十五夜


作りすぎちゃったからどうぞと貰ったのは月見団子だった。

どうやら周囲からは火事で焼け出された細っこい男だと認識されているらしく、特に近所の奥様方はことある事にこれをお食べあれをお食べとおかずを分けてくれる。
だいたい彼女らはゴミ捨て場の近くにある小さな公園でおしゃべりしていて、ゴミ出しに行くと捕まってしまうのだ。
貰い物が詰まっていたタッパーを返す時に、また詰め直してくれることも多かった。

そして、今日またタッパーを貰った。
十五夜だから一緒にお食べなさい。貰い物のお酒もあるからと、更に出てきた一升瓶は流石に断ってから団子はありがたく頂戴した。
薄もあげるからほら。どこから取ってきたのか、大量の薄まで下げて家に戻る事になった。ガサガサとビニールが鳴る。行きより大荷物になった気もするが、もうそんな時期になったのか、と遠くなった雲を仰いだ。

お前ゴミ出しに行ったんじゃなかったっけ。
……そうですけど。
それなに。
お団子と薄を貰ってきました。
もうそんな時期か。


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度数の低い酒と団子を並べて薄を備える。まんまるい月は特に輝いて見えた。

こんなんじゃ酔わねえよ。悪態をつきながらゆらゆらと水面の月を揺らす。

自分で買ってきたやつじゃないですかそれ。
これも貰いモンだよ。

ひとのみで杯をあけてしまったのに足して、団子を一口。

真っ黒に浮かぶのは真円とでもいうのか、瞬きの度にぐにゃりと歪んだ。外を掃いた時に散々見上げた月は目の中におさまって、酒の上でたゆたっている。空のそれより随分と小さい。

お前見ないの。いいんですさっき見ましたから。

ほかの星が霞むくらいにその瞳は輝いていた。


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bkm
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