうございます」
心なしか、嬉しそうだ。そのことにほっとしつつ、エドマンドはじゃあまたな、と手を振った。
去っていくフロートを見送った後、エドマンドは部屋へ戻ることにした。