雨の日


傘をさしてからこちらに来いと声を掛けた。霧雨の中歩いてきた千経の衣服は湿っている。
髪からしたたらない程度ならば気にも留めない性格の彼は、きょとんとしていた。
人の傘から自分のそれに移り、傾けてから霧を遮ってやる。


綾鷹のお付き、コロ助と呼ばれる彼が自分のをと出す前に、綾鷹はさっさと行くぞと普段とは逆の構図で歩き出した。
どうせいつもの所で響が待っている。合流したら押しつければいい。そこまでの辛抱だ。そんな声が聞こえる。
綾鷹がぐずらないなんてな、今日はこのまま嵐だ。思った事をそのまま声に出していたらしい、一に十返ってきた。
煩い。馬鹿だって風邪は引くだろう。気付かないだけだ。
へえそうなのか。



くしゃん。
雨足は強まる一方で、見慣れた二人はいつまでも来ない。遅刻ギリギリの時間にくしゃみをひとつ。
置いていってしまおうかと思いかけたところに濡れねずみが二匹。はて。
……今日は何をやらかしたんだか。


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bkm
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