一つ目怪奇譚


怪談なら私からもひとつ、私が単独で見回りをしていた頃の話です。

夕暮れ時でした、深追いした後見失って、ああ帰ろうと路地を引き返した時です。あたりには誰もいませんが、ヒタリ、ヒタリと水音がしました。
濡れた足を引きずったような音です。路地の曲がった先から近づいてくる気配がしました。
事故か、事件かで怪我をした人が助けを求めているのかと、先程取り逃がした犯人の所為かと、私はバイクから降りました。
するとちょうど角で足音が止まったので、私は声を掛けました。どうなさったんですか、と、そんな言葉だった気がします。か細い声で、確かに返事をしているんですが聞き取れません。

私はバイクをとめて、音の主を確認しに角へ行きました。夕暮れで影になっていた角に、誰かが座り込んでいました。声を掛けながら肩に手を置こうとして、急にガッ!と手首を掴まれました。
あァ、助かったと掠れた声が、ギョロリと振り向いたのは大きな一つ目で。

え?オチが読めた?

怪談は苦手だと言いましたよね、あの人なら怖くはないので登場人物はすべからくあの人です。なんですかその顔……。

あとは、そうですね、高速を走る……一つ目とか……え、ああさっきのですか?水音は吐いてる音で、……もういいって聞いておいて途中で遮るのはやめて下さい。

結局介抱して連れて帰りましたよ、あの頃が一番仲悪かったんじゃないでしょうか。状況も最悪でしたし。でも、落ちてしまえば上がるだけだったから、まあ……色々ありました。今度はそっちを聞きたいって、あの、は、恥ずかしいので……。
のろけ?のろけなんてしてません、ありません、違います!や、や、めてくださいあの人に報告とかしなくていいです、どうして言うとか!いいですから、ほんと、……もうお茶のんだら帰ってください…


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bkm
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