行き着く先は


追跡中だった。横から現れた車に、ダムに突き落とされたところまでは覚えている。咄嗟に掴んだ後輩と一緒に水面へと投げ出され、沈むものかと気を張った所で途切れた。

目の前の暗い深い水は真っ青な空になり、蝉時雨が降り注ぐ。
頭上に広がるのは青々とした葉枝だ。
傍らの後輩は気絶していて、何がどうなったのかと抱えた頭と彼女の髪は、真っ黒に変わっていた。

「誰ですか?」

後ろから高い声が掛かる。どこかの山中へと何かに飛ばされたとでもいうのか。しかし人が居たのならどうにかなる。

「あの、怪しい者では…いえ、怪しいのは重々承知の上ですが」

じくじくと痛み始めた動かない左腕を抑えながら振り向くと、少女は悲鳴をあげた。

「おじいちゃん!」

えっと返す間もなく少女は一目散に駆け出してしまい、後輩を一人放って追うわけにも行かずうずくまる。はあ。木々から漏れる日は割に強く、辺りの影は夏のそれだ。後輩はせめてもと上着を脱いでから敷いて、その上に寝かせた。シャツ一枚で木に寄りかかる。肩口は血で赤く染まっていた。利き腕が使えないのは割と辛い。せめて止血をしなければ。なにか。
胸部を縛り上げているサラシを使うか、と左手を背に回す。

「入道さん!!」

さっきの少女とよく似た悲鳴が耳に届いた。のろのろと顔を上げると二人の影。
黒髪と、おじいちゃん、と、入道。

蝉時雨が遠くなる。
……もしかして。


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bkm
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